コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

コラム「研究員のココロ」

エグゼクティブ・コーチングのすすめ
~社長さん、「スパーリング相手」いりませんか?~

2009年02月02日 手塚貞治


 少しでも格闘技に関心のある方ならば、「スパーリング」という言葉をご存知でしょう。対戦形式による練習のことを指します。経営者の方々が欲しているものは、その「スパーリング相手」なのではないでしょうか。

経営者の孤独

 私の専門は、中堅中小企業の経営支援ですが、いろいろな経営者の方々とお会いする中で、経営者の方々が実に孤独な存在だということを痛感しています。
 日々の営業活動、資金繰りから、果ては将来構想、事業承継に至るまで、経営者の方々には意思決定すべき項目が山のようにあります。「社長と副社長とは天と地ほども違う」ということがよく言われます。組織の最高責任者として最終的な意思決定をしなければならない経営トップと、ナンバー2とは、それほど異なる存在だということなのです。
 しかしそれだけに、なかなか本当の意味で相談できる人がいないというのが実情です。特に、プライベートとも関係する資本政策や事業承継などについては、ナンバー2に対してであっても相談できないもののようです。

エグゼクティブ・コーチングの存在

 そこで必要になってくるのが、社長の相談役です。利害関係のない社外の立場で、経営者の方々のご相談に応じる「スパーリング相手」です。経営層に対するコーチングということで、「エグゼクティブ・コーチング」と呼ばれています。
 「米国では」という引き合いの出し方はどうかと思いますが、参考までに、人材ヘッドハンティング会社コーン・フェリー・インターナショナルの調査によれば、「フォーチュン500社」のうち、エグゼクティブ・コーチングを導入している企業は70%にも上るという状況です(出所:参考文献(1))。またベンチャー企業であっても、このような指導を受けているケースが多いようです。したがって日本企業でも、もっとこうした存在が活用されてしかるべきだとは言えるでしょう。

「コーチング」と「コンサルティング」の違い

 では、改めて「コーチング」と「コンサルティング」の違いは何でしょうか。一言で言うならば、前者は「クライアントの中にある答えを引き出す」、後者は「コンサルタントが答えを与える」という違いです。「コンサルティング」の場合、コンサルタント側が綿密な調査・分析を実施した上で、最適解をご提言する、ということになります。もちろん、こうしたアプローチでしか適切な答えを出せないことはあります。しかし経営上の課題とは、必ずしも答えが一義的に決まるものとは限りません。逆に、何通りも答えが想定される課題も、またたくさんあるものです。
 人間とは感情の動物です。ひとは誰でも、他人から与えられたものではなく、自分で本当に納得したことでないと動かないものです。したがっていちばん効果的なのは、クライアント自身に気づいていただくということです。そこで「コーチング」ではコーチからの質問を通じて、クライアント自身の中にある思いや考えを整理していくという形をとります。
 よって、純粋の「コーチング」であれば、コーチは究極的にはクライアントの職業・業種に対して全く素人であっても問題ないということになります。

本当に望まれている「エグゼクティブ・コーチング」とは?

 しかし経営者に対する場合、私の見解では、やはり会社経営全般に対する深い理解が必要不可欠だと考えます。「エグゼクティブ・コーチング」と言ってもいろいろなやり方がありますが、私自身が実践しているプログラムでは、双方向性を重視しています。経営者の方々から現段階の思いや構想を引き出し、それに対して、私の方からフレームワークを提示したり、他業界・他社の事例や戦略上のセオリーをご紹介したりしながら、徐々にブラッシュアップをしていくという方法をとります。経営者の「思い(右脳)」と我々の「理屈(左脳)」とをぶつけながら、タテ糸とヨコ糸を通して体系化していくという作業です。それはまさしく、格闘技における「スパーリング」のようなものです。相手の攻撃をびしびし受けながら、それなりの技を返していくことが望まれます。その際、こちら側にも格闘技の技量がある程度なければ、なかなかスパーリング相手にはならないでしょう。したがって、純粋の「コーチング」と「コンサルティング」の中間に位置するものと考えております。

(図表)弊社の「エグゼクティブ・コーチング」の位置づけ

(出所)参考文献(2)等をもとに筆者作成
※上記は、あくまで三者の相違を類型的にまとめたものであり、多様な手法があることにご留意ください。

 このように「エグゼクティブ・コーチング」とは、経営者の方々にとって必要とされる機能と思われます。特に、今の未曾有の経営環境下においては、ますますこうした相談役が不可欠になるのではないでしょうか。


【参考文献】
(1)ピープルフォーカス・コンサルティング(2005)『組織開発ハンドブック』(東洋経済新報社)
(2)伊東明(2001)「コーチングで『個』を活かす」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』2001年3月号
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