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一次産業・食関連産業の復興に向けて

2011年07月05日 田中千絵


東日本大震災の発生から、まもなく4カ月がたとうとしている。今回の震災が、東北3県をはじめ、日本に与えた影響が大きいことは周知の通りである。特に一次産業や水産加工業への被害・影響に目を向けると、津波による耕地・建物の流出や、原発事故による出荷停止・風評被害など、その被害は多岐にわたり、またその被害額も非常に大きくなっている。

今回の震災では、発生直後から日本全国の支援の機運が非常に高かった。日本赤十字社に寄せられた義援金の額(平成23年6月28日現在約2554億円。阪神大震災の際は総額で約1007億円)だけを見てもそれは明らかであり、他にも物資支援や風評被害に遭っている農産物の買い支えなど、生活者がそれぞれに支援の取り組みを行っていた。しかし、時間がたつにつれてその機運は低下しつつあるように感じる。

今後は復旧・復興に向けた息の長い支援が必要になってくる。既に民間企業が主体となった継続的な支援を行うための新たな取り組みも始まっており、ミュージックセキュリティーズ株式会社が運営している「セキュリテ被災地応援ファンド」はその一例である。このファンドでは、営業再開を目指す食品関連企業について、復旧に必要な費用を、1口1万円からの出資を個人投資家から募って応援していく。半額は寄付、半額は出資という形になっており、投資した企業が事業再開にこぎつけた暁には、個人投資家に対して、配当とその企業の商品等が届く。このファンドには、個人投資家すなわち生活者にとって、自分の応援したい企業に直接出資することができ、また顔の見える関係を築けた企業から安全・安心な食料を将来的には確保できるというメリットがある。企業にとっても、復興に向けた資金をできるだけ早く確保したいというニーズにかなっており、それに加えて将来の顧客になる生活者を獲得できる点が魅力である。

上記の取り組みを一例として、生活者が関わる形で継続的に支援を続けていくことは非常に重要である。ただし、いつまでも支援という形で続けていくことは現実的ではない。生活者が支援者という立場から、被災地の一次産業者・食関連企業と直接的に関係を持ちながら消費者として買い支えていくように転換していくことが必要である。生活者や民間企業による支援のあり方等を復興後のことまで想定した形で検討し、それを実現するためのプラットフォームの創出に向け、現在弊社では準備を進めている。今後の復旧・復興、東北地方の更なる発展に寄与できるよう取り組む所存である。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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