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新保豊の週刊雑記帳(2007年01月)

■■■『週刊雑記帳』(2007/01/29~02/04)■■■

◆放送業界にも新陳代謝が必要だ

 月曜午前。NIKKEI NET(BizPlus)の私の原稿「放送業界にも新陳代謝が必要だ」(2007/01/29)がアップされた。このコラムは、読者層が広範であり、あまり専門的なことは書けない。また、長い文章はネットでは不向きであるようなので、編集者の意向を尊重し、月に1回程度のペースで書く内容が簡潔になるよう努めている。それ以外のことは、『ときどき感想帳』に備忘録として、近く記しておきたい。

◆海外投資戦略のあり方

 月曜午後。ある情報通信会社の経営企画部門からの要望に応じ、海外投資戦略に関する相談に乗った。過去数年、海外投資戦略や海外事業に関するプロジェクトを実施しているので、そのエッセンスを示した。当社以外からも、投資銀行、外資系コンサルティングファームなどから考えを聴取している模様だ。

 日本企業は、特にITバブル時には、投資リターンを確保するどころか、減損処理を強いられるケースを随分と経験した。その経験から真に学んだ企業は少ないのではないか。海外投資戦略では、「提携型」か「マイノリティ出資型」か、あるいは「マジョリティ出資型」かにより、その出方やコミットメントのありようは変わってくる。日本企業は今後、マジョリティ出資型において海外で勝負できるような、組織ケイパビリティを強化していくことが求められていると感ずる。

◆組織の活性において重要な順番

 月曜夕刻。そこから帰社し、当社事業本部でのアドバイザリーコミッティに遅れて出席。組織の活性には、私は最近、「①楽しくて、会社に来るとためになる」、そして、そうした会社での仕事の成果が、「②社会的価値に結びつく(社会に寄与する)」、最後に、その結果として、「③会社の収益となって現れる」、という順番で捉えるのがよいと考えている。こうした考えを披露しても、多くの出席者には実感がないのかも知れない。

 この3つのこととその優先付けは、私自身がとってきたやり方でもある。特に、「①楽しくて、会社に来るとためになる」については、「会社≒チーム」と置き換えてもよい。気が合って、相互に尊敬できる人々の集まりとしての「Hot team」づくりが鍵を握る。全員が楽しく働ければ、より多くの仕事ができる。

 水曜午後。情報通信系企業からのリクエストであった、ある分野の海外ケーススタディ案件について。私は大概のことに対しては、”I wouldn’t say No.”ということにしているのだが、今回ばかりは一定品質を確保できるような体制が、この時期組めそうもないのでお断りわりした。夕刻、別の情報通信系企業のみなさんと新規ビジネスに関する、これまでのブレインストーミング結果などを整理するミーティングをもった。

◆昨年度の今頃の仕事と同様な仕事

 木曜午前。情報通信系サービス会社からのリピート指名案件について社内でミーティング。ちょうど1年ほど前は、同業他社2社とのコンペであった。後で聞くと、私たちの企画案は最高値であったが(コンペではいつも意識的にそうしている)、私たちが受注した。市場のシナリオに基づいた需要予測、競合企業とのゲームの戦い方、いくつかのサービスに関する需要の価格弾力性、そしてそれらから導かれるマーケティング戦略の考案など、多くの場数を踏んでいる内容ばかりだった。どれも興味深く、市場は常に動いているので、工夫の仕方は毎回異なる。それが面白い。

 今回も検討内容はほぼ同様。またプロジェクト期間も昨年度同様短いため、進め方にはかなりの工夫が求められる。幸い優秀な若手研究員・コンサルタントをプロジェクトメンバーにできそうなので、この案件も何とかなるだろう。また欧州系証券会社からの要望で、ある日本企業のデューデリジェンス案件について連絡が入り、一時ペンディング状態だったものが正式に動くことになった。

◆海外の金融機関からのファイナンス案件に関する問合わせ

 木曜夕刻。テレコムサービス協会傘下のVoIP協会の全体会合に参加。現会長らと来年度のことで挨拶と簡単なミーティングの場をもった。『月刊テレコミュニケーション』の編集者から、2月末締め切り(4月号特集)の「携帯電話販売奨励金を考える(仮)」についての原稿執筆依頼が入った。大概のことには、”I wouldn’t say No.”としているので応諾。

 金曜午前。米国系投資会社(大手金融機関)から、昨年からアドバイスしているある件でeメールが入る。フランスのある金融機関が、日本の情報通信系企業へのファイナンスを検討しているようだ。その関連で来週前半までに、3~4つほどの質問に対しその回答を求められた。また、来週後半に対面のミーティングを依頼されたので、お会いして日本の情報通信産業の現況や市場競争の状況などをご説明することとなった。

◆脱オリジナル化(リメイク化)

 続けて、情報通信分野のコンバージェンスに関する件で、社内でミーティング。社内食堂でランチ後、『WEDGE』の記者から取材を受ける。テーマは「脱オリジナル化(リメイク化)」。私のNIKKEI NET(BizPlus)の「"テレビ2.0"を展望する」(2006/08/11)をご覧になってくれたらしい。この記事とテーマとの関連性はそうないだろうが、私は概ね次のように答えた。

昔、流行ったコンテンツ作品(映画、漫画、テレビ番組など)に郷愁や愛着を持っている、団塊の世代および団塊ジュニアの存在感が増しているといった人口動態分布によるもの。

テレビ会社の下請け的な存在に甘んぜざるを得なかった、コンテンツ制作・製作会社の能力がそう大きくは変わっていない(高まっていない)という仮設。従って、オリジナル性がそれほど無くとも、リメイク版では一定の能力(模倣のスキルなど)を発揮できる実態にあること。

