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【その1】テレビの未来を見据え「ながら。」 ~真説・メディアの同時利用論~ 9. インターネット広告をいかに見せるか、の工夫は続く

2009年05月22日 井上忠靖氏 (電通総研 コミュニケーション・ラボ チーフ・リサーチャー)、倉沢鉄也、、叶内朋則、紅瀬雄太


9. インターネット広告をいかに見せるか、の工夫は続く

(倉沢)テレビも含めて広告というのは、せこい手を使ってでもユーザーに届くための努力をしているわけですよね。「大事なところはCMのあとで」というのは遠い昔にはじまり、DVRの「30秒スキップボタン」の利用が国民的に普及するならば、30秒で割り切れないCM枠を作っていけばいいわけですし。
その定型枠の概念が広告表現を高め、さらに広告取引の大規模化をもたらしてきたとも言えるんですが、その広告定型枠を壊す方向に挑戦しつつあるのが、インターネット広告におけるバナーの発展でしょうか。「せこい努力をお前もはじめたか」的な思いをもって、カーソルが通ると数倍に広がるような、邪魔なバナー広告を避けています。広告規制のずっと手前の、品の悪い広告は好感度を落とすよ、テレビCMも十分きわどいけどね、という意味で、インターネット広告なりの作法というかマナーができあがってもいいころではないかと思っていますが、どうでしょうか。

(井上)論点が2つあります。
まず1つは、インターネット広告のつくり方は、今も試行錯誤が続いています。おそらく動画的な広告と、バナーでテキストを読ませる広告とは、棲み分けがなされると思います。ただし、2005年くらいにようやくブロードバンドの回線速度を国民的に享受できるようになってきて、動画広告をユーザーが許容してくれるようになり、ようやくヤフーを筆頭に動画広告の導入が本格的に始まった、というところから3年そこらしかたっていなくて、広告表現としてのぎりぎりの線をきっちり見出すにはもう少し時間が必要だということです。「おいバナー、邪魔すんなよ。でも画面の一部でワサワサ広告が動いているぐらいのところは許すか」というユーザーを期待している方向の模索が続いています。
PCの画面ジャック的な表現というのは、電車ジャックと同じで、広告主側、代理店側としても、やってみたいところではありますね。難しい問題も多く含んではいますが。

(倉沢)好感度があれば広告主はいいのかというのは重要な議論としてありますが、ここでは省略するとして、媒体としての行儀作法は多分あるでしょうね。それは紙の媒体にはかつて「観音開き」程度しかなかったので、ユーザーにとってどれぐらいまで広告が出張っていいのかという問題があると思います。バナーについてもその延長上の議論であろうと思っています。

(井上)紙媒体は、画面の変更やリンクボタン機能などのフレキシビリティーが、媒体の性質上当然なかったので、雑誌の表紙裏は広告媒体としての価値が高いですよといった話で取引してきた経緯があります。技術的な特性として、ユーザーも表現技術も、進化しやすい土壌がインターネットにはありますね。

(倉沢)紙媒体ではできなかったお行儀の悪さを、テレビのような不躾さを、インターネットでこそ自由にやるんだ、というところですかね。

(井上)もう1つの論点として、テレビCMの方の行儀作法はどうなるのかという話があります。これはこれで、クリエーターを中心にいろいろな可能性を模索しようとしています。たとえば30分の間に20%なりの広告枠が決まっていて、一定の時間内で見せる広告に対して今のフォーマットの映像プログラムでいいのか、という検討は進んでいます。
CMを作る側の立場からすれば、もうちょっと柔軟なやり方があっていいのではないか、5秒CMと25秒CMを組み合わせたら、あるいはぶち抜きで2分だとどうなるか、といった、見せたい内容によって異なる尺のCMがあっていいと考えています。ただしテレビ局側の事情から、柔軟性のあるフォーマットの管理がかなり難しいので、基本的に嫌がられています。
そういう実験的なことが許されるのは1社提供の番組で、かつ広告主が乗り気で、代理店の側もメリットを感じた場合に、出現することになるでしょう。テレビ広告全体を変えていくにはまだ時間がかかると思います。

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