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遺伝子組換え作物の可能性

2008年05月27日 青山貴紘



近年、地球温暖化が問題となっています。主な原因の1つは、従来の化石燃料の使用であり、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガスといったバイオ燃料の利用が注目されつつあります。現在、バイオ燃料の大部分はトウモロコシやダイズ等の食料から生産されています。これにより、バイオ燃料はカーボンニュートラルという特徴を持つ一方で、食料としての作物と競合する問題も生じています。地球温暖化や人口増加は深刻化が予想され、食料となる作物の増産は世界的に重要な課題になっていくと考えられます。

この問題の解決には、様々なアプローチ方法による対応が必要です。まず、木材等の未利用バイオマスや廃棄物等からバイオ燃料を増産する方法の開発等、バイオ燃料の原料と食料が競合しないような工夫が必要です。また、世界の食料不足の原因として、非効率的な流通により一部の地域で余剰作物が発生することが挙げられるため、流通の効率化を図り、バランス良く作物を供給することも重要です。これらに加えて私は、遺伝子組み換え作物の開発・活用も効果的であると考えます。私は大学時代、不良土壌に強いイネやムギを遺伝子組み換え技術により開発する研究に携わっていました。現在、世界の耕作可能面積の3分の1は不良土壌が原因で作物が育たないという問題を抱えています。このため不良土壌に強い作物を作り出すことができれば、世界の作物収量を大幅に増やすことができます。このような作物の改良は、従来の育種では不可能、或いは何十年という年月を要するものでした。しかし、遺伝子組み換え技術を用いることで、これまでに無い有用な作物を作り出すことが可能であり、私の研究の周辺分野では、可食部の養分量を高めたコメ(golden rice)や、汚染土壌の有害物質を可食部に蓄積しないコメ等の開発も進められていました。現在も既に、アメリカ等では農薬耐性や害虫耐性を強化した遺伝子組換え作物が活用されています。遺伝子組換え作物の開発は、今後の食料問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めていると考えられます。

遺伝子組み換え作物の活用における最も重要な問題の1つは、安全性です。日本での実用化には(1)食品としての安全性、(2)飼料としての安全性、(3)生態系に対する安全性を確保することが必要となります。(1)と(2)については、組み換えた遺伝子が作り出すタンパクがヒトや家畜に悪影響が無いこと等を確認します。(3)については、遺伝子組換え作物を隔離ほ場で試験的に栽培し、周囲の生態系に悪影響を及ぼさないことを確認します。これらの安全性が確認されれば、遺伝子組換え作物は危険なものではありません。遺伝子組換えというだけで、得体の知れない危険なものという印象がありますが、遺伝子の改変が、育種のように確率論的に行なわれるのではなく、ピンポイントで意図的に行なわれるだけの違いです。むしろ、現在危険性が懸念されているのは、上記の(1)、(2)、(3)が確認されていない遺伝子組換え作物が、将来的に諸外国から日本に知らぬ間に流入してくることです。

私は遺伝子組換え作物の開発研究を通じ、遺伝子組換え技術がもたらす利益と背後に潜む危険性について実感してきました。今後は、遺伝子組換え作物のリスクについて正しい情報を提供することや、管理方法の開発に携わることで、遺伝子組換え作物の開発・それに伴う食料問題の解決に寄与していきたいと考えています。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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