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厳しさを増す大学生の就職状況と職業教育の重要性

2009年11月17日

要 約

1. 大学卒業者、大学院修了者の就職状況は景気動向に大きく左右される。ただし、就職・採用活動の時期と卒業の時期のずれなどから、卒業年次より1 年程度前の景気の影響が大きい。このため、2009 年3 月卒業・修了者の場合は景気悪化の影響が限定的だったが、2010 年以降の卒業・修了予定者には大きな影響が出ると懸念される。

2. 大学、大学院在籍中の過ごし方よりも、就職・採用期間にどのような景気情勢に巡り合うかに振り回されることは好ましくない。新卒か否かより、資質や能力などが就職・採用を左右するようになることが望ましい。それには企業側の対応だけでなく、大学や学生側にも職業人養成機能の強化、職務適応力の取得が望まれる。雇用対策として職業訓練や技能取得に関する支援制度等の政策を行うことも重要だが、在学当時や卒業後を通じて関連が乏しい分野の職業訓練を受けるよりも、一定の下地を備えている方が適応もはやいと期待される。

3. 新規卒業時の職業をみると、新卒以外の労働市場では求人が最も弱い事務従事者が最も多い。現状の新卒一括採用中心型の枠内においては需給を反映した結果と言えるが、就職希望者の学業経験や資質に基づく職業との結びつきが重視されるような方向を目指すとすれば、学業と職業の関係が曖昧であるという課題を内包している。

4. 学科系統別では、保健系、工学系は学業と職業の結び付きが強い就職が大半である反面、人文科学系、社会科学系は事務従事者が多い。学業と職業の関連の曖昧性は、特定の技能や専門知識などを必要とするもの以外であれば幅広い職務を割り当てやすいという利点もあるが、新規卒業時以外の求職においては、事務従事者に対する需要が弱いという問題に直面することや、求人の多い職業で要求される技能や専門知識を満たせない事態に陥ることが懸念される。

5. 社会が抱える様々な課題や求められる人材という観点から大学教育をみると、経済活動等においてアジアとの関係が重要性を増していると指摘される割には、大学におけるアジア専攻の存在は大きくなく、欧米中心である。一方、大学で福祉や地域振興の専攻の存在が大きくなっていることは社会の課題を反映したものと言える。ただし全体としてみると、学業と職業の関連が曖昧な人文科学系、社会科学系が多くの定員を占めており、しかも関東や関西に集中している。

6. 定員が多い人文科学系、社会科学系で地域偏在が強いために、大学全体でみても定員は関東、関西に集中する傾向となっている。このため、高校を卒業して大学に進学する際に、他の地域から関東と関西に多くの学生が移動する。

7. 人文科学系、社会科学系を中心とする関東、関西への大学生の集中は、就職の段階になると、どのように就業機会を見つけるかという問題を生む。関東や関西には多数の企業が集積しており、事務従事者をはじめ就業機会も多いが、学生の分布ほどは多くない。大学卒業者は、就業する際には、入学時とは逆に関東や関西から各地域へ分散する。ただし、就業後10~15 年前後を経ると、関東に再び集まる傾向がみられる。

8. 入学志願状況や就職状況などに問題を生じている大学は、専攻分野の構成見直しも一法である。学業と職業の関連が強い専攻、地域的特色を生かした専攻、大学の特徴を出すために一工夫した専攻などの比重を高めることなどが考えられる。

9. 学業と職業の関係緊密化を実現するためには、大学が専攻分野の改革を行うだけでは不十分である。定員割れの大学が大幅に増加し、入学試験によって志願者を絞り込むどころか、いかにして入学者を増やすかという課題を抱えている大学もあるため、学習意欲や学力が不足している学生が増えているという指摘もみられる。学生も、将来大学卒業者として期待されるような職務適応力を、学業を通じて身に付ける必要がある。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社 日本総合研究所 調査部 関西経済研究センター 吉本

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