昔ヒットした作品(例:「巨人の星」、「踊る大捜査線」など)というビジネス基盤があるため、リスク・リターン曲線において、ローリスク・ハイリターンを比較的容易に期待できること。

特に漫画の制作プロセスでは、中国人などの安価な労働力が大量に制作現場に入っており、リターンを上げる際、昔に比べコスト効率化が一層はかれる環境下にあること。

 ざっとこんな具合だ。しかし、これは机上での想像、仮説に過ぎない。果たしてどんな記事になるのだろうか。

 金曜夕刻。東大の経済学部チームと霞が関にて、定例のミーティング(研究会)をもった。

◆指揮者・大野和士さんの「登るべき山を示し、一人一人を開放する」

 土曜夜半。1月25日放送(第39回)のNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、指揮者・大野和士さんに関する番組を録画で視た。 

 ≪大野は、25歳でドイツに留学して以来、ヨーロッパを中心に活動を続けてきた。言葉も文化も違う日本人が認められるのは並大抵の事ではない。少しでもハンディがあると思わせたら認めてはもらえない。大野は、その厳しい世界を指揮者としての力量だけで勝負してきた。新しい楽曲を手がけることごとに、膨大な資料を原語で読み込み、作品への理解を深める。そして英語、独語、仏語、伊語を自在に使いこなし、自分の作品の解釈を、歌い手や楽器奏者たちに伝える。

 番組の中で大野さんは、次のように語っていた。「①すべてにおいて相手を圧倒しなければ人はついてこない、②登るべき山を示す、③一人一人を開放する」と。一流のアーティストの世界は凄い。凡人にはとても真似できない境地であろうが、それでも大変示唆的であり、ビジネスの世界でも通ずるものがあるのではないか。

◆大学の事務仕事の生産性は低いまま?

 日曜午前。来年度から引き受けた、ある大学院の週末MBAコースのシラバスを書いて送った。Web向けのものらしい。昨年末に、Web版でないもの(紙のブローシャー?)を送っておいたはずなのだが。殆ど同じ内容であるので、各講師向けのコンテンツをWeb上で一括管理しておけば、大概の手間は省けるのではないか。大学の事務仕事は、企業ほどは意外と進んでいない実態が今もあるようだ。

 数年前あるIT系大手企業から、「大学マーケット」の攻略の件でアドバイスを求められたことがあった。そこでコンサルティング・プロジェクトとして、数ヶ月間この分野の仕事に従事したことを思い出した。このときは有名私大を対象に、都心部ほか関西圏まで出張し、各大学・大学院の学長や副学長または理事長らと20ほどの面談の場を持ち、様々な課題をお聞きした。米国のアイビーリーグをはじめ、海外の有名大学と比較したケーススタディ結果と併せレポーティングした。今も、このレポーティングで示した実態とさほど変わっていないのかも知れない。


■■■『週刊雑記帳』(2007/01/22~01/28)■■■

◆訪問営業にWebチャネルを用いたチャネルミックスのアプローチ

 月曜午後。ある情報通信サービスに関する簡易デューデリジェンス案件について、大手外資系証券会社の戦略投資グループ・ディレクターから電話があり、私のチームで引き受けることになった。また午後、情報通信政策に関する仕事の関係で、慶応大学環境情報学部の学生(4年生)と面談し、今週から同政策の仕事について補助して頂くこととなった。同学生の所属する研究室の助教授氏とは、日経デジタルコアの研究会や情報通信系シンクタンク主宰のユニバーサルサービス研究会で一緒になったこともある。2年ほど前だったか後者の研究会(T助教授もメンバーだった大学の経済学部、法学部の中堅・若手研究者が中心)の初回には、私が講師を務めたことを思い出した。

 火曜午前。「研究本_勉強会」を8時半から実施。今回はコンサルティング営業部のI副部長による、この勉強会では初の担当だ。I副部長のコンサルティング営業担当領域に関する活動状況や課題などを、詳細なデータとともに披露頂いた。当日の討議内容の詳細は、「ソリューション型営業」ここに。私からはその場で「チャネルミックスによるソリューション型営業」についてメモ書きし示した。討議録の再掲をする:


 コンサルティングのような高度な知識を必要とするソリューションビジネスの場合、過度の営業は商品価値を下げることに繋がることさえある。足元を見られないことも大切。
 ソリューションビジネスにおいてWebによる営業活動(≒情報発信)は大変有効である。これにはパターンがある。例えば、①「Put + Pull型」営業。
 ただし、多忙な経営者層(クライアント幹部)は、Webを見る時間が十分取れないので、営業部員がPushできればよい。いわゆるチャネルミックスを通じ、図表のような②「Put + Push型」の営業により、並列チャネルを用いたシナジーを発揮する仕掛け・仕組みを構築する。


◆「通信・放送産業の課題と今後の展望」@経団連

 水曜午前。日本経済団体連合会の産業第二本部から昨年依頼があり、情報通信委員会の次世代情報産業ワーキング・グループ向けに、「通信・放送産業の課題と今後の展望」について講演した。主な概要は、【1】通信・放送産業の国際競争力強化のあり方、【2】通信・放送の統合法制や仕組みをめぐる諸問題、【3】通信・放送の統合にとって望ましい法制度・仕組みのあり方、に関するもの。

 同本部から、終了後≪情報通信産業の国際競争力強化のあり方から、放送産業の現状、新たな形態のメディア誕生等の分析を踏まえ、今後の通信・放送の統合にとって望ましい法制度のあり方等について、行政組織の再編等を交えながら、広範にご説明いただくとともに、忌憚のない意見交換をさせていただき、大変参考となりました。≫との礼状を頂いた。この種の場では、当方側(講師)のほうが一層勉強になるのではないかと思う。

