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異次元金融緩和とエネルギーREIT

2013年05月14日 瀧口信一郎


日本経済の沈滞したムードを大きく変えるものの1つがインフラファンドだと思う。インフラファンドが全てではないが、インフラへの資金の流れを変えることで、経済が大きく動く。経済は大規模投資でしか動かせない側面がある。かつては、ここに公的資金を投入してきたが、今後は民間の資金を活用し、インフラの売却益で資金を回収したり、新たなインフラ建設資金に充てたりすることが主流になる。この民間資金の様々な基金としてのフレームワークが言ってみればインフラファンドになる。不動産領域では、REIT(上場不動産投資信託)のような具体的な枠組みが2000年代前半に確立した。その他、空港、道路、送電線、パイプライン、発電施設、水道管、など様々なインフラ分野で応用が可能だ。

インフラファンドに適したセクターの1つがエネルギーだ。原子力発電などの中央集中型の電力システムからコジェネ・再生可能エネルギーなどの分散エネルギーシステムに重心が移動する中で、風力発電などの再生可能エネルギーとそれを受け入れるための送電網、コジェネを受け入れ易くする配電網、熱配管、ガス導管への投資が必要となる。参考までに電力会社10社の2011年度時点の発電・送電・配電などの電力事業資産は24兆円という規模であり、電力事業だけ見ても大きなインフラを抱えている。これまでは、電力債という公的な色彩を帯びた資金を活用してきたが、インフラファンドの活用も考えるべきである。

ただし、採算性や必要資金の莫大さゆえに躊躇しているのがこれまでの状況だ。固定価格買取制度の導入で高い収益性が見込まれるメガソーラーなどの再生可能エネルギーに資金の流れができてきたレベルだ。

異次元の金融緩和はその雰囲気を変えようとしているが、公的な財政資金を増やすわけではない。大手銀行、地方銀行、信用金庫など金融機関を起点とした民間資金をインフラの受皿とする。既存の送電線を切り離して、エネルギーインフラファンドで持てばよい。新たな送電線や再生可能エネルギーの建設にもつながる。いわばエネルギー版のREITを作るのだ。異次元金融緩和をエネルギーインフラにどう活用しようか、官民が動き出している。新しいと動きを作り出していく時だ。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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