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農業データ連携基盤が社会のインフラになるための鍵

2017年07月25日 田中千絵


 日本の農業が危機的状況であるといわれて久しい。これを脱するために、これまでもさまざまな施策が講じられてきたが、現在最も重点的に進められているのが、「攻めの農林水産業」に向けた取り組みである。首相官邸が主導する未来投資会議にて策定された「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日公表)においても、「攻めの農林水産業の展開」として、農林水産業の強化が明確に打ち出されている。

 「未来投資戦略2017」における「攻めの農業」施策は、大きく5つに分かれている。(生産現場の強化/バリューチェーン全体での付加価値の向上/輸出の促進/林業の成長産業化と森林の適切な管理/水産業の成長産業化と資源管理の充実)このうち、1つの重要な取り組みになっているのが、「バリューチェーン全体での付加価値の向上」のなかで掲げられている「多様なデータに基づく農業への転換」であり、そのためのインフラとして「農業データ連携基盤」(以下、「データPF」とする)を本年中に立ち上げることとなっている。

 日本総研は、データPFの構築に向けた検討を担う、内閣府主導の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)」の研究コンソーシアムに参画している。データPF構築で目指す社会像は、(1)篤農家の経験や勘を、できる限りデータ化することにより、農業新規参入者のハードルを下げること(新規就農者の確保)(2)生産性が向上し、また経営が改善されること(現業農家の収入増加)(3)直接取引により収入が向上すること(農家の利益率向上)である。「攻めの農林業」を推進し、農業を「稼げる」魅力的な産業に成長させるために、農業界に関わる名だたる企業が研究コンソーシアムの中で日々検討を進めている。

 日本総研がデータPFを検討する際に最も重要と考えているのは、データPFが立ち上がった後に、それに対して発せられる現場の農家の方々の生の声である。データを活用した農業に対する現場の就農者の方の意識は、現状では決して高いとはいえない。「どんなデータPFであれば、農家の方が活用したいと思うのか」ということを、地道に拾い上げ、それをデータPFに再び反映していくことが、意味のあるデータPFを作っていくうえで重要である。

 7月上旬、日本総研の農業チームのメンバーが、グループ会社である三井住友銀行および三井住友ファイナンス&リースが出資する株式会社みらい共創ファーム秋田に伺い、データPFの活用に関してヒアリングを行った。ヒアリングしてあらためて認識したのは、データPFを活用することによる就農者にとっての具体的なメリットが訴求できていないという点であった。一方、今後データPFを普及していくためには、「個々の農家よりも農業生産法人や単協がよいのではないか」といったヒントもいただけるなど、大変有意義なヒアリングとなった。

 今後、データPFを社会インフラとして普及させていくためには、現場の農業者にとってメリットと感じるような現場目線に立った成功事例を1つずつ積み上げていくことが最も重要だということを、秋田でのヒアリングからあらためて痛感した。2017年8月22日には、データPF普及に向けて、「農業データ連携基盤協議会」(通称:WAGRI)が設立される。この協議会には、データPFに関心を有する企業、団体、個人等の参画が期待されており、農業界の企業のみならず、さまざまな業界の企業等からデータPFの多様な活用アイデアが出てくるであろう。日本総研もデータPFを活用できる社会インフラとしていくことを目指し、絶対に忘れてはいけない「現場目線」を常に持ちながら、成功事例を小さくても数多く積み重ねていくよう尽力したい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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