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地球温暖化の国際的な議論の行方

2017年01月24日 井熊均


 1月20日、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任しました。選挙中、選挙後の過激な発言に世界中が揺れ、トランプ氏の就任を今年最大級の懸念要素とする人も少なくありません。しかし、発言に惑わされ、不都合なことをトランプ氏大統領就任のせいにしていると、本質的な問題から目をそらしてしまう怖れがあります。

 前回のメルマガでは、グローバル化と格差の問題を指摘しました。日常の業務活動を見ても、グローバル化に格差を助長する要素があることは否定できません。トランプ氏をポピュリストと指摘する声もありますが、本来問題なのはポピュリスト的な振る舞いが支持される社会の状況にあるはずです。

 筆者が関わりの深いエネルギー・環境分野では、トランプ氏のパリ協定離脱発言が懸念されています。しかし、オバマ前大統領はパリ協定批准に当たり、議会と十分な議論を行っているとは思えません。誰が大統領になろうと、アメリカ国内は国民に負担を課すような温室効果ガス削減政策を合意するのが容易な状況ではありません。冷静に見れば、アメリカのパリ協定の批准にはオバマ政権のレガシー政策としての側面と中国との対抗・協調政策という側面があるように思えます。

 パリ協定に関してアメリカが確実に進めるのは、コストが下がった風力発電の導入とシェールガスによる石炭火力から天然ガス火力への転換でしょう。そこには、国民に負担を強いてでも再エネの大量導入にひた走るドイツとの大きな違いがあります。一方、毎月のように中国に通っている立場から見ると、中国の環境政策には力が入っているように見えます。中央政府、地方政府、国営企業、民間企業、等、誰に聞いてもぶれがありません。地球温暖化の国際的な議論の枠組みは大きく動こうとしています。

 トランプ氏のパフォーマンスのベールを透かして、世界に起こっていることの底流を見定めたいものです。


※メッセージは、執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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