コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

リサーチ・アイ No.2023-001

児童手当の多子加算強化の効果は期待薄

2023年04月05日 藤波匠


政府は、少子化対策の推進に向けて、児童手当等の多子加算を強化する方針。しかし、多子世帯優遇が重視される背景には、少子化の課題認識において、「多子世帯(3子以上)の割合が低下している(一人っ子の割合が高まっている)」という事実誤認がある可能性。

実際には、わが国では、50年以上にわたり出生順位別出生数の構成比に大きな変化はみられていない。多子世帯比率の低下という認識は、団塊の世代の出生当時との比較によるもの。子細にみると、少子化のペースが加速した2015年以降は、第3子以上の比率が16.3%(2015年)から17.7%(2021年)に上昇。同期間、第1子の構成比率の低下が顕著であり、むしろ結婚・出産に至らない世帯が増えていることが最大の問題。

有子世帯の所得分布において、低所得層が減少、中高所得層が増加。全世帯の所得分布には変化がみられないことから、低所得層が出産を諦め、中高所得世帯に出産が偏る傾向は明らか。一生結婚するつもりのない未婚者も、低所得、雇用が不安定な層に偏在。低所得層の結婚・出産に向けた意欲の低下が、少子化加速の最大の要因。

低所得層に恩恵の少ない児童手当の多子加算は、さらなる所得格差の拡大を助長するだけでなく、子の有無による若年世代の分断も招きかねない。女性の社会進出の観点からも、過度な多子優遇は疑問。児童手当の多子加算の実効は乏しく、若い世代の賃上げや雇用の安定化を重視すべき。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