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ニュースリリース

2018年5月14日

各位

株式会社日本総合研究所


2017年度 地方自治体における官民連携事業に関するアンケート調査結果

- 具体的な事業の検討が全国で進むも自治体間で二極化の可能性あり -



●約4割の自治体が「優先的検討規程」を策定済みまたは策定中だが、人口20万人以上の自治体は約9割、人口20万人未満の自治体は約1割と、二極化の現象が発生
 優先的検討規程については、人口20万人以上の自治体は平成28年度末までの策定が国から要請されていた。
 その状況は本調査の結果にも反映されており、人口20万人以上で優先的検討規程を「策定済み」または「策定中」とした自治体は94.9%に上った。一方、人口20万人未満の自治体では11.0%にとどまった。

●公的不動産を活用した官民連携事業は大都市を中心に検討が進行中、試算では1.2兆円程度の事業規模拡大が見込まれる
 本調査において、公有地の貸付・売却を「検討中」または「検討予定」の自治体は、全体の17.8%であった。特に政令指定都市、特別区、人口30万人以上の都市で割合が高い。
 本調査の結果に基づく日本総研の推計では、公的不動産を活用した官民連携事業は1.2兆円程度の規模拡大が見込まれた。既に事業化が進められているものの規模も加味すると、政府の「PPP/PFI推進アクションプラン」で設定されている4兆円という数値目標が平成34年度までに達成される可能性は高いと考えられる。

●公的不動産の有効活用に関するアイデアや情報が不足、参画事業者の確保も課題
 公的不動産を有効活用する際の課題として、「どのような用途での活用が可能かについてアイデアや情報が不足している」との回答が最も多く、全体の64.9%を占めた。次いで「対象地の事業性が低く、民間事業者の参画が見込めない」が37.4%に上った。
 地価水準および不動産開発の事業性が高い特別区の回答からは、上記の不安が比較的少ない一方、土地の高度利用が進むことによる周辺環境への影響や、これに対する住民の抵抗感の強さがうかがえるなど、全般に他の自治体との違いが際立った。

●官民連携事業の実施に関する自治体の体制未整備や理解不足が顕著
 官民連携事業全般の課題としては、「庁内での官民連携事業の検討プロセスが定まっていない」が平均3.14ポイントと最も多く、次いで「官民連携に対する庁内の理解が不足している」が平均3.11ポイントであった。都道府県・政令指定都市・特別区よりも、職員数が比較的少ないその他の都市での方が「当てはまる」と回答した割合が高い傾向となった。

 株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 渕崎正弘)は、2017年6~7月および12月において、都道府県、特別区および人口5万人以上の市町を対象に「地方自治体における官民連携事業に関するアンケート調査」(以下「本調査」)を実施しました。
 公共施設の効率的な整備をはじめ、事業機会創出や民間投資の喚起などを目的としたPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行されてから20年近くが経過しました。公共施設などの整備・運営に対する官民連携手法の導入は、国や一部の地方自治体の間で着実に普及しつつあるとされる一方、ほとんど導入が進んでいない自治体が少なからず存在することもささやかれるようになっていました。
 本調査では、官民連携手法の導入検討に関する取り組み状況、潜在的な規模拡大の可能性、事業実施上の課題などについて調査を実施しました。官民連携手法の普及が二極化し、自治体の対応力(体制・専門知識・経験)に格差が出てきた実態など、官民連携事業の現状と課題を明らかにしています。


<調査概要>

調査目的:地方自治体における官民連携事業の取り組み状況と課題の把握
調査時期:郵送によるアンケート調査(メール・郵送・FAXで回収)/2017年6月14日~7月14日
     電話による追加ヒアリング調査/2017年12月)
調査対象:全ての都道府県、特別区および人口(平成27年国勢調査)5万人以上の市町
回答数 :590団体中372団体(回収率:63.1%)

<主な調査結果>


1.「優先的検討規程(注1)」は、約4割の自治体が策定済みまたは策定中。しかし、人口20万人以上の自治体は約9割であった一方、人口20万人未満の自治体は約1割と二極化の現象が見られた。
なお、優先的検討規程を策定済みの自治体の約1割で、具体的な事業を検討中。

1-1.優先的検討規程の策定状況
 優先的検討規程は、人口20万人以上の自治体は平成28年度末までに策定することが、また、人口20万人未満の自治体も期限は設けられなかったものの必要に応じて策定することが、それぞれ国から要請されていた(注2)。
 その状況は本調査の結果にも反映された。優先的検討規程を「策定済み」または「策定中」と回答した自治体は全体で37.4%(382団体中139団体)だったが、人口20万人未満の自治体では11.0%(255団体中28団体)にとどまった。
 一方、人口20万人以上の自治体では94.9%(117団体中111団体)に上った。しかし、策定期限から3カ月ほどが経過した調査時点において、28.2%(117団体中33団体)が「策定中」の状態であったことから、一部では策定に時間を要していることが分かる。さらに、「策定していない」自治体が5.1%(117団体中6団体)も存在した。


