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日本総研ニュースレター 2013年5月号

中国のシェールガス開発と日本企業のビジネスチャンス

2013年05月01日 王婷


米国発シェールガス革命が変えるエネルギー需給バランス
 「シェールガス革命」が起きた米国では、既に商業ベースの開発が進められている。英国の石油会社のBPが2013年1月に発表した研究報告書では、米国は早ければ2020年にエネルギーの自給自足に達し、石油の純輸出国になると予測されている。シェールガス革命は、これまでの世界のエネルギー需給バランスを変えていくはずだ。

中国におけるシェールガス開発の必要性
 その流れに遅れまいと、中国でも数年前からシェールガスについて関連技術や埋蔵状況の研究を開始している。中国にとっては、①石炭中心のエネルギー構造の改善 ②急増するエネルギー需要を見越した対外依存度の減少 ③2020年までにCO2を2010年対比40~45%削減 ④エネルギー安全保障、という主に4つの目標を実現するために、シェールガスを含めた天然ガスの確保と利用が急務だからだ。
 中国政府では、全体エネルギー消費量に占める天然ガスの割合を2010年の約4%から2015年までに8.3%に引き上げる目標を定めるなど、天然ガス利用を強く推進する戦略を打ち出している。ただし、この目標を国内産ガスの増産をしないままで達成しようとすると、天然ガスの輸入依存度が2015年に30%、2020年に50%以上に跳ね上がり、エネルギー安全保障上の問題が大きい。つまり、ガス増産の柱の一つであるシェールガス開発は、既に今後のエネルギー政策に組み込まれているのだ。シェールガスの開発が成功すれば、2030年には中国も天然ガスの自給自足を実現する可能性が高い。

進むシェールガスの開発
 中国のシェールガスの技術的回収可能量は、米国を上回るといわれている。2012年3月発展改革委員会が発表した「シェールガス発展計画(2012-2015)」では、2015年の生産量を65億㎥とする目標が掲げられた。
 シェールガス開発の主要な企業は、技術と資金力を有する中国石油、中国石油化工、中国海洋石油などの国有企業である。これらの企業では先端技術を取得するため、海外のプロジェクトに積極的に参画するとともに、国内でもモデルプロジェクトなどに取り組んでいる。
 例えば、国営大手の中国石油は、四川省長寧~威遠と雲南省昭通地区において、国家級シェールガス開発モデルプロジェクトを2008年に立ち上げた。四川省の長寧~威遠地区のプロジェクトでは、既に2012年3月段階で580万㎥を生産し、一部は天然ガスパイプラインを通じた販売も行っている。
 2011年6月および2012年9月には、国土資源部の主導でシェールガス探鉱権の入札を行った。2011年6月の第1回目の入札では、中国石油など石油や石炭専門の6企業が参加し、中国石油化工と河南石炭ガスの連合体が落札した。2012年9月に行った第2回の入札では、百数社の参加のうち、石油と石炭関連企業以外に、発電会社、エネルギー供給会社、投資会社など異業種の参画が目立っていた。特に、中国華電集団は、天然ガス発電、分散電源発電国内シェアナンバーワン企業として、資源の確保と新しい産業チェーンの構築に意気込みを見せた。

中国が直面する課題と日本のビジネスチャンス
 ただし、「技術」「コスト」「環境破壊への懸念」という3つの課題を解決できる見込みはまだ立っていない。特に環境保護団体が懸念する、環境破壊の問題は、まだ米国でさえ解決できていない。中国政府では、開発企業に0.4元/㎥の補助金を付けたり、技術開発や外資からの技術の取り込みを進めたりするなど、コストや技術への対策に躍起となっている。
 関連ビジネスはまだ発展途上だ。上流の探鉱や採掘は既に米国企業に占められているが、シェールガスの液化やガスを運搬するタンクや船の製造など、ガスの輸送と加工利用では、日本企業が強みを発揮できる余地が大きく残されている。また、天然ガスから化学製品を精製する技術についても、今後大きな需要を生む可能性がある。日本企業の先端技術の新たな活用先として、中国シェールガス市場への期待は大きい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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