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放課後に期待される新たな役割

2009年12月08日 小島明子


 2007年度より、「放課後子どもプラン」が開始されました。「放課後子どもプラン」は、地域社会の中で、放課後や週末等に子どもたちが安全で安心して過ごせるように、文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」と厚生労働省の「放課後児童健全育成事業」を一体的あるいは連携して実施するものです。背景としては、子どもが犠牲となる犯罪・凶悪事件が相次いで発生し社会問題化したことがあげられますが、女性の就労増加に伴い、放課後の時間に自宅外で過ごす子どもも増えており、学童保育や学校外教育などを含めた放課後のあり方が問われています。

 既に、世田谷区では「新BOP(Base of playingの略)」、品川区では「すまいるスクール」が全小学校に導入されるなど、子どもたちは放課後を学校で過ごす傾向が強まっています。私立小学校でも放課後の場を創出する動きが出てきており、山梨学院大学附属小学校(山梨県甲府市)では放課後開放事業として「トワイライトスクール」を実施しています。これは、校内の教室を利用しながら、専属のスタッフや外部の講師により、放課後の生徒たちに対して音楽や絵画など多彩なプログラムが提供されていることに特徴があります。

 イギリスでは学童保育を含めた放課後対策の充実として、「拡大学校」(Extended School)という考え方のもとに、学校が学童保育とスポーツや音楽などの様々な活動の機会を提供しています。また、子どもだけではなく大人に対しても、子育て相談に対応するためのサポートや、成人教育のプログラムの提供、スポーツ施設の開放などが行われており、地域の人たちの生活全般を向上させる場としても活用されています。オーストラリアでは、児童の肥満や青少年の高自殺率が深刻な社会問題であることを背景として、子どもの肥満解消のための放課後運動プログラムや、メンタリング・プログラムが提供されています。

 放課後は単に子どもに対する安全な場所を提供することにとどまらず、子どもにとって、授業の中では得られない経験や学びを得られる場であることが求められます。さらに、現在の子どもを取り巻く家庭や地域の教育力の低下には様々な社会問題が背景となっていますが、子どもや保護者、地域が抱える社会問題を解消するための場としても、今後は活用していくべきではないでしょうか。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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