創発戦略センター ISSUE 352 2017/08/22(火)発行
創発
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コーポレートガバナンス・コード施行から3年目の今年の株主総会では、相談役・顧問のあり方が大きく取り上げられました。

今回の創発eyesでは、注目があつまる相談役・顧問のあり方についての関連機関報告書の紹介と今後の日本企業の
情報開示への期待についてお伝えします。
   1. Ikuma Message

・近隣アジア諸国の観光客との交流で期待すること

   2. 創発Eyes

・相談役・顧問制度についての情報開示期待の高まり

   3. 連載_次世代農業

・次世代農業の“芽”
第3回 食品衛生法改正とアクティブ/インテリジェント包装の可能性



創発戦略センター
所長
井熊 均
 

近隣アジア諸国の観光客との交流で期待すること

 夏休みの休暇で北海道に行きました。素晴らしい自然と海の幸、山の幸をふんだんに使った食事、そして、どこに行っても歓待された気分になるおもてなし、などで短い旅行を堪能しました。

 北海道のような有名な観光地には数多くの外国人観光客が来訪されています。場所によっては、明らかに日本人より数が多い、と思うこともあります。経済の低迷や人口減少で苦しむ日本の地方にとって海外からの観光客が増えるのは本当にありがたいことです。また、海外の人達が日本の自然、文化、資産、等を評価して頂けるのは嬉しいことです。

 観光客の増加は、経済面はもちろんのこと、地域の活性化にも大きな効果があります。観光客に、また来たいと思ってもらおうとすると、地域の魅力を再確認し、特産物に力を入れ、それらを軸としたて地域づくりが進むからです。雇用の場も生まれます。観光客で賑わう地域では、老若男女の方々が生き生きと働かれている姿を目にすることができます。政府は海外からの観光客を倍増する計画を示していますが、日本中の地域のために、是非とも成功させてもらいたいと思います。

 一方、海外からの観光客数の維持あるいは拡大を考えた時、日本には難しい問題があります。海外からの観光客の多くは近隣のアジア諸国からの観光客であり、その中のいくつかの国とは歴史的な問題を抱えているからです。夏はそうした問題への認識が高まる時期でもあります。歴史に端を発しているだけに、問題の払拭は容易なことではありません。一朝一夕で解決することは難しいですが、交流が拡大する中で、お互いに理解し合おうとする姿勢が深まっていけばと思います。



創発戦略センター
スペシャリスト
黒田 一賢
 

相談役・顧問制度についての情報開示期待の高まり

 コーポレートガバナンス・コード施行から3年目の株主総会シーズンが終わり、上場企業によるコーポレートガバナンス報告書公表も恒例となってきた。毎年の株主総会シーズンには、おのおの焦点となるテーマがあり、今年は 相談役・顧問のあり方が大きく取り上げられた。その先鞭となったのは2016年10月に公表された議決権行使助言機関ISSによる2017年版議決権行使助言改定案である。同案では相談役・顧問制度を定款で新たに規定する場合、当該企業の議案への反対を推奨するというものだった。実際にはそのような企業はほぼ無く、反対推奨は実際には機能しなかったものの、既に相談役・顧問制度を持つ企業およびその株主の反応に注目が集まった。中には日清紡ホールディングスのように相談役・顧問委嘱制度廃止を明言した企業もあったが、多くの企業は現状を維持しつつ、とりたてて情報開示をした企業はなかった。

 そもそも相談役・顧問制度では社長・会長経験者等が退任後も会社に残り、役員時代と同様の待遇を受けている実態も少なくない。それでいて、活動内容や報酬については情報開示対象から除外されている。さらに取締役会の決定に対し実質的な影響力を及ぼす可能性が高いものの、仮にその結果として企業不祥事を引き起こしたとしても、株主に対する説明責任を負わない。その不透明さは以前より問題となっていたものの、折しもコーポレートガバナンス・コード施行により、日本企業の取締役会の慣行に注目が集まったことで、問題が再認識された格好だ。

 経済産業省のCGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会報告書では、相談役・顧問について顧客との取引関係維持等への好影響を併記しつつ、役割・処遇の不透明さや経営陣の意思決定への悪影響にも言及した。その上で、コーポレートガバナンス改革の観点からは、社内での役割の明確化・外部への情報発信とともに、他社の社外役員としての活躍を推奨した。コーポレートガバナンス・コードで独立社外取締役を2名以上任命することが推奨されているほか、海外機関投資家がより独立社外取締役の取締役会への関与を求める動きを強めていることを考慮すると、この推奨は妥当なものといえよう。

 その最初の一歩として2017年8月2日に東京証券取引所は「相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の改訂について」という見解を発表した。同文書では同取引所に上場する企業に開示を義務付けているコーポレートガバナンス報告書に相談役・顧問等の実態についての情報開示を求めた。開示内容の具体例として、相談役・顧問等の役職に就任している、もしくは同等の関係にある者に対して氏名や役職・地位、業務内容、勤務形態・条件(常勤・非常勤、報酬有無等)および代表取締役社長等の退任日、相談役・顧問等としての任期やその合計人数が挙げられている。改訂を反映したコーポレートガバナンス報告書の公表は2018年1月1日からである。企業の開示内容に引き続き注目していきたい。



