創発戦略センター ISSUE 350 2017/07/25(火)発行
創発
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弊社は、農業を稼げる魅力的な産業とし「攻めの農林水産業」達成を目指して、 農業データ連携基盤の構築を検討する
コンソーシアムに参画しています。
今回の創発eyesでは「農業データ連携基盤が社会インフラになるための鍵」と題して担当者の想いを紹介します。
   1. Ikuma Message

・革新技術を見極める眼が必要

   2. 創発Eyes

・農業データ連携基盤が社会のインフラになるための鍵

   3. 連載_次世代交通

・地域社会の「新しい足」
自動運転移動サービスの創出 No.3
低速モビリティの自動走行による近距離圏内移動サービスを実証し確かなニーズを検証



創発戦略センター
所長
井熊 均
 

革新技術を見極める眼が必要

 先月末に「自動運転 勝利の法則 レベル3をめぐる新たな攻防」という本を出しました。
 最近、IoTとAIへの注目が高まっていますが、その中でも、自動運転は市場規模が大きく最も高度な技術が要求される分野と言えます。
 我々は、ここ数年間、自動運転を視野に入れて、コンソーシアム活動や実証を進めてきました。そうした活動の中から得られた知見や各種の情報を整理すると、IoT、AIについてはいくつかのことが言えると思います。

 まず、IoTについては、これまでの制御の高度化の延長で間違いなく市場が広がるはずです。ITが飛躍的な進化した分、市場の開け方も速くなるでしょう。
 一方で、虚実が混在しているのがAIの世界です。様々なデータを分析してコンピュータが機械などの作動を制御できる範囲はますます大きくなります。マーケティングでもこうした分析機能が役に立つはずです。AIの実の部分と言えます。

 自動運転の技術は、レベル1と呼ばれる衝突防止のような技術から、レベル5と呼ばれる完全な自動運転まで、5段階に分類されています。このうち、既に、レベル、1,2の技術は日本車などでオプションとして商品化されており、一部では限定的なレベル3の技術も商品化されています。片や、時速30km程度の走行やテストコースでの自動運転などで、レベル4,5の技術が実証されています。同じ自動運転の技術でも、この二つの動きはそう簡単にはつながりません。純技術的には可能でも、社会的には相当先のことか不可能なことでしょう。つながる可能性が低いものを、あたかもつながるように見せるのはバブルの典型です。

 しかし、IoTやAIに限らず、社会に大きな変革を与える革新技術はバブルと共にやってくるものです。そこでチャンスを掴むには、砂上の楼閣と、その下にしっかりと残る革新技術の基盤を見極める眼が必要になります。



創発戦略センター
マネジャー
田中 千絵
 

農業データ連携基盤が社会のインフラになるための鍵

 日本の農業が危機的状況であるといわれて久しい。これを脱するために、これまでもさまざまな施策が講じられてきたが、現在最も重点的に進められているのが、「攻めの農林水産業」に向けた取り組みである。首相官邸が主導する未来投資会議にて策定された「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日公表)においても、「攻めの農林水産業の展開」として、農林水産業の強化が明確に打ち出されている。

 「未来投資戦略2017」における「攻めの農業」施策は、大きく5つに分かれている。(生産現場の強化/バリューチェーン全体での付加価値の向上/輸出の促進/林業の成長産業化と森林の適切な管理/水産業の成長産業化と資源管理の充実)このうち、1つの重要な取り組みになっているのが、「バリューチェーン全体での付加価値の向上」のなかで掲げられている「多様なデータに基づく農業への転換」であり、そのためのインフラとして「農業データ連携基盤」(以下、「データPF」とする)を本年中に立ち上げることとなっている。

 日本総研は、データPFの構築に向けた検討を担う、内閣府主導の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)」の研究コンソーシアムに参画している。データPF構築で目指す社会像は、(1)篤農家の経験や勘を、できる限りデータ化することにより、農業新規参入者のハードルを下げること(新規就農者の確保)(2)生産性が向上し、また経営が改善されること(現業農家の収入増加)(3)直接取引により収入が向上すること(農家の利益率向上)である。「攻めの農林業」を推進し、農業を「稼げる」魅力的な産業に成長させるために、農業界に関わる名だたる企業が研究コンソーシアムの中で日々検討を進めている。

 日本総研がデータPFを検討する際に最も重要と考えているのは、データPFが立ち上がった後に、それに対して発せられる現場の農家の方々の生の声である。データを活用した農業に対する現場の就農者の方の意識は、現状では決して高いとはいえない。「どんなデータPFであれば、農家の方が活用したいと思うのか」ということを、地道に拾い上げ、それをデータPFに再び反映していくことが、意味のあるデータPFを作っていくうえで重要である。

 7月上旬、日本総研の農業チームのメンバーが、グループ会社である三井住友銀行および三井住友ファイナンス&リースが出資する株式会社みらい共創ファーム秋田に伺い、データPFの活用に関してヒアリングを行った。ヒアリングしてあらためて認識したのは、データPFを活用することによる就農者にとっての具体的なメリットが訴求できていないという点であった。一方、今後データPFを普及していくためには、「個々の農家よりも農業生産法人や単協がよいのではないか」といったヒントもいただけるなど、大変有意義なヒアリングとなった。

