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日本総研ニュースレター 2020年6月号

企業のテレワーク力の強化にはビジネスプロセスのデジタル化が必須

2020年06月01日 橋本隆信


緊急避難的なテレワークで見えたデジタル化の本気度
 多くの企業では、新型コロナウイルス感染症対策として、在宅勤務によるテレワークに取り組むようになった。しかし、「テレワーク中」にもかかわらず結局オフィスへの出勤を余儀なくされるなど、既に様々なひずみが各社で明らかになっている。また、顧客往訪を中心とした営業活動ができず、事業そのものが停止しているケースも少なくない。例えば対外的な業務では、次のような問題がよく見られる。
・営業は「対面」のノウハウしかない
・見積書、契約書から請求書まで全て紙で押印。また社内業務では、次のような問題がよく見られる。
・社内の正式業務資料の大半が紙であるため、何をするにもファイリングした文書の確認が必要
・押印決裁が多く、押印のための出社が発生
・機密性の高い業務情報は、テレワークの対象外
 これまで多くの企業では、テレワークをオフィスワークの一部機能の代替物として扱い、「必要な場合」には出社するなどの前提で仕組みを構築してきた。そのため、ほぼ全従業員がテレワークを行うという想定外の状況になったことで、一気に様々な問題が浮かび上がってきたのである。つまり、各社のテレワークの成否は、ビジネスプロセス全体をどの程度デジタル化させてきたのかを端的に示しているといえる。

全社的なテレワークが実施可能な企業となるには
 全社的なテレワークの実現には、ビジネスプロセス全般のデジタル化が欠かせない。
 対外的な業務では、例えば営業活動でのインサイドセールスへの大胆なシフトを検討する。自社のウェブサイトや他の営業チャネル等からの問い合わせにはインサイドセールスがアポ取りまで行い、可能性の高い顧客を往訪するフィールドセールス(営業マン)に引き継ぐといった方法である。
 新規営業では、これまでもインサイドセールスの強みが比較的発揮されてきたが、 withコロナ、ポストコロナ時代では既存顧客の深耕やルート営業でも、ウェブ会議ツールやウェブコンテンツ等が、効率的で効果的な手段となり得る。ただし、従来のようにフィールドセールスとインサイドセールスを明確に分けるのではなく、両者を機動的に融合させながら生産性を高める必要がある。
 取引先との契約手続きについては、プロセス自体をデジタル化させる動きが出てきた。例えば、インターネット大手のヤフーは、法的要件や取引先の事情で対応できない場合を除き、取引先との契約の捺印や署名を電子サインに切り替えると発表した。2021年3月末までに民間取引先との契約において「100%電子サイン化」を目指すとしている。
 社内業務では、ペーパーレスを徹底することになる。
 押印をはじめ、ファイリングやキャビネや倉庫への保存など、紙情報の保有は、テレワークのみならず、企業の生産性向上を大きく阻害する。紙の書類をスキャンして電子化するほか、決裁プロセスを単純化するなど、手続き自体を電子化しやすいものに改めることが欠かせない。当社がペーパーレス化を支援した全国で機器メンテナンスを行う企業では、印刷や保管等に関する直接的な費用削減以外にも、事務処理量の10%分の削減を容易に実現している。
 電子帳簿保存法の継続的な改正など、これらを支援する法令整備も進みつつある。また、消費税の仕入税額控除の方式として、2023年から導入が予定されているインボイス方式(適格請求書等保存方式)への対応によって、企業間のやり取りの電子化が一層進展することが期待される。総務省も、電子データを発行した組織の正当性を確認できるeシール(Electronic seal: 企業の角印の電子版に相当)のサービスに関する制度の整備を目指しており、取引証票類のデジタル化に弾みがつくと考えられる。

さらなるデジタル化は必須
 半ば強制的に始まったテレワークだが、テレワーク自体の利便性やオフィス賃料の削減可能性を強く認識される機会ともなった。今後もテレワークが一層推進されていくことは間違いない。緊急措置として対応してきた業務やICT環境などを改めて見直し、社内業務の整備を進めていくと共に、ビジネスプロセス全般のデジタル化推進や、ビジネスそのもののデジタルトランスフォーメーション(DX)への一層の取り組みが必要である。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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