創発戦略センター ISSUE 346 2017/05/23(火)発行
創発
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新しい農業のあり方につながる製品、取り組み、考え等を紹介する新連載「次世代農業の“芽”」が始まります。
第1回目は栃木県茂木町の取り組みをご紹介。
今後も国内の最新事例を連載としてご紹介します。ご期待ください。
   1. Ikuma Message

・世界勢力構造の変遷から日本が学ぶもの

   2. 創発Eyes

・地域エネルギー事業の目的意識

   3. 連載_次世代農業

・次世代農業の“芽”
第1回 次世代農業の芽を育てる茂木町の「三位一体」の仕組み



創発戦略センター
所長
井熊 均
 

世界勢力構造の変遷から日本が学ぶもの

 NHKの大河ドラマ「おんな城主直虎」を毎週楽しみにしています。直虎が活躍したのは、戦国の世が豊臣秀吉、徳川家康による天下統一へと向かっていった時代です。直虎は織田信長と同じくらいの年代ですから、昨年の大河ドラマ「真田丸」の主人公真田幸村の一世代先輩になります。天下統一に向けた勢力の形成に貢献した世代と言えます。

 これまで戦国時代のドラマというと、上杉謙信、武田信玄、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった英雄が主人公になることが多かったように思います。これに対して、井伊直虎、真田幸村は強大な武将に挟まれ、悩み苦しみながら時代を生き抜いた人物です。NHKが意図したかどうかは分かりませんが、今の時代に井伊直虎、真田幸村にスポットライトが当ったことは意味深く思えます。

 1945年第二次世界大戦が終わると、世界はアメリカとソ連を中心とする勢力に二分されました。1980年代になるとソ連は経済的に行き詰まり、1985年にはゴルバチョフ氏が共産党書記長に選ばれます。その後、アメリカを中心とした市場資本主義経済陣営が世界をリードしました。しかし、現在では中国の台頭、先進国経済の低迷や格差問題などで資本主義にも一定の軌道修正が必要になっています。ちなみに、1945年から40年遡ると、欧州が二つの勢力に分かれていく時代を見ることができます。

 このように世界の勢力構造の寿命が40年程度であるとすると、2020年代には新しい社会の動きが起きるかもしれません。昨年来世界各地で起こっている出来事がその前兆であるかどうかは分かりませんが、世界中が難しい時代に差し掛かっていることを否定する人は少ないでしょう。太平の世に向けて困難な時代を生き抜いた直虎や幸村の生き様に、今の日本が学べるものがあるように思うのです。



創発戦略センター
マネジャー
程塚 正史
 

地域エネルギー事業の目的意識

 築地市場の豊洲移転問題が引き続き世上を賑わせている。歴史的に見れば、東京・江戸のまちびらき以来もともと日本橋にあった魚河岸が手狭になったため戦後築地に移転し、さらに東京の拡大が続いているため豊洲に、という時代の流れのように見える。

 同様の市場移転は、過去にもあった。その一つが材木だ。まちびらき当初は日比谷付近にあった材木市場は1600年代に何度か移転を繰り返した後、1700年ごろ、現在の木場に至る。木場は築地と同様に近代まで使用され、1969年に新木場にその役割を譲るまで現役であった。

 江戸時代、都内(江戸市中)で最も多い小売業種は米穀店、その次は薪炭店だったと言われる。薪炭は明治以降、ガス灯の導入や石炭による大規模発電の普及によって姿を消していったが、従来は最も身近な生活物資であった。食料とエネルギー、これが人間の生活を支える二大産業であることは昔も今も変わらない。

 日本では、食料については自給率が定期的に話題になる。カロリーベースで40%を切るようでは、安全保障の観点から問題だという論調だ。一方、エネルギー自給率についてはゼロに近い水準であるにも関わらず、議論されることは比較的少ない。「日本には資源がないからね」と、半ば諦めのムードすらある。資源調達先が、オーストラリア、サウジアラビア、インドネシアなど、日本に対して友好的な国々であることも関係しているかもしれない。

 一方、エネルギー安全保障に関して、欧州は敏感だ。化石資源、特に天然ガスの多くをロシアから輸入しているため交渉力が弱く、その一存で価格を上下させられたり、場合によっては供給を停められたりする恐れがあるからだ。実際2000年代には二度にわたって、ウクライナ問題を契機にパイプラインを遮断されている。

