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【ハイテク】「スペインの無線LAN、FONが日本に進出」


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 スペインに本拠を置く料金無料の無線LAN(構内情報通信網)接続業者、FON(フォン)が5日から日本でネット接続サービスを開始すると発表した。会員は自分のネット接続環境をもとに基地局となる無線装置を購入してフォン向けに開放すれば、世界中に広がる基地局を無料で使えるようになる。日本では来年末までに7万5,000人の会員を募る計画だ。
 フォンはスペインのベンチャー起業家、マーティン・バルサフスキー氏が昨年秋に欧州で始めた事業で、スペインやドイツなど世界で16万人の会員を獲得した。検索最大手のグーグルや競売最大手のイーベイ、世界最大のネット電話会社、スカイプ・テクノロジーズなどが出資している。
(出所)NIKKEI IT PLUS(2006年12月12日)

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≪評≫浅川秀之〔研究員〕

 FONは、宅内に設置されている個人の無線LAN基地局を開放、共有することにより、日本中(世界中)に無線LANネットワークを構築しようという事業モデルである。利用者は、自宅の無線LANを無料で開放する代わりに、他人の無線LANも無料で利用可能なタイプや、有料で開放し有料で利用するといったタイプも選択できる。

 2007年度末までに7万5,000人の会員獲得を目標とするようであるが、これが実現されると7万5,000のいわゆる“ホットスポット”ネットワークが実現することになる。日本の大手無線LANサービス提供事業者でも、5,000~6,000局規模(1社あたり、ローミング考慮せず)であろうから、実現されればかなりのネットワーク規模になる。

 最近外出先などでノートPCを利用する際に無線LANの電波受信状況を確認すると、法人利用のもの、個人利用らしきものも含め、数多くの無線LAN電波を確認できる。また、FONはネットワーク構築という考え方よりは、利用者のコミュニティを形成する観点での普及を目指しているとのことなので、昨今の、日本のコミュニティサイト普及状況などに鑑みると、追い風状況ともとれよう。

 通信事業者が提供するネットワークサービスというよりは、ミッション・クリティカルでないコミュニティサービスの1つと捉える方がしっくりくる。そういった意味では、大手通信事業者が手を出しずらい領域であり、グーグルやイーベイなどがその将来性に可能性を見出し、出資することにも理解ができる。今後は、mixiやグリーといったSNSサイトとの連携なども起こりうるのではないか。

 さらに将来には、ノートPCにWiMAXなどがビルトインされることも十分考えられる。FONが無線LANではなくWiMAXで利用されるような状況になれば、その普及に加速がかかる可能性も考えられる。

 このような類のサービスは、利用者の加入する、しないの判断時には、当該利用者以外の需要の状況、即ち加入者数(普及率)に大きく依存する。SNSなどのコミュニティサイトの場合は、加入者数だけではなく、サイトのコミュニティ性といった、数よりもさらに上位の概念も大きく影響するはずである。

 公衆無線LAN利用者数はインターネット利用者数の6.2%(2006年度情報通信白書から)とのことであるから、およそ530万人が利用していることになる。従って、7万5,000人は公衆無線LAN利用者数の1.4%に相当する。いわゆるクリティカル・マスからはまだ程遠い目標値である。数の側面も重要であろうが、むしろ利用者からみたコミュニティ性をどう構築するかが重要となるのではないか。

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