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JRIレビュー Vol.8,No.111

わが国企業のESG 経営と海外現地法人の生産性-ESG 経営でグローバル・サウスの持続可能な成長と海外での稼ぐ力の二兎を追え-

2023年11月01日 安井洋輔


世界は、G7を中心とした民主主義陣営と中国・ロシアを中心とする専制主義陣営との間で分断が進んでいる。後者は、戦後の国際秩序を自国の利益のために修正しようとしており、そうした動きを阻むには、グローバル・サウス(以下、GLS)を民主主義陣営に極力取り込み、国際社会の圧力を強める必要がある。

もっとも、現状ではGLSの多くは旗幟を鮮明にしていない。背景には、人口が急増するなか、経済力を高めていく必要があり、中国との経済的なつながりやG7からの政府開発援助や対外直接投資など、双方に頼らざるを得ないという事情がある。

こうした状況下、GLSを民主主義陣営に引き入れるには、GLSが持続可能な形で経済成長を実現できるよう支援を強化することが重要である。そうすれば、国際社会において経済的理由で中国などに配慮することなく自らの価値観に基づく意思表明がしやすくなるためである。

ここで、G7からGLSへの資金の流れをみると、対外直接投資(以下、FDI)が政府開発援助を大きく上回っている。したがって、G7はFDIを効果的に活用して、GLSの持続的な成長を促すことが肝要である。そこで、本稿では、GLSの持続可能な成長に資するFDIをどのように実現すべきかについて検討した。とりわけ、近年、持続可能な開発目標を実現する手段としてESG(環境・社会・ガバナンス)が重要になっていることを踏まえ、わが国企業データからESGへの取組強化が新興・途上国に立地する現地法人の生産性にどのような影響を与えるのかを分析した。

その結果、ESGのうち、社会(Social)のうち地域社会(Community)への取り組みを強化すると、現地法人の労働生産性に正の効果を与えることが分かった。背景には、公正な競争と贈収賄防止などの取組強化が、腐敗・汚職の多い新興・途上国において、生産性の高い現地人材の獲得や優良な取引先との関係強化に繋がり、現地法人の生産性を大きく高める可能性が考えられる。

以上のことから、わが国企業は、公正な競争と贈収賄防止などの取り組みを一層強化しつつ、GLSへのFDIを積極化すべきであろう。これによって、わが国企業の現地法人の生産性が高まるとともに、GLS経済の成長にも寄与することができる。現状、わが国は他のG7諸国よりも公正な競争と贈収賄防止などに関する地域社会(Community)への取り組みが弱い企業が多いことから、今後こうした点に本腰を入れていく必要がある。

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