 同グループにて、2007年末まで次世代情報産業の在り方について議論を重ね、国へ報告書を提出するようだ。会場のテーブルには、NTT持株会社、KDDI、ソフトバンク、フュージョン・コミュニケーションズ、キャノン、トヨタ自動車、ソニー、日本IBM、東京ガス、みずほコーポレート銀行、東京海上日動火災、電通総研、楽天などの20社程度の企業担当者が参集していた。

 私は先頭バッターであり、次回には慶応大(デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授)に昨年転じた、中村伊知哉氏らだそうだ。中村さんとは、昨年あるセミナーシリーズ(2010年通信業界マップ~激動するマーケットを完全ナビゲート~)で、「通信・放送の融合」や「NGN」などに関するコーディネーターを、それぞれの会で引き受けたことがある。

 ちなみに経団連の講演内容のうち、同【3】の主な項目は次の通り。近くその内容を≪ときどき感想帳≫に記述しておこう。

 ◇地上アナログTV放送終了後の空き周波数の有効利用
 ◇規制フリーの「電波特区」の戦略的な活かし方 
 ◇通信・放送法制の今後の具体的イメージ案総務省などの府省再編

◆クリエイティブコモンズがイノベーションの温床

 水曜午後。霞が関にて、ある府省と京都大学経済学部のI助教授チームとの間で、競争評価に関するミーティングをもった。その後夕刻、一番町の当社にて情報通信分野のある企業と、新たなサービスに関するブレインストーミングを行った。これで3回目。午前中の経団連で取り上げた項目(放送メディア分野の市場見通しなど)についても一部披露。そろそろ様々なアイデアが出て来たので、一旦は整理を行っておくべき段階となってきた。

 中島聡さんのLife is beautifulというBlogの中に「こんな商品が欲しい!」という興味深いページがある。偉いもので(太っ腹なことに)、中島さんは、≪アイデア料など請求しないので、心配せずに作って欲しい。このアイデアはクリエイティブコモンズだ。≫と随所に書いている。また、≪残念ながら、今の仕事と離れすぎているので、私が実際に手を動かして作るわけにはいかない。そこで、このブログで商品企画を公開し、商品化してくれる人・会社を募集することにした。「アイデア料」を請求したりはしないので、ぜひ作って欲しい。本気で作ってくれるなら、ボランティアで商品企画のコンサルティングもしたっていいぐらいだ。≫ことも。このようなオープンソース方式によるアプローチにこそ、イノベーションの温床(=soil)が横たわっている。実際、このBlogページからヒントを得て、別のいくつかのアイデアが浮かんだ。

◆MNP制度スタートでもたらされたユーザーの効用

 木曜午前。あるところで、東大経済学部のO助教授のチームと携帯電話のMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)のこれまでの結果をどう分析・評価するかについてミーティングをもった。昨年(2006年)10月24日以降のMNPで、携帯電話3社間でユーザーが動いた。このMNPについては、日頃の経営コンサルティング・プロジェクトにて、かなりの程度分析済みだった。また、昨年の幾つかのセミナーやシンポジウムなどの場でも、その見通しを披露してきた。MNP実施前、そう多くのユーザーが利用しないだろうことを予測しており、実際その通りになった。

 このミーティングでは、ポータビリティの効果がどの程度あったものかを分析・評価することが目的だ。携帯電話ユーザーにとっては、通信会社を変更することに伴う「効用」が、制度利用時の「転出手数料」2,100円と転入手数料(=0円)、および「新規契約手数料」の合計額を上回るかどうかが判断基準となろう。また、機種変更時や新規購入時などの端末価格の要素も加わる。「番号ポータビリティ手数料+解約料まとめ」のページにうまく整理されている。

 一方、この効用には、単純な支出合計額を超えた通信会社のブランド価値や、将来予定されている有望サービスなどの期待要素も入っていることだろう。支出合計額の観点では、今般のMNP制度のスタート前から、各社のユーザー獲得キャンペーンが見られ、既に実質ある程度の「サービス料金」の値下げ状況にあった。そこへソフトバンクモバイルの大幅値下げ攻勢が加わったことで、番号ポータビリティに伴うユーザーの通信会社選択には、サービス料金値下げという効用がベース(底辺)にある。言い換えると、ユーザーのMNP利用時には既にこうしたサービス料金の値下げ要素が織り込まれている。こうした各要素を考慮した分析が求められることになる。

◆イノベーション生起におけるマクロ政策と企業レベルのミクロ面の二律背反

 木曜夕刻。日経デジタルコア1月勉強会「エリオット・マックスウェル元米国商務長官特別顧問を迎えて」に参加を予定していたのだが、別件の準備などで残念ながら欠席。

 金曜午前。当社研究事業本部の広報委員会に出席。昼には、霞が関にてFF会の定例会に参加。今回は、紺野登氏(多摩大学大学院教授、株式会社コラム代表)を講師に招いて「これからのナレッジイノベーション」 について勉強した。私が今回、紺野さんをFF会世話役会に推薦し、講師を依頼した関係もあり、当日は私が司会役を務めた。文科省のO局長(昨年度は私とともに、FF会の代表幹事)や内閣府のM政策統括官(イノベーション25特命室長、科学技術政策担当。FF会の一昨年度代表幹事)や研究機関・企業などから30名程度が参加。

 イノベーションの生起は、安倍政権の上げ潮政策において、経済成長を促す大きな要素として期待が集まる。内閣府では「イノベーション25戦略会議」を通じ、マクロ政策として取り組もうとしている。しかし、イノベーションは紺野さんが講演したように、国や社会的なフレーム環境が整備されていることが大切である一方、イノベーションそのものは企業が担う領域だ。その意味では、過分なマクロ政策が企業の新陳代謝を阻害することになれば、現下の経済成長の源泉となるTFP(全要素生産性)の成長を鈍らせかねない。この二律背反のバランスを産官学でとることが求められている。

