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2009年05月11日

内部統制対応コストは平均1億6000万円 ~規模の小さい企業ほど高負担に~

  ■売上100億円未満企業の約15%は重要な欠陥の可能性ありと予想
  ■小規模企業の半数は、満足できる経営者評価活動ができず、
    会計監査人への対応にも苦慮
  ■規模に応じた適用緩和措置を求める声が多い
  ■明確な「自社基準」を確立した企業では、比較的満足度が高い

  ※1.前年度および本番年度でかかったコストの合計

 株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本泰行 本社:東京都千代田区)では、金融商品取引法対応上の有効性評価活動の実態について、上場企業を対象としたアンケート調査を2009年2月に実施しました。
本調査は、2008年3月の弊社第1回調査「内部統制報告制度取り組みに関する実態調査」に続くものです。
今回の「金融商品取引法による内部統制有効性評価の取組実態に関する調査」では、
1.体制・スケジュール
2.独立的評価の実態について
3.会計監査人の内部統制監査の実態について
4.内部統制報告制度について
の観点から内部統制報告書作成の実態を把握し、内部統制報告制度が抱える問題点を明らかにしています。また、本調査結果を受け、制度への対応として整備された内部統制システムを、さらに自社基準による経営管理基盤として拡充し、経営改善に役立てることを提唱しています。
 質問票および調査結果の詳細につきましては、別紙「内部統制有効性評価の実態」をご覧ください。なお、調査概要は以下のとおりです。
【調査概要】
調査対象: 上場企業 3,897社
調査期間: 2009年2月
調査方法: 質問票を郵送送付、郵送回収
回収数: 372社(回収率 9.5%)
【結果概要】
1.体制・スケジュール
 本番年度は初めての取り組みということで全体的にスケジュールが遅れ、第4四半期に内部統制監査が集中した。しかし遅れはかなり取り戻されており、3月決算の企業では、決算プロセスについては80%、決算プロセス以外の分野では90%以上において、2009年3月には会計監査人による内部統制監査が終了することが見込まれている。
 内部統制対応にかかった費用は、内部統制監査が始まる前年度では、全体平均で9280万円、本番年度では6400万円と推定された。ただし売上に対する負担割合は規模の小さい企業の方が大きくなる傾向が見られた。本番年度の場合、連結売上高100億円未満の企業では売上の約0.34%(連結売上高100億円として計算)、5000億円以上の企業では約0.035%(連結売上高5000億円として計算)であり、約10倍の開きがある。
 なお、内部統制文書の変更管理業務や内部統制監査対応に必要な担当者の人件費として、今後も年間3300万円が発生することが予想される。
J-SOX対応コスト平均(3月決算企業 連結売上高別)
J-SOX対応コスト平均(3月決算企業 連結売上高別)
2.独立的評価の実態について / 3.会計監査人の内部統制監査の実態について
 「評価活動に満足できた企業」および「会計監査人との意見の相違がなかった企業」の割合は、年間1000億円以下の売上高を持つ企業では、それ以上の売上高の企業に比べて低い傾向が見られた。
 特に売上規模100億円未満の企業では、重要な欠陥が「出る可能性がある」と予想している企業が約15%に上り、それ以上の規模の企業の予想が2%にとどまっていることと比べると非常に高い。
 なお、同程度の売上規模でも、設定された評価対象コントロール数は各企業でばらつきがあり、統制の設計の細かさは各社各様であった。各企業の特殊性の反映もあるものの、どの程度の細かさで評価を実施すればよいかの基準が、初年度はあいまいであったことがうかがえる。
評価活動に満足できた企業及び会計監査人との意見の相違がなかった企業の割合
(3月決算企業 連結売上高別)
評価活動に満足できた企業及び会計監査人との意見の相違がなかった企業の割合
※2.「会計監査人との意見の相違はなかった」かについては、全社的内部統制、決算財務報告プロセス統制、業務プロセス統制、IT全般統制の4分野毎に調査を実施した。上記グラフの下段については、これら4分野ごとの「会計監査人との意見の相違はなかった」とする回答数を合計したものが、4分野ごとの総回答数の合計に占める割合である。したがって、n数が実際の個々の回答数より大きくなっている。
4.内部統制報告制度について
 内部統制報告制度への改善要望については、小規模企業には簡易な評価を適用するという、企業規模に応じた制度適用を求める意見が最も多く、回答の6割弱を占めた。また、実施基準や内部統制監査基準を明確化、具体化して裁量の余地を減らすべきだとする要望も3割強に上った。
内部統制報告書制度変更の要望
内部統制報告書制度変更の要望
【提言】
 今回の調査では、内部統制報告制度対応の充実度および満足度が企業規模によって異なるという実態が明らかになった。規模が大きい企業であるほど、人材の質・量を含めて内部統制評価体制が充実しており、また、自社の経営改善と直結する自前の基準の設定が進んでいる。さらに内部統制評価活動を通して経営改善につなげようとする取り組み意欲も高く、それが結果として、評価活動の満足度を高めるという好循環の獲得につながっている。一方で、規模の小さな企業であるほど内部統制に費やす資源が乏しくなるため、会計監査人に多くを依存しがちとなり、評価活動に満足が得にくい。そして結局、経営改善に役立つ内部統制評価活動を実現できない悪循環に陥っている。
 本来、内部統制報告制度には、株主保護のための義務であるという制度的な側面と、経営改善のためのリスクマネジメント体制の整備という企業経営改善のための側面が存在する。したがって、体制面が不充分になりがちな比較的規模の小さい企業にとっても対応しやすい形にすることが、制度を実効性の高いものとするために欠かせない。また、企業としても経営改善に役立てるという断固とした意思を持って取り組み、自前の基準を作らなければ、経営改善はおろか、満足できる評価さえも獲得できなくなるだろう。
 以下は、制度面と経営面それぞれに対する提言である。
(1) 制度面では、上場基準が異なる株式市場別に、評価基準を設定することが検討されるべきである。例えば、新興市場など、小規模企業が多い市場に対する簡易評価を容認するとともに、開示される内部統制報告書が簡易評価対象企業であることを表記する事を義務付ける、等が考えられる。
(2) 経営面では、企業規模を問わず、経営改善に役立つ内部統制へと仕上げていくことが、取り組み意欲を高めるためにも必要である。
  • 会計監査人依存の評価基準を超えて、経営改善に直結する経営者評価の自社基準を設定する。
  • 自社基準による内部統制報告制度を土台に、管理業務の再評価と強化を進め、リスクに対する統制を柱とする経営基盤の再構築を進める。
【株式会社日本総合研究所について】
 株式会社 日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT 会社であり、情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エンジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新たな事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。
 項目 内容
 商号 株式会社 日本総合研究所(www.jri.co.jp)
 設立年月日 1969年2月20日
 資本金 100億円
 従業員 2,000名
 社長 木本 泰行
 理事長 薄井 信明
 所在地東京本社
〒102-0082 東京都千代田区一番町16番
03-3288-4700(代)
大阪本社
〒550-0013 大阪市西区新町1丁目6番3号
03-6534-5111(代)
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