(注1)「優先的検討規程」とは、一定規模以上で民間の資金・ノウハウの活用が効率的・効果的な事業について、公共施設等の管理者等が多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための手続き・基準等をいう。
(注2)「「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」について(要請)」(平成27年12月 内閣府・総務省)




1-2.優先的検討規程に基づく官民連携事業の検討状況
 優先的検討規程を「策定済み」の自治体のうち10.9%(92団体中10団体)では、具体的な官民連携事業を優先的検討規程に基づいて検討済みであり、検討された事業数は合計19件に上った。優先的検討規程の策定のピークは平成28年度末であったことから、今後は具体的に検討される事業の増加が予想される。
 上記19件を国が定める官民連携事業の類型(注3)に当てはめると、「収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPFI事業等」(類型Ⅱ)と「維持管理・更新等における業績連動の導入、複数施設の包括化等」(類型Ⅳ)の2つに絞られた。いずれの類型も、庁舎・教育施設といった自治体の公共施設の整備や資金調達の手法として用いられることが多く、財政負担の軽減やサービス水準の向上などの効果がある。また、19件のうち8件では「類型Ⅱまたは類型Ⅳ」となっているが、これらは整備すべき公共施設の基本的な構成までは決定済みではあるものの、両者の違いである「事業収入を見込めるかどうか」の見極めが出来ていない状態にあると思われる。
 一方、国が重点的に推進する「公共施設等運営権制度(コンセッション)を活用したPFI事業」(類型Ⅰ)を挙げた自治体は存在しなかった。大規模インフラ事業などを抱える自治体を中心に、優先的検討規程の策定以前からコンセッションの導入に向けた検討が進んでおり、優先的検討規程の策定後は今のところ新たな検討対象事業が生じていないと考えられる。



(注3)2016年5月に政府で「PPP/PFI推進アクションプラン」が新たに策定され、以下の4つの類型に基づいて、10年間で合計21兆円の官民連携事業の創出を実現するという数値目標が設定された(旧アクションプランでは10~12兆円)。  
  類型Ⅰ: 公共施設等運営権制度(コンセッション)を活用したPFI事業…7兆円
  類型Ⅱ: 収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPFI事業等…5兆円
  類型Ⅲ: 公的不動産(公有地)を活用した官民連携事業…4兆円
  類型Ⅳ: 維持管理・更新等における業績連動の導入、複数施設の包括化等…5兆円



2.公的不動産を活用した官民連携事業は、大都市を中心に検討が進行中。
 試算では1.2兆円程度の事業規模拡大が見込まれる。

2-1.公有地活用の検討状況
 公的不動産(公共施設廃止・移転後の跡地など)を活用した官民連携事業は、優先的検討規程の対象には直接含まれていない。しかし、売却・貸付による直接的な収益の確保や、民間の集客施設の併設を通じた賑わい創出による地域活性化などを目的に、全国的に取り組みが進んでいる。
 本調査において、公有地の貸付・売却を「検討中」または「検討予定」の自治体は、全体の17.8%(359団体中64団体)であった。特に政令指定都市、特別区、人口30万人以上の都市で割合が高い。これらの地域の不動産は地価水準および不動産開発の事業性が相対的に高いという特徴があり、開発事業の検討を進めやすいためと思われる。



2-2. 公有地活用事業の潜在的事業規模
 本調査では、公有地の貸付・売却の検討対象となっている公有地の所在地や事業手法、用途が具体的に確認できた事業は62件であった。
 これらの事業が全て実現すると仮定したところ、日本総研の推計(注4)では、1.2兆円程度の事業規模(注5)の拡大が見込まれるという結果が得られた。既に事業化が進められている公有地活用事業の規模も加味すると、公有地を活用した官民連携事業に関する事業規模を平成34年度までに4兆円とするという、政府の「PPP/PFI推進アクションプラン」で設定されている数値目標が達成される可能性は高いと考えられる。



(注4)政府の「PPP/PFI推進アクションプラン」における事業規模の考え方(注5参照)を参考に、民間事業者が公有地に建物を新たに建設して賃貸不動産事業を営むものと仮定して、事業規模の推計を行った。
具体的には、本調査の結果に基づき、初期コスト(建設工事費等)、運営コスト(借地料・維持管理費等)のほか、民間事業者に帰属すると想定される利益を算出した。これらのコストと利益が事業実施によって喚起される民間の経済活動の総体を表すと仮定し、その合計額を事業規模の推計額とした。
(注5)政府の「PPP/PFI推進アクションプラン」において、「事業規模は、PPP/PFIの活用により新たな民間の経済活動を創出するという施策の目標を踏まえ、民間事業者の総収入をもって図る」とされている。