◆1,000枚の写真・絵よりも1つのプロトタイプの方がよい

 金曜夕刻。情報通信分野のある企業から、関係市場のコンバージェンスの行方を踏まえた、シナリオ見通しとそのシナリオに基づいた戦略サービスに関する分析・評価に関する相談を受けた。昨年も同時期に同様のプロジェクトを実施していたこともあり、コンペなしでの当社への依頼だった。来週末を目途にプロポーザル(企画書)を提出し、条件などの折り合いがつけばプロジェクトをスタートさせることとなる。

 また、同社の別部門から、アジア、北米、欧州にまたがる海外ケーススタディに関する相談を受けた。私自身もこれまで、仕事で海外にはかなり行っている。現地の企業や政府・大学機関などの幹部とのビジネスミーティングでは、アポイントメントを取り付けて、訪問地リストを整え旅程(itinerary)を組むことに、かなりの手間と神経を使う。キーパーソンに会うことに大きな意味があるからだ。従って、こうした手間をかけても、現地で対面のミーティングをもつことの貴重さを強調し過ぎることはない。その場から伝わるトータルな雰囲気、さらには帰国後にも継続される人的ネットワークなど、eメールや電話だけヒアリング方法では得がたいものが、毎回多々感じられるからだ。まさに「Seeing is believing」だ。

 またできれば、その現地ミーティングにて、こちらが聴きたい・確認したいことに関しモックアップ(模型、プロトタイプ)がその場に用意できているとよい。写真や絵でもよい。米IDEO社のTom Kelly氏は、著書『発想する会社!(The Art of Innovation)』で概ね次のようなことを書いている。「1,000の言葉よりも1枚の写真・絵。1,000枚の写真・絵よりも1つのプロトタイプの方がよい」と。今回は私のスケジュールの調整がつかないだろうから、米国(シリコンバレーなど)や欧州(ドイツ・フランクフルトなど)の、私が信頼する現地ビジネスパートナーらの助力を得て、残念ながら私抜きの体制を組む必要がありそうだ。

◆ネットカフェ難民

 日曜深夜。民放テレビとしては珍しくよい番組『NNNドキュメント’07』を視た。民放テレビは視るべきものが殆どないのだが、たまたまDVDに録画していた。タイトルは「ネットカフェ難民(漂流する貧困者たち)」。制作は日本テレビ〔2007年1月28日(日)/30分枠〕。

 ≪社会のあちこちで目に付く格差の広がり。生活困窮者を支援するNPOや生活保護ケースワーカーの間で最近話題になっているのが“現住所・ネットカフェ”という若者たちだ。「完全個室・宿泊可」と書かれたネットカフェ。東京だけでなく、大阪、仙台、札幌、北九州などにも孤独な宿泊者は存在する。ネットカフェといってもリクライニングシートがついた優雅なものではない。狭い部屋で堅いイスにひと晩中座ったまま何ヶ月も眠る。バイトを転々として食いつなぎ、健康や将来の不安を抱えながら希望が見つからない若者たち。その実態を追う。

 ショッキングな内容だった。二十歳前後か少し過ぎたぐらいの男女の若者が、生活に困窮しながら一生懸命に生きている姿が描かれていた。その女性が、これ以上自分が落ちないようにと、かわいらしい手帳に前向きな言葉を毎日のようにいくつも記し、自身を奮い立たせて生きている。こうした実態を放置しておいて、日本が豊かな国とは到底言えない。個人や家庭の問題もあるだろうが、政府として放置できない根深い教育問題が横たわっている。このような番組を他の民放会社にも期待したい。


■■■『週刊雑記帳』(2007/01/15~01/21)■■■

◆Chindiaの単純労働力が代替してしまうという脅威

 月曜午後。外資系証券会社のディレクターとVP(バイスプレジデント)が来社し、ある情報通信分野における、レガシー技術を用いたビジネスモデルに関する事業計画の評価(簡易デューデリジェンス)についてのミーティングを持った。ニッチな市場の存在にはそれなりの経済合理性がある。特に同市場が寡占状況にある場合、安定的なキャッシュフローを生み出し、立派にそのビジネスが回っている実態もある。

 しかしそれは、その状況が今後も持続する場合の話である。国内外の競争状況は刻々と変わりつつある。新たな代替的な技術の出現、あるいはChindia(=中国+インド)の単純労働力が代替してしまうという脅威が、最近日増しに高まっている。そのあたりを留意する必要がある。

◆パブリックマインド、仕事への取り組み姿勢(mind set)に関する変革

 火曜午前。当社内の定例クラスターミーティングをもった。アジェンダは、当社全体および当研究事業本部におけるブランド・広報戦略の再構築に関すること。朝8時半からのミーティングであるが、メンバー全員が集まることのできる機会はそうない。各メンバーが抱えるプロジェクトへの対応や大学非常勤講師の準備などもあり、忙しいようだ。一番は、参加インセンティブの問題であろうが。

 特に本日の話題は、一見自身の直接的な利益に絡むように見えるものではない(実際はそうではないのだが)。従って、各自の関わり具合には当然温度差が出てくる。これは一般的な組織につきまとう課題であろう。自分のことで精一杯、あるいはより公益的なことへの関心が薄いことのほうが比率としては多くなるのも致し方ない。従って、この比率を変えることがいま組織には求められている。本日のアジェンダに絡む課題を根本的に打開するにも、このパブリックマインド、あるいは仕事への取り組み姿勢(mind set)に関する変革が重要となっている。そして、このmind setの在り様が、当該組織の発展を決定することになるのだ。

