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「プレミアムフライデー」の効果を考える

2017年06月27日 小島明子


 「働き方改革」を進める上で、長時間労働の削減は多くの企業が抱える重要な課題の1つです。その1つの解消策として、官民連携で行われているのが「プレミアムフライデー」です。平成29年2月24日から、毎月、月末の金曜日を「プレミアムフライデー」と呼び、その日は、仕事を早めに切り上げて豊かな週末を過ごすことを提案しています。
 政府は、「プレミアムフライデー」の導入を通じて、(1) 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる、(2) 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる、(3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる、という3つの効果を謳っています。

 官民連携で設立された「プレミアムフライデー推進協議会」の事務局が発行している調査結果(第一回から第三回)によれば、早期退社に取り組む企業の数は徐々に増え、第一回の「プレミアムフライデー」に比べると3倍以上に拡大をしていることが明らかになっています。規模別に見ると、100人未満の企業が実施企業全体の約半数を占めていることが特徴的です。大企業のみならず、中小企業にまで、取り組みが広まっていることは非常に評価ができる点だといえます。

 では、実際にどれくらいの人が「プレミアムフライデー」に特別な消費を行ったのでしょうか。上記の調査結果によれば、第一回の「プレミアムフライデー」では、過ごし方として、最も多かったのが、各世代共通で、「家でゆっくり過ごした」(45.8%)、つづいて「外食・お酒を飲みに行った」(36.6%)で、国内旅行に出かけた人は1割にも満たない結果となりました。しかし、第三回の「プレミアムフライデー」では、「外食・お酒を飲みに行った」(50.0%)、つづいて「家でゆっくり過ごした」(32.5%)、国内旅行(10.5%)であり、第一回に比べると、「家でゆっくり過ごした」人が約1割程度減少し、国内旅行に出かける人が微増しています。このことから、「プレミアムフライデー」は、回数を重ねることで、消費喚起の効果が徐々に出てきているような印象を受けます。

 一方、従業員の早帰りを促すために、本当に効果があるのか、という疑問も残ります。
株式会社インテージの「プレミアムフライデー事後調査」(2017年2月調査)によれば、職場で「プレミアムフライデー」が実施・奨励された人のうち、「プレミアムフライデー」を利用して 「早く帰るつもりがあった」人は47.6%、「早く帰るつもりがなかった」人は52.4%で、職場でプレミアムフライデーが実施・奨励されていても早く帰るつもりがなかった人の方がやや多いという結果が得られています。「早く帰るつもりがなく、早く帰らなかった」と回答した人の理由の多くは、「仕事が終わらなかったから」という回答で、約6割を占めました。つづいて「プレミアムフライデーを特に意識していなかったから」が約3割でした。この結果からは、「プレミアムフライデー」を実施する企業に勤めていても、業務量の多さを理由に、早帰りをしなかった人たちが一定割合存在していたことがうかがえます。このことは、企業側から従業員に「プレミアムフライデー」の呼びかけを行うだけでは、全ての従業員の早帰りが実現するわけではないという実態が浮かび上がります。

 前述のとおり、「プレミアムフライデー」を通じて、消費喚起には少しずつ効果が出てきているものの、従業員の働き方を劇的に変えるまでには至っていないと、現段階では総括できるでしょう「プレミアムフライデー」を契機に、企業の経営層だけではなく、働く人自身が、自分たちの働き方に疑問を持ち、働き方改革に真剣に取り組むようになるには、もう少し時間がかかるのでしょうが、「プレミアムフライデー」が意味のある取り組みとなることを待望したいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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