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Business & Economic Review 2003年05月号

【REPORT】
米銀のクレジット・カード戦略-近年の動向と成果

2003年04月25日 調査部 経済研究センター 岩崎薫里


要約

  1. 米銀のクレジット・カード業務はこれまで順調に収益を拡大してきたうえ、収益率も銀行業務全般に比べて高く、総じて高成長分野であり続けた。大手銀行の2002年決算をみても、一部の例外を除けば増益基調が維持された。これは、正味受取利息の増加および高レベルの利息外収入が、貸し倒れ引当金繰入額の増加を補って余りあったことによる。こうした収入面からの好調が実現した要因としては、金融緩和効果や景気低迷下での家計部門の堅調などマクロ経済環境面でのサポートに加えて、以下の2点が指摘できる。

  2. 第1に、クレジット・カード市場という成熟市場にあって、大手銀行が中小銀行を中心とする他の発行会社のシェアを奪っていったことである。他行会員の引き抜き、自行会員の囲い込み、買収戦略などが各銀行の間で活発に繰り広げられた。その結果、中小銀行が淘汰され、クレジット・カード業界の集約化が急速に進んだ。

  3. 第2に、景気悪化に伴い、延滞手数料をはじめとするペナルティー手数料・金利が増加したと考えられることである。近年、米銀は様々な手数料を徴収するようになったうえ、徴収額を次第に引き上げていった。これは、年会費など従来からの収入が頭打ちとなるなかで新たな収入源を確保する必要が生じたことに加えて、カード会員の裾野の広がりとともに、会員の信用度に応じてよりきめ細かく手数料や金利を徴収する必要性が高まったためである。

  4. 一方、全体的な好決算のなかにあって、信用度の相対的に劣る、いわゆるサブプライム層を主要顧客とするクレジット・カード専門会社(モノライン)の苦戦が顕著である。サブプライム向けモノラインは90 年代のクレジット・カード業界の成長を牽引したものの、ここにきて景気の悪化に伴い、収益が大幅に落ち込み、経営難に陥るところが続出している。

  5. クレジット・カード業界は現在、a.一段の金利低下余地が小さいといったマクロ経済面での変調のほか、b.サブプライム・ローンにもはや依存できない、c.金融監督当局による規制が強まっている、などの逆風に直面している。こうしたなか、米銀各行は、新規顧客層としてのヒスパニック系移民の開拓や、カード普及率の比較的低い海外への進出に取り組んでいるものの、成功へのハードルが高いのも事実である。クレジット・カード業界が一段の成長を遂げるためには、新たな収益源の確保に向けた各銀行のイノベーションが不可欠であろう。
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