オピニオン

わが国企業のESG(環境・社会・ガバナンス)側面の取り組み調査

2020年06月15日 ESGリサーチセンター


 日本総研では、ESG投資を実践する機関投資家(アセット・オーナーおよび運用機関)に対して、企業のESG情報を1999年度から提供しています。また、2003年度からは、その一部としてアンケート調査も行っています。その主軸はESG取り組みによる業績・競争力の向上に関する調査です。これはESG側面の取り組みをいかに業績・競争力につなげようとしているかという視点から、「トップメッセージ」「中期経営計画」における位置付けを評価するとともに、「社会的課題の解消と業績・競争力向上を両立させる製品・サービス」、「ステークホルダーへの配慮と業績・競争力向上を両立させる取り組み」を評価するものです。

 近年、この視点からの調査には機関投資家の関心がますます高まっています。ESG投資を実践する機関投資家は、ESG側面に優れ、かつ、その取り組みが長期的な企業業績の伸長にもつながる投資を求めています。そのためESG側面の取り組みの多寡による伝統的な調査からESG取り組みによる業績・競争力の向上に関する調査へと関心が移ってきているのです。

 このような機関投資家の関心の高まりもあり、ESGやSDGs(持続可能な開発目標)に関連した企業の活動や情報開示が増加傾向にあります。特に、これまでこれらについて考え方や活動をほとんど示してこなかった企業が新たに言及するようになってきたのが特徴的です。ただし、中には現在の取り組みの紹介程度しか示されず、その取り組みを始めた経緯や今後の取り組みの方向性、経営トップによるコミットメントなど取り組みの継続性を担保する情報が不足しているものもあります。一過性の活動、または社内の局所的な活動と誤解されないためにはこれらの情報も合わせて伝える必要があります。

 またESGやSDGsは機関投資家だけでなく、一般社会にも浸透しつつあります。学校教育でSDGsに触れる機会が設けられているだけでなく、就職活動に関するセミナーでもESGやSDGsの観点を織り込んだ企業選びがテーマになることも増えてきました。このような想定読者の拡大に伴い、従来のレポートやウェブサイトだけでなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や動画を用いた情報開示を志向する企業も出てきました。これらの媒体はレポートやウェブサイトのように情報の網羅性はないものの、興味のある情報を集中的に視聴できる点に特徴があります。具体的には膨大な情報を含むあまり、300~500ページの報告書も散見される一方、例えば動画では報告書よりもテーマを限定し、かつビジュアルを中心に分かりやすく、その重要性が強調させることが可能となります。

 さらに、SNSや動画であれば双方向のコミュニケーションが従来の媒体に比べ、容易になります。顧客や地域社会、従業員などステークホルダーの生の声をより把握するだけでなく、それをさらに改善につなげ、発信することができます。ESGが単なるコンプライアンス(法令順守)を超えてステークホルダー配慮を目指していることを想定するならば、このようなテクノロジーの活用により、さらに効率的・効果的な活動の展開に大きく寄与することが期待できます。


※以下のリンク先には、東証1部上場企業などを対象としたアンケート質問票(回答期限:2020年9月4日)が掲載されています。なお、この質問票の掲載は2020年9月末までです。

アンケート質問票はこちらからダウンロードして取得できます。