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デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか 著者インタビュー

  • デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか
    デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか
    著者:山田久
    東洋経済新報社/2010年7月/¥1,890(税込)

このたび、調査部 ビジネス戦略研究センター所長/主席研究員 山田久編著による「デフレ反転の成長戦略」を東洋経済新報社より刊行いたしました。本書をお読みいただくためのポイントや、執筆の背景などについて、山田よりご紹介させていただきます。

◆著者・山田久からのメッセージ

世界経済危機から1年半以上経過し、景気は回復傾向が定着してきましたが、日本経済の中長期的な成長のパスが見えたわけではなく、デフレという十年来の構造問題は解決されていません。この根本的な原因は、低生産性部門が温存され、成長部門にヒト・カネがシフトしないことにあると考えられます。その結果、「過当競争」が繰り広げられ、低価格競争→人件費削減→家計の低価格志向化→低価格競争→…という「値下げと賃下げの罠」に陥っているという構図が続いています。


この構図を根本的に転換しなければ、十年以内にわが国の財政は破綻し、国民生活が大きく混乱することは避けられないでしょう。景気が持ち直し始めたときが肝心であり、いまこそ改革の必要性を主張することが極めて大切だと考えます。本書はそうした危機意識を喚起するとともに、いま取り組みをはじめるべき日本経済と日本企業の再生に向けたトータル・プログラムを提示したい、との思いで書き上げました。


デフレの原因に対するエコノミストの有力な見方は、マネーの不足であり、日銀の金融緩和が不十分であるというものです。しかし、筆者はそれには限界があり、むしろ金融緩和の行き過ぎが低生産部門の温存を通じて、デフレを構造化させてきたと考えています。


「値下げと賃下げの罠」は、直接的には、事業構造転換よりもコスト削減を優先する日本企業の行動様式がもたらしたものです。しかし、その背景には、労働組合のあり方をはじめとしたわが国労働市場の成り立ちや、政府による政策スタンスによって方向付けられてきたことを見落とすことはできません。本書では、そうした構図を国際比較の視点から浮き彫りにし、見失われかけているようにみえるわが国経済社会の方向性を指し示し、政策メニューのみならず、経営戦略の面からもその実現に向けた具体的な処方箋を描いています。


本書の主要テーマは「デフレ」と「成長戦略」であり、日本経済と日本企業をいかに再生させるかを論じたものですが、近年、筆者が主に取り組んできた雇用・賃金システム改革についての考えが根底にあります。その意味では、政策のあり方や経営改革に関心のある方々のほか、企業の人事部門や労働組合に関わりのある方々にも是非とも読んでいただきたいと思っています。さらに、ちょうど参院選前という、あるべき政策を考え直す良い機会でもあり、この国の行く末を案じる多くの皆さんに手をとっていただきたいと思っております。

序章●「値下げ・賃下げの罠」に陥った日本経済(409.0KB)をお読みいただけます。


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