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CSRを巡る動き:ホワイトカラー・エグゼンプションと女性の活躍支援

2014年09月01日 ESGリサーチセンター


 2014年6月に閣議決定をされた「日本再興戦略」のなかには、多様な正社員制度の普及・拡大やフレックスタイム制度の見直しに加えて、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応える、新たな労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の創設が盛り込まれることになりました。特に、労働基準法で定められた労働時間規制を廃止し、働いた時間の長短に関係なく賃金を支払う仕組みであるホワイトカラー・エグゼンプションへの注目は高く、年末までに厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会で年収基準などが決められる予定です。

 政府がホワイトカラー・エグゼンプションの導入を検討している背景には、生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの同時実現を図ることができるのではないかという期待感があります。従業員の側では、仕事の成果次第で、長期休暇の取得や勤務時間の調整が可能となり、長時間労働の改善にもつながると考えられるからです。しかし、労働組合側からは、成果のために多くの時間働いても残業代が払われないことや、企業が実労働時間を管理しなくなれば、かえって長時間労働に拍車がかかるという懸念が表明されています。

 では、CSRの視点で考えたとき、ホワイトカラー・エグゼンプションは許容される制度なのでしょうか。本稿では、成果に対する賃金の支払いと女性の活躍支援という視点で考えます。
 日本は欧米諸国に比べて、未だに男女の賃金格差が存在しています。勤務地や職務、時間などの条件面で限定的な働き方をしている女性が多く、女性の賃金の低さの原因となっている側面はあるものの、より活躍したいと考える女性も増えています。子育てなどとの両立のため、今以上に柔軟な勤務形態を望む場合に、ホワイトカラー・エグゼンプションがその受け皿になるかもしれません。最近では、女性の活躍支援を政府が掲げていることから、企業側も過去の人事制度を改訂して女性従業員の業務範囲を広げています。働きやすさという点では、制度を充実させ、子育てをしながら仕事を続けられるようにしています。今後、多様な条件の下で働く女性が付加価値の高い業務行うようになるなかで、女性従業員の公正公平な人事評価が課題の1つとなっています。

 今回、ホワイトカラー・エグゼンプションは、職種を特定することや年収1,000万円を制限とすることが議論されています。しかし、成果と賃金の関係を透明化するという点では、必ずしも職種や年次、働く時間を限定せずとも、より意欲的な女性従業員にとって、インセンティブを発揮させる仕組みになりうるのではないでしょうか。
 ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、企業の責任として、従業員に過大な目標を課して、従業員の長時間労働を助長しないような注意は必要です。しかし、成果と賃金の関係の明確化という視点は、今後、日本企業が必要とされる多様な人材の活用と労働生産性の向上の実現のためには、欠かせない視点と言えるのではないでしょうか。
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