コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

【通信】「J:COM、ケーブル回線で超高速ネット接続サービス」


=====≪quote≫
 ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J:COM)は5日、ケーブル回線を使って超高速のインターネット接続サービスを4月から始めると発表した。通信速度は最大毎秒160メガ(メガは100万)ビットになり、動画などを滑らかに見られる。同百メガビットの光ファイバー通信回線サービスを拡販するNTT東西地域会社などに対抗する。
(出所)日経産業新聞(2007年1月9日)

=====≪unquote≫

≪評≫浅川秀之〔研究員〕

 CATVは、ユーザーに直接アクセス可能なラインとして、メタル電話回線やFTTHと並んで、通信事業者にとって魅力的かつ重要なインフラである。近年FTTHの普及が著しいこともあり、CATVの高速化投資が盛んである。しかしながら、今後のCATVを取り巻く環境は楽観視できるとは限らない。

 ユーザーへのアクセスラインとしての優位性が、FTTHの普及やブロードバンド・モバイルの台頭などにより薄れる可能性があることや、通信事業者によるIPマルチキャストを用いた地上波放送(電気通信役務利用放送)が可能となりそうな動きがあることなどは、CATVの相対的優位性が毀損しかねない。

 固定系および移動系などの外部環境が大きく変化する中で、CATV事業の相対的優位性はダイナミックに変化せざるを得ない。そのような状況の中、CATVの訴求力、優位性をいかに劣化させないか、剥がれ落とさせないか、といった観点での柔軟な戦略構築がCATV事業者に求められる。今後は、CATV事業者のコア・コンピタンスとして何を残すべきなのか、ということを見据えたグランドデザインと、それに基づくマネジメント能力が重要となる。場合によっては、CATVの優位性の原点である“地域密着顧客基盤”をコアとして、FTTHなどの新たな事業との融合策も視野にいれなければならないであろう。もちろん、大規模MSOと、比較的規模の小さい事業者ではとるべき戦略は異なる。

 将来シナリオをどのように判断した上での戦略判断なのか、現在のCATVの高速化投資がその戦略判断の中でどのような位置付けなのか、CATV事業者の手腕が問われる。

≪コメント≫新保豊〔理事・主席研究員〕

 CATV事業者は通信会社としても放送会社としても、決定的に「規模の経済性」(ネットワークの広がりと顧客基盤)の点で見劣りがする。加えて、いまのネットワーク資産は大半がアナログであり、せいぜい光ファイバーとのハイブリッド方式によるもの。したがって、同ネットワーク資産の上で、市場競争の行方に応じた戦略カード(サービス、コンテンツ)を切る際のオプションに限りがある。つまり、「範囲の経済性」も行使しえない。この2つの経済性がビルトインされていないことが、競争優位を確保できないポジションに留まる要因となっている。

 さらにこれまで、いわば飼い殺し状態に留めてきたような国の保護政策に問題があった。SNSなどの消費者コミュニティ空間というメディアを持ちえているかどうかも、今後の競争優位の鍵を握る。将来は通信会社も放送会社も新たなメディア事業者としての競争にシフトすることだろう。携帯電話市場では、最下位のソフトバンクでさえ1,500万人規模のコミュニティ基盤を持っている。傘下のYahoo! コミュニティを加えれば、最大手のドコモの5,000万人相当(またはそれ以上)ともなる。いずれも1,000万超の視聴者基盤をもつことで、新たな“メディア2.0”を形成しえる。この視聴者基盤のもと、ユーザーの体験型マーケティングの手法を組み込めるかが、今後の競争の雌雄を決する。こうした取り組みなくして、わが国のCATVの将来は決して明るくない。

経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