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アジア・マンスリー 2017

【トピックス】
2017~18年の中国経済見通し

2017年05月19日 関辰一


中国経済が持ち直している。政府が構造調整の手綱を一時的に緩め、安定成長を優先した結果である。ここにきて政府は再び構造調整の手綱を締め始めたため、景気は緩やかな減速に向かうと見込まれる。

■景気に持ち直しの動き
中国では、2017年1~3月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.9%と、2四半期連続で上昇した。景気減速に歯止めがかかっただけでなく、持ち直しの動きがみられる。

主要な経済統計をみると、安定成長を優先した当局の景気下支え策により、1~4月のインフラ投資が前年同期比23.3%増と大幅に拡大した。水利や道路、鉄道など幅広いインフラ分野で投資が拡大した。

1~4月の不動産開発投資も同9.3%増と、昨年から加速した。2014年11月以降の6回にわたる貸出基準金利の引き下げを受けて、住宅販売が拡大したことが背景として挙げられる。

ここ2年間大きくスローダウンした民間固定資産投資も同6.9%増と、減速傾向に歯止めがかかり、持ち直しが鮮明になってきた。企業の景況感が改善するなか、医療や娯楽などのサービス業のみならず、通信機械や電子部品、はん用機械などの民間製造業の設備投資にも回復の動きがみられる。

輸出も世界経済の回復によって同4.2%増とプラスに転換した。消費主導の成長が続く米国向け輸出がいち早く回復したほか、新興国向け、EU向けも持ち直しつつある。

個人消費の増勢鈍化にも歯止めがかかる兆しが出ている。2016年まで4年連続で伸び率が低下していた実質小売売上高は、2017年1~4月に前年同期比8.8%増と上昇に転じた。これまで続いてきた企業のリストラが一服したため、1~3月期の求人数は前年同期比7.8%増と、9四半期ぶりに増加に転じるなど、雇用・所得環境の改善が背景にある。

以上のように中国では、政府による下支え策だけでなく、民間需要や外需の回復にも支えられて、ほぼすべてのセクターにわたって前向きの動きが広がっている。

■背後でくすぶる問題
もっとも、こうした動きは、内外需の落ち込みが懸念されるなか、政府が構造調整の手綱を一時的に緩め、安定成長を重視したことで実現したものである。成長加速の裏で、様々な問題が一段と大きくなってきたことは見逃せない。

まず、住宅市場の過熱状況が続くなど、企業や個人による投機的な動きが続いている。70主要都市の住宅価格をみると、上昇した都市数が増加しているほか、平均価格も上昇している。また、代表的なシャドーバンキングの資金調達ツールである銀行理財商品の2016年末の残高は前年比23.8%増と、拡大に歯止めがかかっていない。さらに、過剰生産が指摘されてきた鉄鋼などの重工業セクターの生産も再び拡大している。

中国では、これまでの投資主導型成長から脱し、持続可能な消費主導型成長へ切り替えていくことが、中長期的に目指す構造改革の方向性である。産業構造面では、重工業や建設・不動産の比率を引き下げる一方、サービス産業の比率を引き上げていく方針である。それに対してこのところの成長パターンは、こうした政府の構造改革に逆行するものが多く、持続性は乏しいとみておくべきである。

■再び構造調整の手綱を締める中国政府
今後を展望すると、景気失速リスクが後退したことから、政府は再び構造調整の優先度合いを高め、一部に見られる過熱した動きにブレーキをかけるとみられる。

すでに実施されたのが、小型車減税措置の縮小である。通常、排気量1,600cc以下の小型車の取得税率は10.0%であるが、2015年10月から2016年末まで5.0%に引き下げられていたため、その間の自動車販売は急増した。当局は2017年初から取得税率を7.5%に引き上げたため、4月の自動車販売台数は前年同月比▲2.2%と前年割れになった。

次に、財政政策も緊縮姿勢をやや強めた模様である。2016年12月の中央経済工作会議から政府はインフラプロジェクトの承認を抑制し始めるようになったとみられる。この結果、1~4月の新規着工総投資計画額は前年同期比▲5.9%と減少に転じている。

加えて、金融政策も引き締め方向に微調整している。中国人民銀行は公開市場操作を行う際のリバースレポ金利を本年2月から2カ月連続で引き上げたほか、金融機関向けの中期貸出ファシリティ(MLF)も引き上げた。このほか、資産バブルの抑制を重視する姿勢を明示し、2016年10月に続き、3月にも多くの都市において頭金比率引き上げ等の住宅価格抑制策を発表した。シャドーバンキング抑制に向け金融監督も強化している。

こうした政府の経済運営姿勢を反映して、先行きの中国経済は緩やかな減速に向かうと見込まれる。2017年通年では2016年と同じ6.7%成長、2018年は6.4%成長にコントロールされる見通しである。
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