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CSRを巡る動き:持続可能な開発目標と企業

2015年04月01日 ESGリサーチセンター


 2015年は、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成年次です。ミレニアム開発目標は、21世紀を迎えるにあたって採択された「国連ミレニアム宣言」に基づき、2015年までに国際社会が達成すべき8つの開発目標を掲げました。2015年以降(ポスト2015)の開発アジェンダに関する議論は数年前から始まっていますが、2015年9月の国連総会でいよいよ決定される見込みとなっています。
 ポスト2015開発アジェンダでは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)」が置かれ、その達成年次は大枠では2030年と予定されています。
 2014年7月に、「持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループ」により、17項目からなる目標案が発表され、同年9月の国連総会に提出されました。ミレニアム開発目標と比較すると、数が倍に近く、すべての分野において具体化された内容となりました。

 特に目につく4つの点を見ていきましょう。まず、飢餓の撲滅と並んで、食糧安全保障や持続可能な農業の促進が挙げられています(第2項目)。飢餓や栄養失調を撲滅することに加え、小規模農家や特に女性などの生産性と収入の倍増、持続可能な食糧生産システム、遺伝子資源の多様性確保などが付随目標に明記されています。農業の高付加価値化や高度な技術開発が進められていますが、開発目標からの要請にも応えられるビジネスであれば国際的な評価も高まるのではないかと考えられます。
 次に、教育については、初等教育だけではなく、生涯学習を含むすべての人々への教育が挙げられています(第4項目)。初等教育や平等な就学機会の確保に加えて、青年や成人向けの技術・職業訓練、就業及び起業支援などの必要性が強く意識されていることが読み取れます。また、教育を受けるすべての人が持続可能な開発についての理解を深めることも付随目標に挙がっています。教育は企業の社会貢献活動で重点テーマとして取り上げられることが多いテーマですが、技術支援や社内での教育訓練も深く関係することが分かります。
 次に、環境に関する目標についてです。ミレニアム開発目標では1つ(環境の持続可能性確保)だけだったのに対し、今回は水と衛生(第6項目)・エネルギーサービス(第7項目)・持続可能な生産・消費形態(第12項目)・気候変動(第13項目)・海洋資源(第14項目)・生物多様性(第15項目)と、独立して6つが掲げられています。国際的な枠組みや国・地域・企業レベルでの努力にも関わらず、結果としての環境の劣化が止まっていないことの表れでしょう。企業の及ぼす悪影響のさらなる緩和に加えて、技術革新で問題を克服していく余地が大きく残されていることが示されています。

 最後に、持続可能な経済成長(第8項目)・持続可能な産業化(第9項目)・持続可能な都市(第11項目)にあるように、「持続可能な」という表現を用いて経済活動を開発目標に取り込んでいる点も注目に値します。第8項目では持続可能な経済成長と同列にディーセント・ワーク(適切な雇用)の促進が挙げられていますが、例えば生産性の向上や同一賃金・同一労働など、企業にとっても関係の深い表現が並んでいます。
 これまでミレニアム開発目標(MDGs)といえば、政府の責任範囲か、せいぜい寄付などの社会貢献活動で協力する対象だと、多くの企業は考えてきました。しかし、持続可能な開発目標は、企業に事業遂行そのものを通じて、目標達成への貢献を呼びかけるものとなっています。ここで、そうした呼びかけに応えることは、企業にもメリットを生むという発想転換が重要です。なぜなら、目標からは、ビジネスプロセスの変革や社会課題解決に資する製品・サービスの開発や普及のヒントが数多く読み取れるからです。
 新たに策定される持続可能な開発目標に、経営の観点から積極的に関心を寄せる企業は、早晩、高い評価を獲得するといえるでしょう。
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