◆ブレインストーミングと「Mind Map」

 火曜午後。米IDEO社のブレインストーミングのやり方に、Tony Buzan氏のMind Mapによるやり方を組み込んだアプローチを、あるプロジェクトチームにて試みた。同氏は英国ロンドン生まれで、心理学、米国文学、数学を大学で学んだ後、学術ジャーナリストとして活動している。このMind Mapは英BBCなどの番組でも取り上げられ、大きな反響を呼んだものだ。

 そのアプローチにより正味1時間半ほどで、そこそこのアイデアを得た。参加メンバーも新鮮な発見があったのではないか。KJ法なども、過去試みたことがあるが、このマインドマップは結構使える。私は普段シンポジウムなどの司会役などの時に、各パネリストの意見をA4ペーパー1枚にMind Mapを使って集約し、自身の総括コメントを用意する。例えば、このような感じだ。またクライアントとのミーティング時や、海外での政府関係者や企業担当者とのミーティングでも威力を発揮する。私のクリアフォルダの中は、いつもこのメモ(Mind Map)で一杯になっている。

 Mind Mapは、個々の発想とそのまとめには、大変.強力なツールだ。Mind Mapをデジタル化して使うソフトウェアもあるが、私の場合、手書きが一番。ミーティングの種類によっては、おもむろにパソコンを取り出して電子メモを取るのは億劫だ。前述の通り、自身・他人の発言ポイントやヒアリングメモづくり、講演内容、報告書のコンテンツ、論文などを作成する際の下地メモに有効であり、1枚でほぼすべてのキーワードを網羅、一望できるからだ。これからのホワイトカラー(非単純労働者)の生産性向上は、こうしたバリューチェーン上流域での工夫や仕方(technique)にかかかっている。

◆Mind Mapと大脳の進化

 水曜午後。ある情報通信産業に属するクライアントと、昨日予行演習したブレインストーミングを実施。かなりの成果が得られたのではないか。アイデアそのものも重要であるが、そのアイデアをクライアントとともに共有すること、さらにはそのプロセスまでも共体験すること、これに大きな意味がある。

 75mm角ほどのポストイットに、ブレインストーミングで出たアイデアを書きとめ、模造紙に貼る。模造紙は持ち運びが大変なので、A3のプリンター用紙を4枚、裏をスコッチテープで止めたものを代用するのも手だ。4枚つなげたものに、Mind Map方式に従い、真ん中に大きなアジェンダ(テーマ)を記し、そこから大脳が進化した様子のごとく、外へ外へと発想の跡を記していく。これはちょうど、中心部(“恐竜の脳”に相当)から次第に外周部へ進化し、大脳皮質を形成したことで真善美の能力を獲得したプロセスに似ている。

 また、関連するもの同士をそれぞれのグループに配置したり、離れているアイデア同士を線で結ぶなどしたりして、関連性を“見える化”する。こうして1時間もすると、参加者全員が1枚のシート上に自分たちの思考のプロセスを確認できるようになる。全体を眺望でき、充実感が得られる。こうした知のリエンジニアリング(再編集)の仕方(technique)、仕掛け(system)、仕組み(Structure)が、生産性のみならず創造性発揮の鍵を握っている。

◆ウィキペディアの有用性、実用性

 水曜夕刻。ある産官の私的勉強会の定例ミーティングと新年会に出席。顧問に欠員が出たため、私は総務省のある課長のお誘いを2006年夏頃に受け、途中から参加している。毎回とても刺激的で面白く楽しみにしている。本日のテーマは、「メディアとしてのインターネット」。元広報マンでもあったという会員メンバー(新興通信会社の常務執行役員、経営戦略本部長 兼 情報システム本部長)のプレゼンテーション後に、意見交換の場をもった。

 そのなかで、「ウィキペディア(Wikipedia)」の有効性について議論が及んだ。この会員メンバー間では、概ねかなり便利なものとして利用されているようだ。しかし、この新たな媒体(インターネット上の百科事典)には、その信憑性について疑念をもつ人も少なくないようだ。私は既存のマス媒体での情報との比較について発言した。

 例えば、マス媒体(雑誌、新聞、ネット)などに原稿を寄稿する際、必ずその編集者の査読を受ける。そして、その媒体が何であれ編集のプロから、もし事実誤認があれば指摘を受けるし、場合によっては読み手に内容がよく伝わるよう修正されることもある。このプロセスとほぼ同じことが、ウィキペディアにもあるとみなせよう。

 編集者がマス媒体会社の“プロ”か、ネット空間での“アマ”かの違いはある。そして、この場合の“アマ”の書き手はボランティアであり、有象無象の集団でもある。しかし、書き手側に圧倒的な数的基盤(少なくともその潜在性)があり、コミュニティ空間に一定の「規律」があり、その結果「信頼」の醸成に成功している場合、事実誤認などは短期間でまともなものに修正され得る。この規律は同空間を野放しにしては生まれ出るものではないが、一定のコントロール下にコミュニティ空間を置くことは可能だ。実際そのようなメカニズムが働いているようだ。従って、ウィキペディアのような新たな編集方法には、かなりの程度有用性ないし実用性があるとみなせるわけだ。

◆電子入札で想うこと

 木曜午後。ある府省との間で電子入札を行った。その手続きの実際は当社の担当部署が代理を務める。昨年もこの電子入札を行ったことがあり、値下げ幅を巡り、その府省の調達部門との間でちょっとした“行き違い”を経験した。

