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【通信】「ソフトバンク、月額980円の新料金プランを発表」

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 ソフトバンクモバイルの孫正義社長は5日、東京・港のホテルで会見し、音声通話の月額基本料が980円の新料金プラン「ホワイトプラン」を16日に始めると発表した。月額料金9,600円の料金プランを70%割り引く「予想外割」キャンペーンが15日で終了することに併せて新料金プランを投入する。ホワイトプランは「ゴールドプランで批判のあった付帯条項をなくしてシンプルにした」(孫社長)プランで、夜21時から深夜1時までを除くソフトバンクの加入者間の通話が無料で、それ以外の通話はすべて30秒あたり21円かかる。
(出所)NIKKEI IT PLUS(2007年1月5日)

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≪評≫浅川秀之〔研究員〕

 このようなソフトバンクの価格施策そのものは、それ程驚くべきものではない。消費者余剰を取りこぼさないために複数の差別価格を導入することは、マーケティングやプライシングに関する教科書の最初に書かれていることである。ソフトバンクの強みはそういった施策そのものではなく、最初の一手(⇒ゴールドプラン)から得られた市場からの情報を学習し、即座にこれを次の一手(⇒ホワイトプラン)に反映、そして実行に移す一連のプロセスの柔軟性とそのスピードに他ならない。ゴールドプランの特定時間帯の無料通話200分という設定が、どの程度市場に受け入れられるかは、リリースしてみないと分からない部分もあったのであろう。その結果200分を使い切る利用者はほとんどいないことが分かり、そういった利用者を想定した新たなプランがホワイトプランである。計算上は特定時間帯で45分程度の利用までなら、ホワイトプランの方が“お得”ということになる。

 携帯電話事業者にとってのプライシングとは、自らの生命の存続に直結する最重要決定事項の1つである。携帯電話事業者の収益は“契約者数×ARPU”というシンプルな数式に左右される。プライシングは同式の両項に直接的な影響をおよぼす。“まずはこの価格で”といった曖昧な判断が適用されるレベルではない。通信事業者が料金を決定する際は、緻密な計算を繰り返し、ありとあらゆる可能性を考慮した上で決定されていくことが一般的である。十分に時間をかけて決定した料金でさえもその値に“確信が持てる”事業者は少ないのが実情であろう。

 “静観する”と報道されている競合他社の今後の動向は興味深い。料金に関しては今後も“たたき合い”の様相を免れない感が強い。“契約者数×ARPU”のARPU(データ通信ARPU)が下がることは避けられない面があろう。従来のようなデータ通信ARPUからのみの収入に頼るシナリオは中長期的には描きにくい。まったく新しい別の性質のARPU(NewデータARPU)を獲得するシナリオが描ける事業者が今後生き残っていくのではないか。

≪コメント≫新保豊〔理事・主席研究員〕

 前述の「料金に関しては今後も“たたき合い”の様相を免れない感が強い。」とは、実はソフトバンクは、もう馬鹿な価格競争は止めましょうというシグナルを市場へ送っている可能性もある。利益水準が安定的に獲得できるとみなされる、わが国の携帯電話寡占市場にあって、ゲーム理論が適用される土壌がある。この市場または状況下では、他社も“静観する”オプションを採ったほうが、最大利得を獲得できる計算が働いているとも思われる。

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