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JRI Future Signal#10 明晰夢を活用する社会

(背景)脳バンドで夢をコントロールできる?
 近年、睡眠の質を向上させるアプリやサプリメントなどが普及してきたが、オランダの会社Arenarは神経科学研究所と協力し、夢の質まで向上できるヘッドバンド「iBand+」を開発している(参考:夢も一つの仮想現実?夢をコントロールできる脳バンド)。「iBand+」は睡眠サイクル全体を通じて脳と体に関する情報を追跡および分析し、この情報に基づき、視聴覚信号を再生して明晰夢などを促すという。

 明晰夢は、夢の中で「これは夢だ」と自覚している夢のことで、自分自身で夢と気づいているので、自由自在に夢の内容を操れると言われている。明晰夢ではルールはなく、結果も決まっていない。つまり、想像できるすべてのものに意識的に夢の形を変えることができるため、あらゆるファンタジーを実現・体験できる。さらに、明晰夢では映像のみではなく、五感もリアルに感じられる。従来のデジタル映像型バーチャル体験では、ヘッドセットを使用して提供された空間内で決められたルールに従って操作し、主に視覚と聴覚のみで感じる。これに対して、明晰夢型バーチャル体験はヘッドバンドで「明晰夢」を促すことで、自由度と臨場感を兼ね備えたバーチャル体験ができるということだ。


(変化の概要)夢の中が能動的に活動する場になる
 明晰夢の活用は、スポーツのイメージトレーニングや学習効率の向上、リハビリなどの医療への応用に使える可能性も大いにあり得るが、夢をコントロールできるようになることで、睡眠は単なる「休憩」ではなく、「能動的な活動」という位置づけに変わるかもしれない。まずは、本を読んだり、ゲームをしたりするような感覚で、夢の中で自分の描くファンタジーを楽しむ人が出てくるだろう。さらに自分の中だけで完結するのではなく、夢の体験を現実世界で活用する人もいるかもしれない。例えば、現在でも自分の夢をSNSで共有する人もいる(参考:「今日見た夢」を共有するSNS)が、夢の中で小説などのアイデアを練り、それを現実世界で共有できる形にし、その価値を提供するということが考えられる。  このように、アイデアを創造する場として非常に有用であるため、小説家などクリエイティブな仕事をする人にとっては、現実世界以上に価値を創造しやすい空間となるかもしれない。たとえば、近年、自分の落書きが動き出すアプリが普及し始めているが、夢の中で見た内容(映像)をコンテンツとして仕上げる技術もできるかもしれない(参考:プロのクリエイターはいなくなり、アグリゲーターだけが残る)。


(変化後の社会)夢の中での活動を中心とした生活
 夢の中が活動の場になると、一日の時間の使い方が大きく変わるだろう。VRゲームなどの映像型バーチャル体験が趣味だった人は、明晰夢型バーチャル体験の方をより楽しむようになり、起きているときに使っていたVRゲーム時間を、明晰夢型バーチャル体験に使うようになる。このように、明晰夢を見ることを前提に生活を組み立てるようになると、日々の生活の計画を実行するために、睡眠導入剤なども必要となるだろう。


 夢の中での活動が生活の中心となれば、起きている時間を極端に減らし、睡眠にほとんどの時間を使う人も現れるだろう。まずは現実世界で必要な食事や排泄処理以外を夢の中で過ごす人が出始める。さらに、このような人が増えると、夢の中での時間を充実させるための設備等が整えられるのではないか。例えば、ずっと寝ていられる快適なベッドや、栄養補給と自動排泄を兼ね備えた娯楽のための入院セットなどが普及しているかもしれない。


 以上のシナリオは、睡眠中も脳を働かせることで睡眠の質が下がる可能性もあり、実現に向けての課題も多くあると思われる。それでも、睡眠が休憩から活動の場に変わった社会にはまだ見ぬ「夢」があるのではなかろうか。


背景となる未来の兆し
夢も一つの仮想現実?夢をコントロールできる脳バンド
明晰夢が見られるデバイスが登場した。明晰夢とは「これは夢だ」と夢の中で自覚する夢のこと。計測した脳波に応じた刺激を脳に与えることで、目を覚ますことなく夢を見ていることに気づくようになる仕組み。脳波のデータで夢のメカニズムまで解明されたら、夢ももう一つの世界として、現実世界で役に立つような社会活動(研修や勉強)を行う動きも出てくるのかもしれない。
[出所]https://finders.me/articles.php?id=2123


「今日見た夢」を共有するSNS
睡眠サポートアプリ「ソムナス」の眠りを共有するシステムが話題を集めている。SNS機能がついており、睡眠の状態や夢日記を他人とシェアすることが可能だ。承認欲求を満たすために「リア充」な面ばかりをシェアする人も多いSNS。睡眠という完全に無防備な自分をさらけ出したい人もいるということか。
[出所]https://getnavi.jp/topic/266705/


プロのクリエイターはいなくなり、アグリゲーターだけが残る
記事は自分の落書きが動き出すアプリが普及し始めている話。思いつきを手軽にそれらしいコンテンツに仕上げる技術によって、多数の素人の思いつきが少数のプロのアイデアを凌駕する。プロの役割は素人の思いつきのアグリゲーションと昔の名前による目利きしかないか。
[出所]https://techable.jp/archives/142846?fbclid=IwAR17ABxWa11GA-q9K9WLxq7JrkgKkgyn_sVwJA-QW02BH-krZMD1814ZOrY



関連リンク:
◆スペシャルウェブサイト:デジタル社会の未来シナリオ

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