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CSRを巡る動き:SDGs主流化に向けた日本の取り組み

2017年01月04日 ESGリサーチセンター


 「持続可能な開発目標(SDGs)」が日本国内で少しずつ定着し始めています。2016年5月には安倍首相主導のもとで全省庁が参加するSDGs推進本部が設置され、更にその下部構造として、SDGs推進円卓会議と呼ばれる行政、市民社会、民間セクター、国際機関、有識者等による会議体が今年9月12日(第1回)、11月11日(第2回)に開催されました。何れもわが国としてのSDGs実施指針と具体的施策の検討のための議論が行われ、そのアウトプットであるSDGs実施指針骨子が内閣府のホームページに公開になっています(2016年11月時点)(注1)。

 それでは、日本のSDGsの達成に関する足元の状況はどのように評価されているのでしょうか。2016年7月にドイツのベルテルスマン財団が国連と協力し、世界各国のSDGs達成状況をまとめた報告書”SDG INDEX & DASHBOARDS” を発表しています(注2)。それによれば、日本は149カ国中で18位と上位にランクされているものの、17の目標中、達成できているのは、「目標4:質の高い教育」「目標6:安全な水とトイレ」「目標9:産業と技術革新基盤」の3項目のみでした。一方、「目標1:貧困」「目標5:ジェンダー平等」「目標7:クリーンエネルギー」などは達成には程遠い状況であると評価されています。

 このような未達成の目標を2030年迄に解決することを目的として、SDGs実施指針骨子ではその推進に向けた体制に関して、市民社会、民間セクター、消費者、地方自治体、科学者コミュニティ等、広範なステークホルダーとの連携の必要性を訴えています。市民社会については、2016年4月にはSDGsに関わる分野の課題解決に取り組むNGO・NPOからなる「SDGs 市民社会ネットワーク」が組成され、先述したSDGs推進円卓会議に参加しています。民間セクターについても、国連グローバルコンパクトネットワークの加盟企業をはじめ様々な企業がSDGsへの取り組みを開始し始めています。実施指針骨子においても「SDGsを社会貢献活動の一環として取組むのみならず、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じて社会的課題の解決に貢献する」ことが推奨されています。加えて、民間セクターにおけるESG投資の重要性についても言及されています。前述した円卓会議には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も参加していますが、そのGPIFが2015年9月のSDGs採択時の国連総会でPRI署名を発表したことを鑑みても、ESG投資の一貫でSDGsに貢献し得る組織や事業への投資が今後進むことでしょう。行政側でもSDGsに関連した取組みを行う企業への奨励策の検討を開始するようです。

 国連の2030アジェンダでは、SDGsを国家計画や戦略に反映することが求められていることから、今後、関係負省庁における各種計画・方針策定が進み、それに伴い関係制度の改革や施策実行のための財源確保が進んでいくでしょう。そうした行政の動きに加え、先に挙げたステークホルダーが足並みをそろえ、各個の活動においてSDGsを主流化していくことが、2030年の目標達成に向けた鍵といえるでしょう。

(注1)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/index.html

(注2)http://www.bertelsmann-stiftung.de/en/topics/aktuelle-meldungen/2016/juli/countries-need-to-act-urgently-to-achieve-the-un-sustainable-development-goals/
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