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日中関係の夜が明ける前に

2015年02月24日 井熊均


 先週、日本の株価がITバブル以来の高さを記録しました。2015年3月期には最高益を更新する企業も多く、税収も大きく上振れするようです。2年余にわたるアベノミクスの効果が出てきた、と素直に受け取っていいのではないでしょうか。

 経済が上向き、業績が回復すると、企業は成長のための投資先を探すようになります。企業も我々コンサルタントも、成功している企業を分析して、それに倣おうとするのが常です。例えば、富士重工は他社が軽自動車と新興国に注力する中、魅力的なスポーツビークルとアメリカ市場に絞ることで、自動車業界随一の収益性を実現しました。成功する事業に学ぶことは大切ですが、問題は何を学ぶかです。全ての企業に共通する成功の戦略はありませんから、最も重要なのは、成功の戦略に行き着いた思考の過程にあるはずです。表層的に学べば、二番煎じ、時期を逸することになり、収益も成長も得られません。

 日本にとって、東南アジアやアメリカの重要性は今後とも変わることはないでしょうが、今年は中国市場の重要性を再確認すべきではないかと思っています。世界第三位の経済力を持つ日本の企業の成長を支えるには大きな市場が必要です。春節の「爆買い」が話題になっているように、中国の経済力は驚くほど高まっています。7%を低成長と言って、中国の行方を揶揄する日本の報道だけを見ていると中国市場の実力を見誤ります。尖閣列島問題では多くの企業が被害を受けましたが、振り返って見ると、歴史的な政治の巡り合わせゆえのトラブルであったようにも思えます。

 中国人は「井戸の水を飲む時は井戸を掘った人のことを考えろ」と言いますが、ビジネスの現場でもこうした価値観が明確です。苦しかった時に支えてくれた人を実に大切にする一方で、有名になってからやって来た人には損得で付き合う文化があるように思うからです。中国での事業が加速すれば、日本経済は一層上向くはずです。冷え込んできた日中関係の夜が明ける前に、動き出したいものです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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