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CSRを巡る動き:2014年ダボス会議の論点

2014年03月01日 ESGリサーチセンター


 先月下旬、スイスのリゾート地ダボスで世界経済フォーラムの年次大会(通称ダボス会議)が開催されました。1971年から始まったこの会議には、今日、世界の政治家、企業のトップ、選ばれた知識人ら3000人以上が集まり、世界の諸問題について話しあう場となっています。今年の会議では、日本の首相が会議冒頭の基調講演を務め、「成長戦略」を語ったことが、国内のメディアでは大きく報道されました。ただ、会議全体のテーマは「世界の再形成:社会・政治・企業活動にもたらされるもの」というもので、「破壊的なイノベーションの促進」とならんで、「包摂的な成長の実現」「社会の新たな期待への対応」「90億人の世界を持続させるために」という4つの柱のもとに設定された250に及ぶセッションには、「女性活躍」「医療の未来」「気候変動」「ビッグデータ管理」「人間の尊厳」「食糧安全保障」「倫理的資本主義」「腐敗防止のシステム」「働くことの平等」などのタイトルも目立ちました。

 年次大会に先立つ、1月16日、世界経済フォーラムは「グローバルリスク2014」と題する調査レポートを公表しています。このレポートでは、属性の異なるフォーラムメンバー700人に31のリスク要因を示して、「2014年に懸念されるリスク」と「10年後を展望して、発生の確度の高いリスク、影響の大きいリスク」を評価付けして貰った結果が示されています。興味深いのは、「10年後を展望して、発生の確度の高いリスク」とされた上位には、「所得格差」「異常気象」「失業や不完全雇用」がランクされ、「10年後を展望して、発生の影響の大きいリスク」には「財政危機」がトップであるものの「気候変動」と「水資源枯渇」がそれに続くという結果になったことでしょう。「企業の社会的責任」の脈絡で議論されるトピックスが、世界にとって大きなリスクであると認識されているということです。

 このうち「所得格差」は、2012年と2013年の調査レポートでも、「10年後を展望して、発生の確度の高いリスク」として指摘されていました。今年の年次大会でも、ノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツ・コロンビア大学教授が、「不平等のコストが、経済、民主主義、社会の側面において、大きなコストとなっている」と痛烈な批判を行ったのは印象的でした。年次大会に先立って、国際的なNGOであるオクスファムは、” Working for the Few”という報告書を発表し、「先進国と途上国の区別なく、前例のないほど格差が拡大している」「世界人口の1%の最富裕層が世界の富の半分を独占している」「最富裕層85人の資産総額が、世界人口の所得下位半分の総資産額に匹敵する」と指摘。ダボス会議に出席している世界の有力者に、「累進的な課税を推進し、自らは決して租税回避をしないこと」「民主的な決定プロセスを無視して自分の富を政治的に利用しないこと」「自らが実質的所有者となっている会社や信託への投資は全て公表すること」「自国政府に対し、税収を保健医療、教育、市民の社会保障へ使うよう働きかけること」「自らが所有または支配している会社に対し、生活賃金を払うよう要求すること」「経済界の他の有力者に対し、これらの誓約を宣言し守るよう働きかけること」を内容とする「格差是正のための6つの誓約」に誓約するよう要請しました。

「所得格差の是正」は、企業経営者自身がその当事者であることも相まって、企業が社会的責任の観点から何ができるのかが問われる一年となりそうです。
以上

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