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【IT動向リサーチ】
セキュリティトークンの概説と動向

2021年06月01日 先端技術ラボ 市原紘平


本レポートでは、日本におけるセキュリティトークンの実態と金融機関等の各社の取り組みについて解説する。

日本におけるセキュリティトークン(ST: Security Token)という用語が指す内容は、電子的な「トークン」(証票)に、既存の法律(金融商品取引法等)の枠組み内の何らかの証券等の権利を表示したものである。本分野におけるトークンの実装にあたっては一般的にブロックチェーン技術が使用される。ブロックチェーン分野でいうトークンとは、ブロックチェーンネットワーク上のアカウントの間で安全に「移転」を行うことができる仕組みをプログラムで実現したものである。ここでいうトークンの「移転」とは何らかのデータそのものが移動するのではなく、次の「移転」を実行できる権限が切り替わることを指す。

セキュリティトークンという言葉は厳密に定義されている言葉ではなく、その意味するところは場合によって範囲が様々であるが、法令上の用語としては、「金融商品取引業等に関する内閣府令」(金商業府令)で規定された「電子記録移転有価証券表示権利等」が主に対応する。一般にトークンを移転しただけでは、証券等に表示される権利の移転が法的に成立するわけではない。法的に権利の移転が成立するためには、元の証券等の法律(根拠法)により規定されている権利の移転が成立するための要件(対抗要件)を満たさなければならない。そのため情報処理システムの設計としてはトークンの移転に連動して、確実に権利移転の要件が満たされるシステム構成とすることが重要となる。また、ブロックチェーンという、過去の特定の情報のみを消去する機能を持たず、設計によっては複数の参加企業の間で同じ情報が共有される技術を用いることを考えた場合には、投資家の個人情報の管理等、プライバシーへの配慮や情報セキュリティに関する論点も特に重要になってくる。

日本においては、証券保管振替制度の下、証券保管振替機構(以降、「ほふり」と記載)の情報処理システムで株券、社債等の有価証券が集中保管され、各投資家の保有する有価証券は証券会社の口座で管理されている。セキュリティトークンは、こうした既存の仕組みとは別に構築されたシステムで、発行・取引・管理される証券と捉えることもできる。そのためセキュリティトークンという言葉とほぼ同義に「デジタル証券」という言葉も使用されている。このため、セキュリティトークン・デジタル証券のビジネス上のポイントは、既存のほふりの仕組みに乗っていない有価証券等の投資商品を取り扱うことではないかと考えられる。金融機関各社は、従前なかったような「特典」(例えば暗号資産やポイント等)を付与する社債のセキュリティトークンを発行する実証実験等を進めている。また、一般の個人投資家を対象とした実案件も出始めている状況にある。

セキュリティトークン・デジタル証券の普及により、企業が新たに柔軟な方法で資金調達を行えるようになったり、個人がそうした資金調達への参加を通して企業を応援できるようになることが期待されている。普及への課題とされていたデジタル証券の二次流通市場の設立を表明する企業が日本でも登場するなど、普及への道が徐々に進んでいる。本格的に普及していくためには、投資家(特に個人)にとって魅力的な商品が開発されることや、そうした新しい金融商品の販売を通して金融機関の情報システムや業務、各種ルール等の標準化や洗練が進むことが必要である。ターゲットとする投資家層を見極め、ターゲットに刺さる特典を持った商品を開発することや、デジタル証券の取引に付随する周辺システムの対応を粛々と進めることが重要である。

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