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日本総研ニュースレター 2015年10月号

女性活躍推進法の制定は「職場理解の壁」を破る絶好の機会

2015年10月01日 榎本久代


職場の理解不足が継続就業支援制度の利用を阻む
 総務省の労働力調査によると全就業人口に占める女性就業者の割合は1970年代後半から上昇を続け、2015年7月には43.3%に達した。これは男女雇用機会均等法をはじめ、育児・介護休業法や次世代育成支援対策推進法などの法律、そして育児休業・育児短時間勤務制度といった企業・組織での継続就業支援制度の整備が進んだことが大きな要因となっている。人口減少と少子高齢化が進むわが国では、今後一層女性が活躍することへの期待は大きい。
 しかし、その実を見ると、女性就業者数の増加分のほとんどは、パート・アルバイト、派遣社員等の非正規社員だ。また、結婚を機に離職する正社員女性は減少したが、出産後の離職率は相変わらず高い。平成25年の男女共同参画白書によると女性就業者に占める正社員の割合は結婚前の65%近くから第1子出産後に20%、第2子出産後には14%程度に急減する。中でも企業が戦力として期待し、育成してきた総合職女性は10年間で65.1%が離職する状況だ。
 育児休業や育児短時間勤務は法律で事業主に義務付けられている制度であり、どの職場にも必ず存在する。しかし、それらの取得促進はほとんどせず、制度の利用が職場の「常識」になっていない企業・組織は非常に多い。こうした職場では、継続就業支援制度を利用者だけがメリットを受ける不公平な制度だと非利用者が捉えていたり、管理職の運用が適切でないために一部の社員に業務負荷が偏り、その不満で職場のコミュニケーションが滞ったりする例も多い。また、制度を単なる権利と考え、他への配慮を欠く制度利用者も存在し、それが制度利用者そして制度自体への反発を生むこともある。結局、そうしたことの積み重ねが制度利用者への偏見を生み、制度利用への引け目から退職を選ぶケースが多発している。そして、それが制度の新たな利用を躊躇させる悪循環をも作り出している状況だ。

「職場理解の壁」を取り払う女性活躍推進法
 8月末に成立した女性活躍推進法は、これまでの法律や継続就業支援制度では解決できなかった、「職場理解の壁」を取り払おうとするものだ。同法によって、従業員301人以上の企業では、採用者に占める女性の割合や勤続年数の男女差、女性の管理職比率などについて現状を把握したうえで、女性が活躍しやすい環境整備について定量的な目標を定めて社内に周知し、その達成に向けて行動しなければならなくなった。全社を挙げた具体的な取り組みが進めば、管理職をはじめ社員一人ひとりの意識改革が促され、制度への職場理解が深まることが期待される。
 女性就業者の増加は単に働き手が増えるばかりでなく、女性ならではの価値を組織にもたらす。それも「女性の感性」を生かす業務だけではない。例えば、建設現場において現場監督と職人が男性同士の場合、若い現場監督がベテラン職人から力仕事を手伝わされ、本来の監督業務に支障を来たすことも少なくない。そうした職場で現場監督を女性にしたところ、監督と職人の職務領域が明確化され、本来業務に専念できるようになり、全体が円滑に進むようになることがあるという。また、あるコピー機メーカーではメンテナンス要員を女性にしたところ、事務機器の担当者が女性である取引先が多かったことから、男性には聞きにくい初歩的な質問もしやすくなったと好評だという。つまり男女の肉体的な差や女性同士の仲間意識までもが組織で役立つ。もはや女性人材を「コスト高」と捉えるべきではない。継続就業支援制度で発生するコストよりも、せっかく採用し教育した人材を失うことによる採用・教育コストの方が結局高くつく。また、男性の制度利用者が増えれば、いずれ男女のコストは同じに近づく。

認定企業には社外PRと職場意識向上の効果も
 本法には、優れた取り組みを行う企業を認定する制度も設けられており、認定を受けると広告や商品・サービス、ホームページなどに認定マークを表示し、PRできる仕組みも取り入れられている。インターネットなどを通じて企業・組織に対する評価が一瞬で広がる現在、こうした外部評価をうまく利用することはイメージアップや優秀な女性人材の確保にも役立つことはもちろん、職場での意識が一層高まり協力体制がさらに強化される効果も期待できる。こうしたメリットをいち早く得るためにも女性活躍推進法への早期かつ積極的な取り組みが望まれる。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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