 普段私の仕事は、民間企業向けコンサルティングが多いため、入札手続きなどの場面に直面することはほとんどない。その時は、入札価格があるラインに達しないというので、少しだけ値引いた(額は伏せる)。そのプロジェクトを実施するには、その価格でぎりぎりだったゆえのことだ。それでも駄目だと言われたのでもう少し下げた。その下げ幅に恐らく目標があり、そことは大きく乖離していたのだろう、しまいに調達部門担当者から「おちょくっているのか」といった雰囲気が当方へ伝わってきた。直接には私のアシスタントが電話口で応対し、それを私は間接的に見聞きしていただけだった。どうももっと大きな値下げ幅のことを望んでいるものだと悟った。

 私も直接面識のある、民主党参議院議員の藤末健三氏は、「随意契約」について質問などし、国の無駄遣いを正している。このページでのことはその通りであり、藤末さんの主張がおかしいと言っているのではない。ここで示したいことは、「随契」には経済的な合理性もあるということだ。当該業務の遂行において不可欠な知識に加え、それまでの経緯・プロセスを通じた「経験」を、他者が代替できない種類のものも確かに世の中には存在する。その区別なしに、頭ごなしに「入札」を適用しようとすると、入札側も調達部門側も双方にかえって非効率が生じる。この無駄も排除せねばならない。

 私の仕事はいわば、リサーチ・コンサルティングの類いのものであり、いわばサービスや知識を提供しているようなものだ。わが国の産業全体も、サービスや知識などに比重が高まっている。いま必要なのは、民間の知恵と経験も取り入れることのはずなのだから、その時の状況(circumstances)を読む配慮も今後は必要になるのではないか。幸い本日の電子入札では、私も昨年のことを学習していたので、事なきを得、あるプロジェクトを引き受けることとなった。

◆新たな経済成長を模索するには、新たなテクノクラートが求められている

 木曜夕刻。技術同友会FF会の合同部会(@経団連会館)に、FF会の世話役として参加(昨年は代表幹事、今年は監事)。30分ほど両会世話役の間で意見交換を行い、その後一般会員も加わり、懇親会となった。技術同友会の主なメンバーは、霞が関官僚(審議官、次官クラス)や大企業の経営者(会長、社長クラス)が多い。代表幹事いわく「設立当初、定年制を導入しなかったことが最大の失敗だ(笑)」とのことでもあり、確かにお年寄り(60歳~80歳台か。中には90歳台の方も)が多い。しかし、経験が豊富であり知恵もある皆さんであり、このような会員との懇談は実に意義深い。

 一方、FF会は、40歳~50歳台の会員が中心ながら「若手」になる。会員は主に、霞が関官僚でも課長、部長クラスが多い(局長、審議官、統括官クラスも少なくない)。民間からはベンチャーを含む企業(レガシー企業が多い)の部長~本部長・役員が中心である。また、私立・国立の大学教授らも会員となっている。合同部会は年に2回程度開催されている。両会は、技術(テクノロジー)を中心に行政や経済・経営のことについて話を交わせる、日本でも数少ない貴重な場となっているのではないか。本日の合同部会では、双方の定例勉強会において相互交流が一層促進されることになったので、私にとってその貴重さは一層強まった。

 中国の現政治局員は、理工系に強い清華大学出身者が多い。国の主要産業の新興策などにより経済が毎年成長している場合には、テクノクラートが要職を占めるケースは珍しくない。翻ってわが国においても、今後新たな経済成長を軌道に乗せるには、従前とは異なる「新たなテクノクラート」が求められるといえよう。いまの安倍政権下の陣容には、いわば、技術も経済も経営も分かる人材が求められているのだ。最近期待が高まっている「MTO人材」などでは決して務まらない。この人材育成とその登用こそが、国家の最大級の課題となっている。

◆日本だけでスタンダードなんてあり得ない

 金曜午前。霞が関にてある府省のワーキンググループに構成員として参加。中間報告をとりまとめる段階に差し掛かった。本日は、東大と大阪工大、および松下電器グループの構成員からのプレゼンテーションだった。各国政府機関やレガシー企業が主導する国際会議での国際標準化作業、あるいはベンチャーを含む民間企業や大学研究機関が中心となって進めるフォーラム形式による標準化、さらにはデファクト標準によるものなど「標準化」がアジェンダの1つであった。

 CEATEC JAPAN 2006のキーノートスピーチでは、国際電気通信連合(ITU)事務総局長の内海善雄氏が登壇し、「日本の情報通信産業界への期待」と題した講演を行なった。同氏の活躍などにより、約8年間それなりに日本の存在感はあった。昨年の改選により、当時ITUの要職を握っていた日本は、アフリカのマリや中国、そして、英国へ譲ることになった。日本からの代表ポストを失ったことが判明した際、政府関係者にも衝撃が走ったとのことだ。しかし、それで一喜一憂しても始まらない。内海氏の主張を、『ケータイWatch』(2006/10/03)は次のように記している:


 内海氏は、日本企業から、日本の規格を世界のスタンダードにするのはどうすればいいのか?とよく質問を受けるという。内海氏は「その考えがダメと答えている。世界の人と共にスタンダードをつくる。そういう考えが大事。自分の国のものを推し進めても世界から叩かれる。AT&Tのベル研でさえアルカテルと手を組んでいる。日本だけでスタンダードなんてあり得ない」とする一方、「我々の良いところは長期的な視点で考えられること。長期戦略を、我慢してがんばれる。また、日本ほど組織力のある国は無い。地下鉄が1分50秒おきに到着する国は日本だけ」と日本企業、日本人の長所を述べる。

 「日本だけでスタンダードなんてあり得ない」。その通りだ。これからの日本は、海外の利害関係者との間でコミュニケーションの仕方やロビー活動を学ばなくてはいけない。外務省の存在感のなさはよく指摘されるところだ。国内のレガシー企業は、所轄官庁へのロビー活動には長けているが、グローバルな潮流を事実上決定するような場・組織へのそれには、例外もあるが概して不得手だ。今後重要なことは、あらゆる産業に関わりをもち、国の富に大きな影響を及ぼしえる(温床(=soil))の位置づけとなった)、情報通信産業の国際競争力を強化することだろう。そのためには「新たな海外ロビー活動」を研究し、早急にその体制を構築することではないだろうか。