 今後、データPFを社会インフラとして普及させていくためには、現場の農業者にとってメリットと感じるような現場目線に立った成功事例を1つずつ積み上げていくことが最も重要だということを、秋田でのヒアリングからあらためて痛感した。2017年8月22日には、データPF普及に向けて、「農業データ連携基盤協議会」(通称:WAGRI)が設立される。この協議会には、データPFに関心を有する企業、団体、個人等の参画が期待されており、農業界の企業のみならず、さまざまな業界の企業等からデータPFの多様な活用アイデアが出てくるであろう。日本総研もデータPFを活用できる社会インフラとしていくことを目指し、絶対に忘れてはいけない「現場目線」を常に持ちながら、成功事例を小さくても数多く積み重ねていくよう尽力したい。



創発戦略センター
マネジャー
武藤 一浩
 

地域社会の「新しい足」
自動運転移動サービスの創出 No.3
低速モビリティの自動走行による近距離圏内移動サービスを実証し確かなニーズを検証

■低速モビリティの自動走行による近距離圏内移動サービスへの期待
 前号(ISSUE 347 2017/06/13(火)発行)では、低速モビリティの自動走行サービス実証に参画した地元交通事業者などからのヒアリング結果をご紹介しました。
 交通事業者側では、近距離圏内移動へのニーズが近年特に強まっていると考えていたとのことで、今回のサービス実証によってそれが裏付けられたことが収穫だったようです。今後は、タクシーでは採算の合いにくい近距離圏内移動サービスを、運転手の人件費がかからない自動運転で実現させるためのサービスモデルや、自動運転車両を用いた観光地におけるレンタカーの貸出・返却手続き等について、検討を進めていきたいとの意向も示されました。
 今号では、サービス実証の利用者の方々を対象に行った、アンケート結果の一部をご紹介します。

■利用者アンケート
【利用者アンケート概要】
対象: サービス実証の利用登録者 108名
期間: 平成28年12月
方法: 質問票を配布、回収
回収数: 68名(回収率約63%)
0725_利用者アンケート図

【アンケート結果】
●外出促進への期待とサービス料金の支払い意向あり
 サービス実証終了後のアンケートでは、半数以上の利用者が「外出が増えると思う」と回答しています。また、「お金を支払ってでも利用する」と回答した利用者は9割を超えました(無回答除く)。頻繁な利用が予想される層である「定額」払いの希望者は半数程度存在するなど、今回検証したサービスモデルに確かなニーズがあることを確認できました。

●具体的なニーズは「買い物などの荷物」や「数年後の日常生活の足」
 利用意向としては、「スーパーなどの帰りに荷物が重く、坂を上がる時がきついときに利用したい」という声が目立ちました。丘陵地という条件もあるためか、普段の生活においては、牛乳一本、卵一箱買うことも荷物が重くなることを考え、ためらうことがあるという声も聞かれるなど、日常の買い物での利用ニーズは多く存在することが分かりました。
 また、特徴的だったのは、今すぐはあまり利用しないものの、数年後の自らの身体の衰えを想定し、今のうちから導入を目指して欲しいという声が多かったことです。近距離圏内移動サービスが、「杖代わり」としての役割を期待されていることも分かりました。

●デマンド走行より手軽な定ルート走行が人気
 自宅前までの送迎が可能となるデマンド走行の「つくつく」の利用が約50件であった一方、手軽に乗車できる定ルート走行の「つくし環状線」の利用は約200件に上り、人気が集まりました。これは、近所の生活圏であれば、わざわざ呼び出す手間をかけるよりも、来る時間とルートが分かっているモビリティに手軽に乗れる方がニーズが高いことを示しています。

●知り合いに勧めたくなるサービスとして受け入れられる
 つくし環状線およびつくつくのいずれの利用者においても7割が他人にも利用を勧めたと回答しており、周囲の人々にも紹介する価値があることが認められた結果となりました。
 ところで、サービス実証期間中、車両位置確認用タブレットがスーパーや介護施設、喫茶店、理髪店などに次々と設置されていきましたが、それは利用者の方々が自主的に自らの行き先となった店舗に設置を呼びかけて拡がった結果です。このことも、地域住民に受け入れられていたことを示すものと考えています。

●走り回るモビリティの姿に「防犯」への期待
問:つくし環状線やつくつくが地域の中を走り回る姿を見てどう感じたかについて、該当する選択肢を全てお答えください。

0725_利用者アンケート図


 地域の自治会の主な役割の一つとして「防犯」が挙げられますが、地域を走り回る車両は防犯の役割も期待されていることが分かりました。それぞれのモビリティには、事故などが起こった際の確認ができる社内外を録画するドライブレコーダーや、車内安全をタイムリーに確認できるカメラを設置しており、走り回るだけでなく、映像として履歴を残せることも地域防犯につながると考えられた模様です。

■地域コミュニティをサポートするモビリティサービスとして
 今回のサービス実証では、日常生活において、近距離圏内移動サービスへのニーズが確かに存在することが明らかになりました。また、移動サービス以外の付加価値としてカメラを搭載した車両による防犯効果なども評価されました。こうした地域コミュニティの活動の一部を補完する機能は、従前の移動サービスではあまり考えてこられなかったものです。住民と街に活力をもたらし、地域コミュニティづくりに役立つインフラとして、この近距離圏内移動サービスは成長させていけるものと考えています。次号では、この移動サービスの早期実現に向けた道筋について提言させていただければと思います。

『LIGARE(リガーレ) vol.32』(自動車新聞社出版)地域社会の「新しい足」自動走行移動サービスの創出(中編)P40~45を一部改変して転載

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