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日本における廃プラスチックに関わる現況と新しいビジネスの可能性

2020年08月04日 通信メディア・ハイテク戦略グループ 藤居枝里


要旨
●近年、プラスチック類による環境問題が注目され、事業者はプラスチック利用削減・代替製品の使用・廃プラスチックのリサイクル対応が迫られている。
●諸外国による廃プラスチック輸入停止を受けて、国内の廃プラスチックリサイクル対応が急務となっている。そのため日本国内で、廃プラスチックの回収効率化、分離技術開発や再利用先の拡大など、廃プラスチックリサイクル技術開発の進展やビジネスとしての市場拡大の兆しがみられている。


はじめに
 国連気候変動サミットや世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)といった諸外国の代表者が集まる場で、気候変動・環境汚染対策に関する議論が盛んに行われている。
 地球規模の気候変動・環境汚染には様々な要因がある中で、プラスチック製品への風当たりは強い。特にプラスチックが注目を集める理由として、身の回りで多く使われている他、使用後の「廃プラスチック」が海洋汚染の一因とみなされていることが大きい。
 これらプラスチック製品への批判を受けて、諸外国ではプラスチックリサイクル対応を拡大するともに、代替製品の開発や非利用化を進めている。廃プラスチックのリサイクル設備や発電設備への投資をはじめ、紙を原料とした容器製品の開発や、レジ袋の有料化(米・ハワイ州他)、繰り返し利用可能な食料容器の提供(米Loop社他)など環境に配慮したビジネスが勃興している。
 日本国内においては、平成初期から循環型社会形成の推進に関する法体系が整備されたこともあり、プラスチックリサイクルについては先進国とも言える取り組みを日本は行ってきた。さらに諸外国の決定を受けて、プラスチック利用削減の取り組みの一環として、レジ袋有料化が2020年7月から開始されている。
 ただし近年、一部の廃プラスチックが中国や東南アジアに輸出されていたことが問題化し、廃プラスチックの輸出が停止される事態となった。輸出停止を受けて、国内には廃プラスチックが滞留しているとみられ、廃プラスチックの処理は急務となっている。
 本稿では日本国内における廃プラスチックとそのリサイクルの現状と課題をまとめるとともに、廃プラスチック関連ビジネスの可能性について述べる。

国内の廃プラスチックの現状
 国内の廃プラスチックの排出量は一般ごみ・産業ごみを含め、約900万トンと言われている。廃プラスチックは容器包装リサイクル法などの法律に基づいて家庭や事業所から回収後、指定の事業者によりリサイクル処理が行われている。
 廃プラスチックの内容物は、一般ごみの廃プラスチックの約8割は小売店などで使われる包装・容器等である。一方で産業系の廃プラスチックは、電気電子機器に使用されているプラスチックが約4割、包装・容器等が約2割となっている。
 回収された廃プラスチックは約6割がサーマルリサイクル、約2割がマテリアルリサイクル、約0.5割がケミカルリサイクルとしてそれぞれ処理が行われている。特にサーマルリサイクルの寄与度は大きく、国内でのプラスチックリサイクル率向上の一端を担っている。
 サーマルリサイクルは主に2種類の利用先に分けられる。1つ目は固形燃料発電所のための固形燃料化やセメントの原料として加工され、原料として燃やされる。2つ目は石油系原料の燃料として発電所やごみ焼却場で焼却されている。
 廃プラスチックのマテリアルリサイクルは国内で約4割が再利用・加工がされているものの、残りは分別・圧縮・形成後などの処理を行った後、輸出による処分を行っている。輸出されている廃プラスチックは必ずしも、リサイクルできるような良好な状態とは言えず、輸出先でごみとして山積している。これらの日本などから輸出されたごみ同然の廃プラスチックが、中国・東南アジアで2017年頃に社会問題となったことから、各国は廃プラスチックの受け入れを取りやめた。輸出が停止したことを受けて、日本国内にはリサイクルや処理しきれない廃プラスチックが滞留しているとみられている。

国内の廃プラスチック処理の課題とビジネス可能性
 廃プラスチックをリサイクルするための大きな課題の1つとして、回収時における素材の混在が挙げられる。廃プラスチックがポリスチレン・塩化ビニル等、いくつかの素材が混じっている場合、リサイクルの実施はコスト・技術の面で難易度の高い処理となる。
 プラスチック製品の代表格ではあるペットボトルは分別意識の高まりや分別の容易さが相まって、ペットボトル単体で回収され、高いリサイクル率を実現している。一方で、ペットボトル以外のプラスチック製品において複合素材や高度なプラスチック加工がされている場合、素材を分離することができない。リサイクル率向上のため廃プラスチックの分離には高度な処理技術を求められるが、国内では回収・分離の収支が見合わず、輸出や焼却処分せざるをえない状況となっていた。
 このような背景に加えて近年の廃プラスチック輸出停止を受け、国内では廃プラスチックリサイクル率向上のための取り組みを開始している。
 プラスチック関連事業者は、廃プラスチックを上手く収集し、再利用するための取り組みを行ってきている。プラスチックトレー製造のエフピコは独自の自社物流ネットワーク内で使用済みトレーを回収できるルートを構築し、素材の混在を極力減らした状態でトレーの収集に成功している。
 化学メーカーの東洋インキグループは、プラスチック包装紙の複層構造を分離し、それぞれの素材に還元する技術の開発に成功している。このようなプラスチック製品の素材分離に関する技術開発はリサイクルを進めるうえで基盤となる技術のため、各国でさらなる研究開発が進むと予測されている。
 また廃プラスチックのさらなる利用先としてRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)がある。RPFは廃プラスチックと紙などを押し固めて作られており高熱量を持つため、石炭代替の廉価燃料として注目されている。廃棄物リサイクル事業者の日本ウエストは2019年に製紙事業者向けにRPF生産設備を竣工させた。また市川環境エンジニアリングは国内で得たごみ・廃棄物処理ノウハウを生かして、ベトナムでのRPF製造販売事業を開始している。
 環境省は2019年におけるプラスチック資源環境戦略において、プラスチックリサイクルのソフト・ハードの両面のインフラを整備し、サプライチェーンを構築すると発表している。具体的な支援例として、リサイクル設備の高度化や新技術実証事業に対して補助金の支給を行うとしている。

おわりに
 地球環境汚染の原因として目の敵にされがちなプラスチックではあるものの、元来は石油由来の貴重な資源である。プラスチックの安易な投棄処分を行わずリサイクルによる資源循環が進めば、持続可能な社会の一端を担う素材であると考えられる。
 今回の廃プラスチック類輸入停止については、廃プラスチックを利用した新たなビジネスの好機とみることもできる。今後は、廃プラスチックの回収・分離が進むとともに、RPFといった廃プラスチックの再利用先が拡大することで廃プラスチックリサイクルビジネスのすそ野が広がる可能性があると考えられる。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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