◆いつでもどこでも、ブレインストーミング

 金曜午後。霞が関を後して、ある情報通信会社の研究所へ向かった。その研究所では、新しい技術の研究開発を行っていた。その技術の商品イメージに関するデモを拝見し、その後、前述のようなブレインストーミングをMind Mapを用いて実施した。A3プリンター用紙を4つ張った紙と油性のサインペン、太めの蛍光ペンなどを持参しておけば、いつでもどこでもブレインストーミングができる。

 これまでは、PowerPointなどの資料による説明をone wayで受けるだけのことが多かった。テーブルをはさんだディスカッションよりも、その机の上で、アイデアや討議内容を参加者全員で「見える化」してしまい、「共視・共体験」することで知の編集作業は一層進む。この場でも、様々なアイデア・着想を得ることができた。その紙全体をデジカメまたはケータイで撮って、それをネット経由で送ってしまえば、すぐさま電子データを共有することもできる。


■■■『週刊雑記帳』(2007/01/08~01/14)■■■

◆謹賀新年(2007年)

 年が変わり2007年となった。年末に書いた年賀状のうち仕事関係のものには、次のようなことを記した。

 昨年の私の3大ニュース(ビジネス編)は、①竹中懇談会(通信と放送の融合)、②ソフトバンクの携帯電話市場参入、③ライブドアショックでした。番外編では、ポルトガルのファド(伝統音楽)を取り入れた音楽グループMADREDEUS。鄙びた地域からの大人の情感・雰囲気。とてもよかったです。
 みなさまはいかがでしたか。皆様のご健勝を、心からお祈り申し上げます。今年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

(注) 「MADREDEUS」:特に、このページの「Um Amor Infinito」をクリックしてみると、その情感・雰囲気が伝わってくる。遅ればせながら、素晴らしい。

◆年末年始のテレビ番組に思う

 月曜。録画番組をまとめて視た。年末年始は南欧で過したので、テレビ番組はDVDレコーダーに録画しておいた。便利な時代になった。今回のNHKの紅白歌合戦では、思いがけないスタッフ泣かせのハプニングも起きたようだが、紅白歌合戦はもはや面白くなくなったのでずっと視ていない。私のような視聴者はNHKのマーケティング戦略からは外れているのだろう。

 民放番組の大半は視るに耐えないものばかりだ。理由は2つ。①内容が面白くない、②邪魔なCMが多すぎる。うち①については、次のような番組もある。紅白歌合戦の裏番組のTBS≪格闘技史上最大の祭典 大晦日ダイナマイト!!≫(2006年12月31日放映)。真剣勝負が迫力。迫力はキラーコンテンツとなりうる、1つの大きな訴求要素だ。続けてTBS≪筋肉バトル!!スポーツマンNo.1決定戦≫(2007年元旦放映)を楽しんだ。これも面白いのだが、両番組ともともかくCMが多いのには辟易させられる。

 ②については、海外に向かう機内とトランジットの空港で読破した何冊かの書籍のうち、吉野次郎著『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』とJoseph Jaffe著『テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0 』を思い出した。いずれも簡単に読める良書だ。触発されいろいろなことが頭に浮かぶ。テレビCMのあり方が今後大きく変わっていく(変わらざるを得ない)ことは、近くどこかで記しておこう。

◆グローバルに拡がる“格差”と“競争”のジレンマ

 そのほか録画撮りしたもののうち、CMのないNHKの次の2つは興味深いものだった。

 ①≪地球特派員スペシャル「地球マップ2007“格差”と“競争”にどう立ち向かうか」≫
 地球特派員スペシャルでは、2007年の年始にグローバル化の歪みを表す“地球マップ”を手がかりに、“格差”と“競争”にどう立ち向かうか、特派員と共に議論していく。東京大学教授…姜尚中、住信基礎研究所主席研究員…伊藤洋一、ジャーナリスト…江川紹子、早稲田大学教授…榊原英資

 姜尚中(かんさんじゅん)氏を除く3氏(番組の特派員)の現地レポート(それぞれ、メキシコと米国、英国、中国)や、NHKスタジオでのコメントには、新鮮なタッチがあった。考えさせられるよい番組だった。ただ、姜尚中氏からの現地レポートの映像はまったく無かったのは不可思議に感じた。

 番組初めに確か「フランス現地の取材担当」といった紹介があったように記憶している。同国難民の受け入れとその増加による社会への影響など、視聴者としていろいろと知りたかったのだが、スタジオでの抽象的なコメントのみで1人浮いていた。どこかの週刊誌の見出しで「空疎な修辞」と、揶揄されていたことを思い出させるようなパフォーマンスに終始したことは残念だった。

◆トフラーの「人類の再定義」

 ②≪BS特集「未来への提言スペシャル」-未来学者 アルビン・トフラー-≫
 「第3の波」で情報化社会を予言し“知の巨人”として知られる未来学者アルビン・トフラーと、経済評論家の田中直毅が、2007年の世界について語り合うスペシャル対談。世界のキー・パーソンに徹底インタビューし、未来へ道しるべを提示する「未来への提言」。2007年の年始は、“知の巨人”とよばれる未来学者アルビン・トフラーと経済評論家の田中直毅のスペシャル対談を行う。『第三の波』で情報化社会の到来を予言したトフラーは、11年ぶりの新著『富の未来』で、新たな大変革が起きていると指摘。世界はそして日本はどこへ向かうのか? 2人の知的対話から探っていく。

