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働き方改革推進に欠かせない要素

2018年02月02日 太田康尚


 わが国における「働き方改革」は、一億総活躍国民会議が2015年に開催された頃から幅広い企業において本格化した。数年経過した現在、改革に着手した企業は成否について評価しており、その情報は改革を成功に導く際の参考となる。

 働き方改革推進においては、新しい制度を導入したが意識改革の醸成が不十分で活用されないなど、1つの手を打てば一段深い部分にある別の問題に突き当たり、それを乗り越えるとまた別の問題が見えてくるという事象がよくある。それらの試行錯誤で調整を繰り返し続けた後に自社独自の働き方が完成していく。
 各社が目指す結果を出すためにはそれなりのプロセスが必要だが、他社が経験した働き方改革推進の要素を勘所として学び、自社が目指す成功への近道をたどることは可能である。

 働き方改革で効果を出しつつある企業の活動を棚卸ししてみると、各社独自の明快な「方針」とそれを実現するための「仕組み」、さらに「企業風土」を動かす取り組みという3要素がうまく整合し効いていることが見受けられる。逆に、改革を進めているが期待していた効果がなかなか出ないとの認識を持っている企業においては、方針が明確でないため小手先の取り組みとなってしまい、各種取り組み要素が整合していないなど、方針、仕組み、風土のいずれかの要素に原因がある。

【働き方改革推進の要素】


【出所】株式会社日本総合研究所にて作成


【要素1.方針】 
 働き方改革がなぜ必要でどの程度必要か、そして何のために取り組むのかは各企業が置かれた環境によって異なり、企業独自の目的と取り組み方針がある。できるだけ具体的な方針と目標が経営トップより明示され、それを各現場リーダーが認識し現場に周知させる行動が出発点となる。
 ある会社では、1日7時間を前提とした働き方をゼロベースで見直している。各人の役割に対して求める結果を定めた時間内で出すために、現状の仕事をゼロベースで見直すなどの抜本的な取り組みは、力強い本気の方針があって初めて動き出す。

【要素2.仕組み】
 改革過程で発生する新たな問題の本質を見極め適宜に対処し、着実に結果を出していくためには、活動とその結果を適切にモニタリングする指標管理などの仕組みが欠かせない。
 また、様々な環境におかれた多様な人材に働きやすい環境を提供するための勤務体系や評価制度などの仕組みが必要であり、それら制度を支えるためのモバイルワークを実現するモバイルツールやTV会議システムなどのテクノロジーの活用も重要な要素となる。
 近年では特に労働者の生産性向上に大きく寄与し得るAIやIoTなどのテクノロジーの進化が加速しており、そもそも人間の役割は何かという検討が避けられない業界もある。

 これらの仕組みづくりおいては改革要素が相互に影響していることが多く、どこから着手すべきか混乱するケースが見受けられる。方針に基づいて必要な施策を洗い出し検討した後に、各施策間の関係を分析して施策のリリース計画を設計することも重要となる。

【要素3.風土】
 仕事において結果を出すことに全力を尽くしてきた一方で、自らの時間については無頓着であったと自覚する人は多いのではないだろうか。働き方改革に懐疑的であった人からも、仕事の成果は維持しつつ時間や生産性について強く意識するようになり、数年前と比較してこれだけ改善するものかと実感しているとの声を頻繁に聞くようになった。

 意識変化をきっかけとして各自が試行錯誤して新しい働き方(ワークスタイル)や新しいリーダー(マネジメントスタイル)を生み出すことになる。従来とは異なる新しい働き方やリーダー像が組織に浸透し、過去の経験などから身に付いた思い込みにより、自分自身や他者に対して旧来の価値観で無意識に判断し行動してしまう問題が解消に向かう、望ましい改革サイクルが完成する。

 改革推進の過程で各種施策が徐々に定着し、企業風土もそれに応じて変化するので、結果を得るためにはそれなりの時間が必要となる。抜本的な改革であればあるほど目指す姿を実現する時間と手間がかかるが、本気で取り組んだ成果も大きい。
 これら改革のプロセス自体について仕事のあり方を経営者や従業員が真剣に見つめ直す機会とし、引き続き大きく変化し続ける働く人の量と質およびテクノロジーが人を代替するなどの環境変化に順応し続けるための貴重な財産とすることが望まれる。

以上


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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