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農業再生の視点

2011年03月08日 大澤信一


昨年11月、菅総理がTPP(環太平洋経済連携協定)参加の本格検討を指示して以来、農業再生は、国政の最重要課題のひとつとして浮上してきた。現在のところ、政府の「食と農林漁業の再生本部」が本年6月に向けて、担い手育成、農地集約化、流通多様化の三位一体の改革で基本方針を取りまとめる予定といわれている。

筆者は、これまで日本農業の再生には、単なる規模拡大では不十分で、成功している農産物直売所などに着目し、流通全体に占めるその比率を例えば2割程度まで拡大する政策と、農業再生を地方分権を進める際のテストケースと位置付け、少なくとも道州制レベルでの地方版「食料・農業・農村基本法」を作成すべきだと提案してきた(例えば、日本総研シンポジウム「地域が主導する食農システムの構想」(PDF:1324KB)参照)。

この見方は、現在もまったく変わっていない。日本農業では、農地面積、農業産出額、農家数のいずれにおいても約4割はいわゆる中山間地であり、規模拡大には限界がある。また、長い海岸線に沿って、狭い農地と沿岸漁業で半農半漁という農業形態の地域も少なくない。このような地域の農業は多品種少量生産であり、豊富な品揃えが求められる直売所という販売形態に非常によく適合する。また、最近の繁盛直売所は昔の直売所とは異なり、店舗には出荷者の携帯電話と連動したPOSシステムが導入され、消費者ニーズに迅速に対応することが可能である。さらに、一人1台という地方の徹底した車社会のメリットを最大限に享受して、従来には考えられないほど広い商圏を持つフードシステムを実現している。

このような繁盛直売所は遠隔の都市部からも多くの消費者を集めている。これらの都市部の消費者の周りには大手量販店も多数存在し、そこには海外からの安価な農産物も並んでいるから、繁盛直売所は強い国際競争力も併せ持っていることになる。まさにTPP時代の新しいフードシステムだと言うこともできる。
これから山場を迎える農業改革に、繁盛直売所の活用と地方版「食料・農業・農村基本法」の制定という2つの軸を改めて提案したいと思う。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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