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コラム「研究員のココロ」

【RCM経営入門 アフターJSOXシリーズ】(第7回) CSRへのRCMアプローチの応用

2009年07月06日 


 CSRは単なる社会貢献活動ではなく、企業がその持続的発展を目指して行う「経営戦略」である。そして、そうである以上、戦略的視点、すなわち持続的発展を阻害するリスクをコントロールするとの視点から施策(戦術)を講じなければならない、というのが私の基本認識である。前回のコラムでは、この立場から、既存のコントロール(施策)の見直しの重要性について述べたが、ここではCSRにおけるRCMアプローチの応用について提案したい。

1.リスク・マネジメントとしてのCSRの基本プロセス

 まずRCMアプローチの前提として、リスク・マネジメントとしてのCSRの基本プロセスを確認しておこう。CSRでも、リスク・マネジメントの基本プロセス、つまり、リスクの識別、コントロールの設定、コントロールの実施、効果測定(リスクの再評価)というサイクルを回していくことになるが、ステークホルダー相互のリスク比較を行う必要があるため、例えば次のようなプロセスが考えられる。

a. CRSH(*)の識別
b. ステークホルダー別のコントロール設定
c. コントロール実施
d. 実施効果の測定、フィードバック
(*)CRSHとは、クリティカル・リスク・ステークホルダー。つまり経営戦略上、特に重大なリスクを有するステークホルダーのこと(筆者造語)。

2.CSRにおけるアサーション

 次はアサーションの設定である。ある一連のプロセスを構成する個別具体的なアクティビティ(行為)に対してリスクとコントロールを一体的に分析検討していくRCMアプローチでは、分析検討の視点となるアサーションの設定が極めて重要なポイントとなる。JSOXでは、アサーションは主に「財務報告の信頼性」の視点から設定されていたが、CSRに応用する際には、ステークホルダーに対するリスク・マネジメントという視点からアサーションを設定しなければならない。考え方はいろいろあろうが、基本的には「内部統制の4つの目標」をCSRの視点からアレンジすることが妥当であろう。その際、基本プロセスのうち、ステークホルダー自体を扱うa.b.のプロセスと、個別コントロールを扱うc.d.のプロセスで、アサーションの意味内容を変えて理解する必要がある。ここでは、便宜上、前者を「ステークホルダー・マネジメント・プロセス」、後者を「コントロール・マネジメント・プロセス」と呼ぶこととするが、それぞれにおけるアサーションの意味内容は下表の通りである。

表 プロセスによるアサーションの意味内容の違い



3.ガバナンス・レベルでのRCMアプローチ

 さらに経営戦略としてのCSRという観点からは、各プロセスの前提ないし基盤となるガバナンス(組織統治の基本的な仕組み)レベルでのRCMアプローチも必要となろう。
 CSRにおけるガバナンス・プロセスとは、具体的には、(1)CSRに対する会社としての理解・方針の明確化、(2)推進体制の構築、(3)CSR全体に対するマネジメント・サイクルの実施、ということになると思われるが、それらのプロセスに対してもRCMによるリスクとコントロールの検討が望ましい。その際のアサーションの意味内容は、次の通りである。

表 CSRのガバナンス・プロセスにおけるアサーションの意味内容



 このように、ガバナンスから具体的なアクティビティに至る各レベルにRCMアプローチを応用することによって、経営戦略としてのCSRがより有効に機能することが期待される。

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