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5月14日 大学ブランドのあり方

2008年05月14日 吉田 賢一


 ブランド価値とはいかなるものでしょうか。時計、衣服、車など様々なアイテムにブランドが語られます。大学においても「銘柄」や「知名度」といった表現で示されることがあります。しかしながら、改めてブランドといった場合、ある大学を一言で表現することはとても難しいことが分かります。リクルートでは「カレッジマネジメント」で、2007年度の「進学ブランド力調査」を発表していますが、これは全国633大学について、関東、関西、東海の高校生16,533人を対象に行っており、大変に細かく精緻に整理されています。しかしながら、筆者が関わっている、ある大学においてそのデータを示したところ、結局のところ自分の大学が何者なのか、具体的に把握できないという結果となりました。それではリクルートのデータがよくないのでしょうか。そうではなく要するに大学側に自身について見つめる眼を養っていないこと、また、常に外部の評価に対して敏感になるセンスを持ち合わせていないことが主な原因ではないかと考えます。さらにいえば、そうした多元的な情報について取りまとめて把握する「構想力」を持ったスタッフが少ないことも一因でしょう。

 ブランド価値というものは単にそのアイテムを利用する者に対し「押し付ける」ものではないのです。むしろその価値を相手に扶植し共に育て上げる双方向の取り組みこそが重要なのです。薫習房の二村宏志氏は、「ブランドコンセプトとして表象されるキーワードは、実は、血のにじむような作業の結果、関係者間で共有化できた膨大な約束事を、象徴的な言葉に要約したもの」であり、「ブランド・モデルには、送り手構成員全員が共通の理解を得るための細かな、約束事が書かれている」(注1)と主張されています。したがって大学においても、送り手が何を具体的に「約束」するのか、自身の資源を見つめ、それらが周囲の環境との関係でどのような意味を持っているのか、きちんと理解をすることが何よりも大切となります。

 実は大学の「銘柄」などというものは、その学校が持つ伝統、入試の偏差値や卒業生の活躍ぶりなどからイメージされ、さらにマスコミなどを通じて増幅されているのが実態ではないでしょうか。極論すれば自身の血の滲むような経営努力で生み出されたものとは言いがたいとものなのです。「銘柄」は最後に付いてくる格付であって、まずは大学自身が自らの努力でブランド価値を高めていく行為が重要ではないでしょうか。

 そのためには大学が存在することの第一義である学生に対する教育内容と修学環境について、その学校独自の要素を取り入れつつ、学生が十分に満足できるよう取り組んでいかなくてはなりません。その結果、それは学生の父母や地域の人たちとのリレーションにもつながっていくのです。何も整備の充実したモダンな校舎を建て瀟洒な学生寮を整備することだけが方途ではないはずです。それはお金をかければできることです。しかし、例えば有名な金沢工業大学の「夢工房」など学生が主体的に知的好奇心を満たせるためのオペレーションに教職員が心を砕くなど、実は大学構成員の一つひとつの努力の積み重ねがブランドづくりの礎石となるのです。

 この短い文章であらゆるヒントを提示することは困難ですが、大学自らが価値を見出し、それを高め、学生やステークホルダーとの絶え間ない「対話」を行うことこそが、そのブランドを強固なものとしていくのだといえるのです。そしてそれが学生にとっては「母校」という何ものにも替え難いブランド価値となっていくのです。

(注1)http://www.meso-scope.co.jp/method/method_02.html
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