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【次世代交通】
第5回 超小型モビリティは成長市場になるか(その1)

2016年03月08日 程塚正史


 クルマに関連する近年の変化として、運転自動化やICT連携のほかに、ハードウェア自体にも動きが出ている。地域内の移動に必要最低限な機能のみを備えた、超小型モビリティ(以下、「超モビ」と呼ぶ)である。
 超モビとは、軽自動車よりも小さく原動機付自転車よりも大きい、1~2人乗りの四輪車を指す。軽量であるため、燃費性能もいい。コンセプト自体は以前からあり、都市部での大型車両への規制が厳しい欧州では一部導入が進んでいる。日本においても2012年以来、国土交通省が普及に向けて各地で実証事業を主導している。
 日本における導入の背景には、労働人口の減少や高齢化といったマクロ環境の変化がある。介護や宅配のような地域内ビジネスの規模が大きくなり、一里(4キロメートル)圏内の移動需要が増えている。また、従来から、毎日都心に通勤するような何割かの人を除けば、普段の移動先は地域内で完結するという人は実は多い。その移動先は、各地のパーソントリップ調査から推定すると、一里圏内のスーパーなどの小売店や病院、銀行などが大部分であると考えられる。スーパーや病院に行くのに、一般の四輪車両を使うのは非効率だ。だが自転車をこいで行こうとすれば、雨のときは困るし、移動範囲も限られてしまう。そこで超モビが便利だろうというわけである。

 当社も関わった超モビ普及実証を含めて、実際に乗ってみたユーザーにインタビューすると、たしかに超モビの潜在ニーズは大きい。軽自動車に比べても低コストであるため、世帯の複数台所有に適している。自動車を一家で2台はもちろん、一人1台保有するような地域においては、特に受け入れ可能性が高いように思われる。また小型であるため、車両の保管コストもあまりかからない。一般車両の駐車スペースに超モビなら2台停められる。
 さらに、感覚的に「かわいらしい」車体であるため、女性の受けがいい。従来の車両が走りのよさや見栄えのかっこよさを売りにした、言わば「男性的」であったのに対して、愛着の湧く超モビの外観は新しい魅力と言えるだろう。ラッピングや組み立て部品の交換も容易であるため、自分好みにカスタマイズすることにも適している。たとえば車両の色は暖色系にしたいとか、好きなキャラクターの絵を入れたいとか、てっぺんに「ツノ」を付けたいとか、そんな声が聞かれる。

 しかしこのような潜在ニーズがある一方で、普及に向けては大きなハードルがある。将来的には超モビの個人所有も当然想定されるものの、現状では、超モビ関連の制度設計を検討する国交省等の事業では超モビを用いた「カーシェア」の形態をとっている。たとえば横浜市やさいたま市のような大都市部や、愛知県安城市や岡山県津山市(※津山市は国交省事業ではないが、トヨタ車体「COMS」が26台導入されている)のような地方都市、さらに大分県姫島村や奈良県明日香村のような観光地でも同様だ。
 これらの取り組みは、地域内シェアによって超モビのような車両の実際の活用時の課題を洗い出し、その後の普及期における制度を検討するためという位置づけだろう。だがこれまでの事例のうち、「カーシェア事業」として十分な事業性を確保できている事例は少ない。超モビの地域内シェアが進まなければ、超モビ自体の成長ポテンシャルはありながら、その後の普及に影響が出ると心配される。
 超モビ普及には、まず地域内でのシェアモデルの確立が望まれる。そこで次稿では、各地で試行錯誤が続く超モビの地域内カーシェアが、持続可能な事業となるためのポイントについて考えてみたい。

<バックナンバー>

「第1回 ライドシェアの解禁はなるか?(その1)」
「第2回 ライドシェアの解禁はなるか?(その2)」
「第3回 わが国のコネクティッドカー推進にむけた1つの手法」
「第4回 ワンウェイ方式のカーシェアリングは、なぜ日本で普及していないのか 」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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