2-3.公共施設等総合管理計画における事業の位置づけ
 公有地の貸付・売却に関する検討対象事業のうち、公共施設等総合管理計画(注6)のなかで具体的に位置づけられている事業は30.8%(回答があった91件中28件)にとどまった。公共施設等総合管理計画は、公共施設等の管理に関する事項の記載が中心とされるため、個別事業に関する具体的な記述まではなされていないのが実態と考えられる。
 しかし、自治体が個別事業を進める際には、事業内容を自治体の構想・計画などに具体的に位置付けたうえで、庁内外の関係者の意思決定がなされることが一般的である。公有地を活用した官民連携事業の実施は、公共施設等総合管理計画に基づく公共施設の統合・廃止と密接に関連することから、今後は、公有地の貸付・売却に関する各事業についても、個別の構想・計画のみならず公共施設等総合管理計画において位置付けながら実行に移す運用をしていくことが期待される。



(注6)「公共施設等総合管理計画」は、自治体が所有する全ての公共施設(建築物・インフラなど)を対象に、現状分析や将来見通しを踏まえ、全体的な管理運営や有効活用の方針を定める計画。2014年4月の国からの要請を受け、ほぼ全ての自治体(1,788団体中1,777団体)で策定が完了している(総務省調べ、2017年9月30日現在)。厳しい財政状況や将来的な人口減少を踏まえ、長期的な視点に立った老朽化対策の推進、コストの縮減・平準化といった課題解決を図ることが期待されている。なお、本調査においては、公共施設等総合管理計画とは名称が異なる類似の計画において事業が位置づけられている場合も含めた設問とした。


3.公的不動産の有効活用に関するアイデアや情報が不足、参画事業者の確保も課題

 公的不動産を有効活用する際の課題として、「どのような用途での活用が可能かについてアイデアや情報が不足している」との回答が最も多く、全体の64.9%(353団体中229団体)を占めた。次いで「対象地の事業性が低く、民間事業者の参画が見込めない」が37.4%(353団体中132団体)に上った。
 全般に、特別区の回答と他の自治体の回答との違いが際立った。例えば、「活用のアイデア・情報が不足している」(36.4%)、「事業性が低い」(18.2%)などが11団体中で最も低いなど、特別区の地価水準および不動産開発の事業性の高さがうかがえる結果となった。一方で、「周辺の土地の地権者、住民との合意が困難」(63.6%)は最も高く、土地の高度利用が進むことによる周辺環境への影響や、これに対する住民の抵抗感なども浮き彫りとなった。




4.官民連携事業の実施に関する自治体の体制未整備や理解不足が顕著

 官民連携事業全般の課題としては、「庁内での官民連携事業の検討プロセスが定まっていない」が平均3.14ポイントと最も多く、次いで「官民連携に対する庁内の理解が不足している」が平均3.11ポイントであった。
 自治体を属性別に見ると、都道府県・政令指定都市・特別区よりも、職員数が比較的少ない自治体の方が「当てはまる」と回答した割合が高い傾向にある。具体的には、①~⑦全ての選択肢の平均値は、最も小規模である5~10万人の自治体が3.09ポイントと最も高く、人口規模や職員数が多くなるにつれて、概ね階段状にポイントが低下する傾向が見られた。
 特に、「庁内での官民連携事業の検討プロセスが定まっていない」については、都道府県、政令指定都市、30万人以上の自治体がそれぞれ2.5ポイント前後であったのに対して、5~10万人の自治体では3.48ポイントに上り、課題として強く認識されていることが分かる。
 なお、上記の設問に対する特別区の回答は、全自治体平均の3.14ポイントに近い3.09ポイントとなり、都道府県や政令指定都市、30万人以上の自治体に比べ、庁内での検討プロセスの構築を課題として強く認識しているという、意外な実態も明らかとなった。これは、特別区では「公的不動産(公有地)を活用した官民連携事業」(類型Ⅲ)の領域における検討体制の確保に対する不安が少ない(3. の図表「属性別」の⑥参照)ものの、類型Ⅲ以外を対象とする優先的検討規程の策定に関しては都道府県や政令指定都市、30万人以上の自治体に比べ進捗が遅れている(1-1. の図表「属性別」参照)ことを反映した結果と考えられる。





<調査結果の詳細に関するお問い合わせ先>

リサーチ・コンサルティング部門 都市・地域経営戦略グループ
シニアマネジャー 小松 啓吾 電話: 03-6833-1367

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