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需要家同士を結ぶ「ヨコ」の電力自由化で時代の先取りを

2012年08月20日

【要 旨】

1.2005年以来凍結されていた電力の小売全面自由化の方針が決まり、加えて、送配電を分離する方向性も示された。日本での電力自由化は、1995年の発電部門の規制緩和により解禁となり、2000年にはPPS(Power Producer and Supplier: 特定規模電気事業者)という電力の発電と小売を行う事業者の新規参入が認められた。しかしながら、PPSのシェアは、PPS参入後10年以上経った今も3.5%に過ぎず、日本の過去の電力自由化は失敗したと認識すべきである。自由化がうまくいかなかった最大の理由は、安定供給を錦の御旗に、電力会社の経営の安定性を前提に、電力会社の発電ポートフォリオ、垂直一貫体制、地域会社毎の供給完結の枠組みなど、既存の事業構造が温存されたこと、そして電力会社の利益の源泉である小口の自由化をストップしたこと、である。

2.ようやく再開された日本の電力自由化だが、海外の自由化の市場の成り立ちを踏まえると競争性の高い市場の形成は期待できない。小売を全面自由化しても、発送電を分離しても、2億kWの豊富な発電資産を持つ電力会社に、2百万kWの発電資産しか持たない小規模な新規参入者が挑む、という構図は変わらないからだ。欧州での経験を踏まえると、小売部門での競争と発電市場の競争を同時並行的に進めることが必要である。また、競争性のある発電市場を作るには、送配電の独立化のみならず、発電と小売の分離が必要だ。

3.一方、最近、エネルギー問題に関する意識の高まりと技術革新により需要家が自家発電や需給制御機能を持つケースが増えており、供給者、需要家の一元的な線引きが困難になってきている。こうした需要家の位置付けが変化した要因の一つは、分散型エネルギー技術の向上である。この分散型エネルギー技術にICTを取り込み、需要家が積極的に参加できる、新しいコンセプトの市場の形成が重要だ。そうなれば、通信市場の開放が携帯電話、インターネットという市場の創出の要因となったように、エネルギーを中心とした新たな市場の創出が期待できるはずだ。

4.日本のあるべき自由化を考える上で、「タテ」と「ヨコ」の二つの視点が重要である。一つ目は、2000年以降の供給者と需要家を結ぶ「タテの自由化」の完遂である。二つ目の視点は、需要家サイドでの電力融通を自由に行える「ヨコの自由化」の制度設計だ。一つ一つの需要家は小粒だが、「アグリゲーター」が需要家を束ね、自由なエネルギーのやり取りをサポートし、大きな発電プールを作り出すことができる。こうした動きを後押しするため、具体的なビジネスモデルの環境整備を図ることが重要だが、新たな需要サイドのモデルは、国内市場はもちろん、海外のスマートシティに向けたインフラ・システム輸出の商品にすることも期待される。そのためのシステムやノウハウを作り込むには、「ヨコの自由化」を形作るための市場制度が必要だ。

5.この20年競争力の低下が続き、震災でエネルギーシステムのあり方を根本から覆された日本に、「自由化」を欧米に追いつく取り組みと捉えている余裕はない。次世代の分散型エネルギー主体の最先端の電気事業モデルを世界に指し示し、インフラ・システム輸出で世界に切り込む新たな産業群を作り上げることが、今、日本で本当に必要な「全面自由化」である。

本件に関するお問い合わせ先

創発戦略センター 
瀧口 信一郎 TEL: 03-6833-6174 E-mail: takiguchi.shinichiro@jri.co.jp

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