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「臨場感」が生み出す「親近感」(カレッジフットボール)

2008年06月01日 宮田雅之


アメリカで人気の大学生によるスポーツ(以下、カレッジスポーツ)の筆頭はアメリカンフットボール(以下、カレッジフットボール)です。日本で人気のカレッジスポーツといえば、ハンカチ王子の野球や正月の箱根駅伝などが挙げられますが、日本のカレッジフットボールの現状に興味を持ち、京王線の飛田給にある「アミノバイタルフィールド」に足を運びました。

日本のカレッジフットボールはアメリカ同様9月から12月がシーズンになります。地域毎にリーグ戦が行われますが、アメリカのように全国ランキングは存在しておらず、あくまでもリーグ内で勝敗を争います。4月から6月に行われるオープン戦では、地域の枠を超えた対戦カードも多く組まれ、シーズン中とはまた違った楽しみ方ができるようです。

日本のカレッジフットボールは、上位校の顔ぶれにその特徴が現れています。東京大学、一橋大学、京都大学、神戸大学といった、一見スポーツとは縁遠そうな国立大学が東西の一部リーグで活躍しています。これは、アメリカンフットボールを部活として行っている高校が少ないため、どの大学も初心者が多く、チーム間に極端なレベル差がない中でスタートできることが挙げられます。

また、アメリカンフットボールは「超知的格闘球技」といわれる程、緻密な研究に基づいて作戦が練られます。つまり、頭脳が備わっていなくては、強いチームになれません。アマチュアといえでも各チームにデータ分析の専門家(アナライジング・スタッフ)を抱えています。身体能力だけでは勝てないところも見所の一つといえます。

前置きが長くなりましたが、筆者が観戦したのは関東の大学同士のオープン戦でした。結論からいうと、予想以上に楽しく観戦することができました。オープン戦のせいか、チアガールやブラスバンドの姿が見えず、試合以外にエンターテイメントの要素は全くありませんでした。しかし、ルールや作戦に詳しくない初観戦の筆者が「また観に来たい」と思ったことは紛れも無い事実です。

その最大の原因は、競技者と観客の物理的な距離が近かったことにあります。スタンドから、選手同士のぶつかり合う音がよく聞こえますし、出番を待つ選手の顔もとてもよく見えます。指示を出すコーチの声はよく聞こえますし、選手をサポートするマネージャーがせわしなく動いている姿もよく見えます。こうした風景をスタンドから目の当たりにしていると、あたかも自分のチームであるかのような錯覚を覚え、「親近感」が芽生えてくるから不思議です。分野は違いますが、生の舞台を観て演劇のファンになった人の気持ちが何となく分かる気がしました。

しかし残念なのは、オープン戦とはいえ、スタンドが埋まっていない点です。選手の父兄を含めたチーム関係者が熱心に応援している一方、一般のファンの姿はあまり見られませんでした。とにかく一度試合に足を運んでもらうための工夫を、チーム単体だけではなく、大学全体あるいは連盟加盟チーム全体で考え実践して行くことが必要であると感じました。幸いカレッジフットボールには「アメリカ」という素晴らしいお手本があります。エッセンスを吸収しながら、ますます発展して行くことを心より願っております。



観客席から選手の息遣いを感じられます

※当レポートは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
※当レポートに掲載されている写真は、資料用に研究員個人が撮影したものです。
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