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ギリシャ「ユーロ離脱」の場合に想定されるシナリオ

2012年06月05日

【要 約】

1.5月6日のギリシャ総選挙で、EU主導の厳しい緊縮財政に反対する急進左派連合(SYRIZA)が躍進したことから、ギリシャのユーロ離脱観測が浮上。もっとも、ギリシャのユーロ離脱は、政治的に高いハードルがあるほか、経済的な合理性も乏しく、加えて、実務面からみても多大な負担が発生するため、依然「リスクシナリオ」の域を出ていないと判断。もっとも、リスクシナリオの生起確率が高まったことも事実。そこで、以下では、ギリシャがユーロから離脱した場合に想定されるシナリオを検討。

2.まず、ギリシャで想定されるシナリオを検討すると、過去にデフォルトを余儀なくされた国(ロシア・アルゼンチン)では通貨価値が約4分の1に減価。こうした通貨安を通じた輸入物価上昇により、インフレ率がロシアでは120%超、アルゼンチンでも40~50%まで上昇しており、国民生活の疲弊は必至。

3.ユーロ圏で想定されるシナリオを検討すると、キプロス以外対ギリシャ貿易のシェアが1%未満にとどまっており、実体経済面からの直接的な影響は限られる見通し。一方、金融面をみると、ギリシャが負っている4,000億ユーロ弱の対外債務は、新通貨の大幅減価により、事実上デフォルトに陥る可能性があり、ユーロ圏ではGDP比▲3.4%程度の損害が発生する見込み。ただし、被害は、ECB・欧州各国中央銀行・国際機関に集中しており、短期的にみれば、経済への悪影響は軽微にとどまる見通し。対ギリシャ向け与信の焦げ付きなど金融機関を通じた悪影響も、昨年12月以降、ECBが実質的に南欧諸国の銀行のファイナンスを全面的に支えている状況下、深刻な金融不安にはつながらない公算大。

4.もっとも、ギリシャのユーロ離脱により、これまで出口がないとみられてきたユーロ体制に綻びが生じれば、次の離脱国について懸念が強まるのは不可避。とりわけ、経常赤字、かつ、プライマリーバランスも赤字である、ポルトガル、スペインで、その懸念が強まる恐れ。

5.危機がポルトガル・スペインに波及していくのを封じ込めるためには、ECBによる国債購入・長期資金供給などのほか、ESMによる融資可能額増額など、「防火壁」を一段と強化することが欠かせない。さらに、重債務国が抱える病巣を根本的に治療していく必要。その処方箋として、重債務国は(1)財政規律強化、(2)域内競争力回復に向けた単位労働コストの引き下げ、その手段として労働市場の流動化等の規制緩和に取り組む必要。同時に、慢性的な低成長に陥っているポルトガル・イタリアに対する成長支援、住宅バブル崩壊により未曾有の不良債権が発生しているスペインの金融システム安定化に向け、ユーロ共同債の発行、ESM・EFSFの銀行の資本増強への充当など、財政統合に向けて腹を決めた施策が不可欠。

6.為替への影響をみると、ユーロ加盟国が財政統合に向けた強い意志を示さない限り、不安定な相場展開から抜け出せない見通し。現状、ユーロ圏の重債務国にとって、対域外での通貨安以外にデフレスパイラル回避・景気浮揚の手段がなく、欧州各国はユーロ安を志向した政策を続ける公算大。ユーロ圏各国が財政統合に向かわず、通貨ユーロに対する信認が失われれば、ユーロの保有比率引き下げから、1ユーロ=1ドル割れも視野に。対円でも、欧州債務問題の抜本的な解決に目途がつくまでは、持続的な円安ユーロ高の進行は期待薄。

本件に関するお問い合わせ先

調査部 マクロ経済研究センター 牧田 健
TEL: 03-6833-0928
E-mail: makita.takeshi@jri.co.jp

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