創発戦略センター
コンサルタント
各務 友規
 

次世代農業の“芽”
第3回 食品衛生法改正とアクティブ/インテリジェント包装の可能性

食品衛生法改正とアクティブ/インテリジェント包装について
 現在、日本では、食品用器具および容器包装の規格基準の国際整合性担保の観点から、厚生労働省を中心に食品衛生法の改正が検討されています。
 係る状況下、農業・食品業界では、フードロス削減やサステナビリティ確保の観点から、鮮度保持期間の延伸を可能にする食品包装への関心が高まっており、同法改正に伴う新たな食品包装「アクティブ/インテリジェント材料および製品」の導入を巡る議論が注目を集めています。

アクティブ/インテリジェント材料および製品とは
 食品包装用のアクティブ材料および製品とは、「包装された食品の期限を延長したり、その状況を維持または改善したりすることを意図した材料および製品」を意味します。すなわち、アクティブ包装とは、包装済み食品またはその食品を取り巻く環境の内外に対して、特定の化学物質を(1)放散、(2)吸収、または(3)固定する機能を有する包装のことを指します。
 他方、インテリジェント材料および製品とは、「包装済み食品または食品を取り巻く環境の状況を監視する材料および製品」を意味します。アクティブ包装とは対照的に、インテリジェント包装は、包装材料の外側の表面に位置し、包装材料の内側とはバリアー材で隔離されていることが特徴です(規則EC、No 450/2009)。

EUにおけるアクティブ/インテリジェント包装に関する法制化と技術および製品開発の動向
 2009年5月、EUはアクティブ/インテリジェント包装に関する法制化を行い、包装済みの食品に対して、特定の化学物質の(1)放散、(2)吸収、または(3)固定を通じて、包装された食品の品質を維持または改善したり、食品や食品を取り巻く環境の状態を可視化したりする材料および製品を公式に認可しました。
 これに伴い、例えば、食品内における病原性微生物の増殖を抑えるための食品保存料、あるいは抗菌・保存効果を有する天然物由来の抽出物等が、食品添加物規制にカバーされる範囲内で、アクティブ包装と見なされることが可能になり、EUでは当該技術および製品の開発が進んでいます。
 実際にEUでは、AIPIA(Active & Intelligent Packaging Industry Association)と呼ばれるアクティブ/インテリジェント包装に関する業界団体が組織されており、当該団体に加盟するメンバー企業や研究機関を中心にさまざまな取り組みが加速しています。さらに、2016年11月、AIPIAは米国のDigimarc社のCMOを役員会に加え、米国におけるプレゼンスの強化を図っており、これらの包装は、国際的な潮流となりつつある状況です。

日本におけるアクティブ/インテリジェント包装を巡る状況
 日本においては、食品包装の原材料に何を用いてよいかは、食品衛生法および業界の自主基準に委ねられていますが、アクティブ/インテリジェント材料および製品に関するポジティブリストは存在しておらず、使用に関しても明確な基準がない状況です。
 しかし、日本では、古くから「ホタテの貝殻を土壌に鋤き込むことで植物の根腐れを防止する」等、天然物由来の抗菌成分を活用した事例が多く見られます。こうした事例からは、日本独自のノウハウの蓄積がアクティブ材料および製品に応用できる可能性が期待されます。
 EUではアクティブ/インテリジェント包装の法制化により、当該技術および製品の開発が進む一方で、日本は法制度の未整備により、これまで蓄積されてきた日本独自のノウハウや技術等の優位性を活かし切れていません。

EUの法制度の海外展開によってもたらされる日本経済への影響
 EUの法制度の影響力は強く、今後国際標準として各国に採用される可能性が高いと思われます。特に中国では2017~2018年にかけて、同制度の採用が示唆されており、さらに、当該法制度化の影響は、巨大市場の中国を見据える東南アジア諸国にも波及するものと推察されます。
 こうした状況が現実のものとなれば、日本はアクティブ/インテリジェント包装に係る技術および製品開発の国際競争に出遅れ、日本の食品包装、あるいは包装と密接な関係にある食品産業自体の競争力が低下し、輸出不振や海外での現地生産販売の機会損失を招く恐れがあります。また、本来あるべき技術の進歩によって消費者が享受できる価値(食品のおいしさ、機能性、鮮度の保持による価値)が得られず、消費者利益の損失を招く可能性もあります。

日本におけるアクティブ/インテリジェント材料および製品の開発の必要性
 厚生労働省が2017年6月16日に公表した「食品用器具および容器包装の規制に関する検討会取りまとめ」によると、今後の課題としてアクティブ/インテリジェント物質の取り扱いが挙げられていますが、内容は「安全の確保策を検討する必要がある」との記述にとどまっています。
 既に述べたように、EUが規制や規格を先導する状況が、わが国の国益や消費者利益損失をもたらす事態を回避すべく、日本においても、安全性を担保するアクティブ/インテリジェント包装の法制度が早急に整えられ、同法制度の下で企業の技術および製品開発が進展する状況づくりが急務となっています。

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