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2009年06月18日

2009~10年米欧経済改定見通し ~雇用悪化・設備調整が続くなか、本格回復は困難~

< 要 約 >
1.  昨年秋のリーマン・ショックを契機に、金融市場の混乱・実体経済の大幅な悪化が生じたが、金融市場の混乱は既に鎮静化。実体経済面でも、悪化ペースが鈍化し始めており、金融市場の機能不全と実体経済の悪化が相乗的に進む最悪期からとりあえず脱却。
2.

 もっとも、危機のトリガーとなった欧米金融機関の不良資産問題の解決は途半ば。なかでも欧州では、損失計上・資本増強ともに大きく遅延。損失計上の主因が「証券化商品」から「不良債権」にシフトするなか、今後も景気悪化につれて損失額が膨らむ公算大。

3.

 実体経済面をみても、持続的な景気回復を阻害する要因が山積。米国・欧州それぞれ、以下の3点について検討。

(1)米国
(イ)個人消費の低迷長期化
  GDPギャップが大幅に拡大するなか、失業率は年末にかけて11%近傍まで上昇する見込み。それに伴い、賃金の鈍化圧力は今後も強まる公算。一方、住宅バブルの調整はなお途半ば。09年1~3月期の家計住宅資産は、依然理論値対比3.9兆ドル過大。理論値への収れんは2010年初となり、その間実質個人消費を1.3%ポイント押し下げ。
(ロ)本格化する設備投資調整
  金融面では、金融機関の貸出態度厳格化に歯止めがかかっておらず、引き続き設備投資を圧迫。実体面では、需要動向に対して生産能力が著しい過剰となっており、設備投資は当面増加が期待薄。また、過剰消費の是正が本格化するなか、期待成長率の大幅な下方屈折は不可避で、当面ストック調整局面が続く公算。
(ハ)限定的な景気対策効果
  総額7,870億ドルの景気対策のうち、個人向け減税は、多くが貯蓄や借金返済に回る公算。政府支出は、約3分の1が州財政支援で、直接の需要押し上げは1,100億ドル。実質GDP押し上げは2008年比+1.0%ポイントにとどまる見込み。

(2)欧州
(イ)雇用悪化に伴う個人消費の落ち込み
  ユーロ圏では、▲1%の実質GDP成長率低下につき0.5%ポイント失業率が上昇しており、失業率は年末にかけて11%前後の水準まで上昇を続ける見通し。なかでも、今後ドイツ、フランスで雇用悪化が加速する見込み。複数の国で新車販売支援策の奏効事例がみられるものの、雇用悪化が続くもとでは、個人消費の持続的回復にはつながらず。
(ロ)重石となる中東欧経済危機
  欧州主要国からの投融資に依存していた中東欧では、主要国での金融危機が解消されない限り、資金流出リスクが残存。一方、中東欧の経済不安定化は、資金の出し手である主要国の金融不安定化に跳ね返る恐れ。とりわけ、同地域向け融資が大きいオーストリア、スウェーデンでは大きな打撃を被る可能性あり。実体経済面では、主要国向け輸出拠点である中東欧において、主要国の内需低迷により輸出及び設備投資が急減。一方、中東欧での急激な景気悪化は、主要国の中東欧向け輸出の減少を招来。
(ハ)政策面の足枷
  各国で景気情勢の深刻度合いが異なるものの、統一通貨・金融政策のもとで、自国の経済に相応しい金利政策が必ずしも行われていない。財政面でも、政府債務名目GDP比率60%という収斂基準が追加経済対策の縛りに。また、域内中小国では、輸入比率が高く、財政刺激策の誘引が乏しい状況。

4.  以上を踏まえ、各国・地域経済の見通しは以下の通り。
 イ)米国:大幅なマイナス成長からは脱却し、景気対策の効果が顕現化する2009年後半にはプラス成長に復帰する可能性。もっとも、①雇用・所得環境の悪化、②家計のバランスシート調整、③設備過剰を受けたストック調整、等から、持続的な景気回復に向かう公算は小。
 ロ)欧州:ユーロ圏では、雇用の急速な悪化が進む一方、政策対応も不十分で、2010年を通して景気後退局面が続く見通し。英国でも、家計のバランスシート調整、主力産業である金融業の低迷、などを背景に、景気後退局面が続く見通し。
5.  上記見通しに対するリスクは、未曾有の水準に拡大する米国財政赤字のファイナンスに対する国際的な協調体制の綻び。それに伴い長期金利が大幅に上昇すれば、住宅市場の調整長期化を招く恐れ。また、ドル安が加速すれば、原油価格高騰により消費が大幅に悪化する恐れ。
< 目 次 >
 
1.景気の現状            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2.金融危機の行方         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

3.当面の米欧経済のポイント   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

   (1)米国   (イ)個人消費の低迷長期化
           (ロ)本格化する設備投資調整
           (ハ)限定的な景気対策効果

   (2)欧州   (イ)雇用悪化に伴う個人消費の落ち込み

           (ロ)重石となる中東欧経済危機

           (ハ)政策面の足枷

4.米欧経済見通し          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

   (1)米国経済

   (2)ユーロ圏経済・英国経済
 

5.リスク要因              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

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