 こちらの方は、『ときどき感想帳』でもいろいろと触れているので、ここは簡単に。トフラーの主張はその著書『富の未来』(上下)とほぼまったく同じ内容であった。特に新味なものはなかった。番組最後で、田中直毅氏は、「地球規模の統治革新 Global Governance Innovation」を提案していた。一方、トフラーは21世紀の課題として「人類の再定義 Mission of 21st Century to Re-Define Human」を掲げ、次のようなことを語った。

 「今後、生物学、遺伝子工学、ナノテクノロジーなどが目覚しい発展をとげ、人間の頭脳と力を劇的に向上させ新しい能力を手にする。次世代の人間に成るかも知れない。脳科学や生物学の発展によって新たな問題が浮上し劇的な対立が起きるであろう。私たちの倫理観が問われている。人間が互いに殺し合ってはいけない。良心を失わず、更なる知恵と互いに手を携えて行く力を獲得できるよう願っている。」 

 農業、工業の発展を分析し、第三の波としての情報産業において、知識経済社会の到来と「社会」における劇的な生産性向上の未来を鳥瞰する氏は、その先に今度は「人間」自身の能力の向上を観ているようだ。未来学者だけあって、どこまでも未来を観ようとする姿勢に感心した。78歳にして、矍鑠(かくしゃく)とした物言いは大したものだ。人生こうありたい。

◆「マーケティングと技術のインタフェイス」はいつの時代にあっても大きな課題

 火曜。新年最初の出社日だ。新年9日目ともなれば、社内では「新年明けましておめでとうございます。」という挨拶も殆どなくなっていた。ただ、電話やeメールでの社外のみなさんとの間では、新年の挨拶を交わす。オフィスに来ている年賀状のうち、頂くだけの年賀には極力返すようにしている。中にはハガキがもう手に入らず、Eメールで済ましてしまうものもある。

 水曜早朝。隔週の経営イノベーション勉強会に出席。浅川秀之研究員が、「顧客情報をイノベーションに結びつけるための組織マネジメントとは?」について担当した。特に、川上智子『顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス』(2005年8月)の紹介を基にしたものだ。Alvin Toffler流に言えば、第2の波か、第2.5の波に関するパラダイムを考察したものであり、私の普段のコンサルティング現場では、やや実効性に乏しいものではないかという印象をもった。一方、今回も研究事業本部長が参加した、同研究員による考察を基にした討議の方は、実のあるものとなった。

◆イノベーションには技法がある

 水曜午後。ある情報通信分野の仕事でミーティング。プロジェクトにも関連すると思われたので、イノベーションやブレインストーミングなどの点で、大変興味深い取り組みを行っている米IDEO(アイデオ)社のことを紹介した。同取り組み内容は、トム・ケリー著『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』に詳しい。Tom Kellyは、IDEO社創始者のDavid Kellyの弟であり、同社のジェネラルマネジャーだ。

 木曜午前。来社したある電気通信分野の社団法人幹部とミーティング。IPコミュニケーション産業のある協会の、次期会長職を依頼された。現会長は財閥系電機会社の社長でもある。私に務まるのだろうかと申し上げたが、ハードウェア企業以外のところをお探しの様子で、強いご希望でもあったため、当社内で検討し来週にでも正式にお答えるすることとした。お受けするとなれば、IPコミュニケーションは、もはやVoiceだけではなく、映像(Video)を含むData通信の世界へ大きくシフトしているので、その協会の活動の再定義も必要になってくるのではないかと思った。

◆新たな技術・マーケティング戦略と新たな投資案件

 木曜午後。情報通信分野のある企業とミーティング。主に、ある新通信技術のマーケティング戦略などについて討議した。これは無線や赤外線とは全く異なる、体の表面に発生する電界による通信技術を用いたものだ。「非消費」市場を喚起できるか。あるいは既存市場の代替を狙えるか。ここでも米IDEOの発想などが役立つ。

 ミーティング後、ある外資系証券会社から電話があった。昨年の大きな投資案件の幹事会社であり、その時の仕事で個人的にパイプができた。少し毛色は変わるが、やはり情報通信分野の投資案件であり、主にデューデリジェンスに関する内容だった。

◆新たなメディアを活用した広報戦略

 金曜午前。昨晩用意した資料を持参し、当社研究事業本部の広報委員会に出席。同委員会そのものの再定義、今後の活動方針の概観、当社HPの改革案、社内の勉強会や討議会の進め方などを説明した。3~4年ほど前には、同業他社と比べHPの出来栄えなど、そう見劣りするものではないと感じていた。しかし、最近のものと比較すると大きな課題があると強く認識させられる。

 これから抜本的な変革を遂げる必要がある。そこでそのための青写真の一端を示した。別チームが、全社の広報戦略案を起草中だが、それをさっと見る限り、従来の広報手法の域を出ていないようにも感じられる。上述のJoseph Jaffe氏の「10のツール」の一部を駆使するなど、新たなメディアを活用した方策を講ずる必要があると感じている。

◆グローバル事業展開の方策は今年の大きな課題

 金曜午後。ある府省と東大経済学部チームとのミーティング。携帯電話市場の最近動向に関する分析・評価の仕方について意見交換を行った。

 帰社後、ある情報通信分野の企業から、今後のグローバル戦略(事業展開、投資戦略など)について相談したい旨の連絡を受ける。今年は、菅(すが)総務大臣主宰のICT国際競争力懇談会において、3月末に討議結果をまとめることになっている。わが国の代表的な企業(通信ベンダー、通信サービス業など)のグローバル事業は、どこもあまりうまく行っていない。今年、グローバル事業展開の方策は、当該企業において解決すべき大きなアジェンダになっている。