 今年(2017年)3月、欧州のフィンランド、ドイツ、イタリア、デンマークを訪問した。現地の複数のメーカーが開発し販売を始めている、小型ガス化熱電併給(CHP)設備の導入実態を視察するためだ。これらの設備のエネルギー供給規模は、従来の数百kWではなく、10~40kW程度と小さい。数十戸程度の一般住宅向けや、学校や体育館向け、あるいは農場のグリーンハウス向けなどに電熱を供給するための設備である。

 小型設備であるため、複数連ねたとしても、その対象範囲はせいぜい小学校区程度となる。だが驚くことに、地域密着型の事業でありながら、訪問先では必ずと言っていいほど、エネルギー安全保障の話題が出る。設備を導入している地域の周辺から木質バイオマス資源を調達することで、外国に依存しないエネルギーの確保ができるという話である。また、域内資源を使うことで、地域の経済循環に資するという話もある。この類の話題が、大学教授はもちろん、ベンチャーのメーカーからも、農場の社長からも聞かれる。

 日本でも、エネルギーの地産地消の取り組みが一部で進みつつある。また、日本総研でも北海道から九州に至る各地でその支援を行っている。だが地域エネルギー事業を、ともすれば社会貢献活動のような取り組みだと考える向きはまだ少なくない。介護や保育、道路管理、商店街振興など山積みしている地域課題の中で、エネルギー事業の優先順位は高くないと認識されがちなのが実態だ。

 なぜ地域エネルギー事業が必要なのかという、根本的な危機意識や問題認識の共有が、事業を進めるうえで必要だろう。安全保障や域内経済構造は目に見えにくく、数字で表すのも難しい。だが中長期で捉えれば当然必要とされることであり、暮らしを根本から脅かしうる問題だ。

 幸い(と言っては失礼だが)、各地で長年にわたって地域事業を営む方々には、同様の意識があるように思われる。このような輪を広げ、暮らしに密着したエネルギー事業の展開を図りたい。木場の材木商は、扱う商品が建材や燃料として地域で使われることで、日々の暮らしに役立っているという実感があっただろう。あれから300年、地域の暮らしに役立つ、地域の地域による地域のためのエネルギー事業を、日本でも再び普及させていきたい。



創発戦略センター
コンサルタント
今泉 翔一朗
 

次世代農業の“芽”
第1回 次世代農業の芽を育てる茂木町の「三位一体」の仕組み

 次世代農業のコラムでは、昨年度は「農業ビジネスを成功に導く10のヒント」と題し、ICT/IoTの農業分野での活用、次世代型植物工場の展開、機能性農産物のブランド化等の注目トピックを紹介してきました。
 今年度は、「次世代農業の“芽”」と題し、新しい農業のあり方につながる製品、取り組み、考え等を紹介していきます。

 第1回目は、栃木県茂木町の取り組みを紹介します。私たちは、古口町長のお招きを受けて、山々に桜が満ちる頃、茂木町を訪問してきました。そこには、次世代農業の芽を育ててくれるであろう「三位一体」の取り組みがありました。

 「三位一体」の1つ目の取り組みは、道の駅です。茂木町の道の駅は、ここで販売する「ゆず塩ら~めん」が全国道の駅グルメ日本一になるなど、魅力的な商品がたくさんあります。その中でも大人気の商品が、「美土里(みどり)野菜」。「美土里たい肥」という町独自の特別なたい肥で作ったブランド野菜で、道の駅が地元農業生産者から買い取り、直売しています。

 この美土里たい肥の生産が、茂木町の2つ目の特徴的な取り組みです。「美土里館」というたい肥化施設でこのたい肥は作られています。美土里たい肥の原料は、生ごみ、牛糞、落ち葉、おがこ、もみがらです。お金をかけて廃棄しなければならなかったものが、逆にお金を生んでいます。

 なぜ、茂木町はこれらの取り組みをしているのでしょうか? それは、町が事業を行うことで、雇用を生み出すためと説明を受けました。茂木町も人口減少の問題に直面しており、特に、人口の流出を防ぐためには、町に仕事が必要です。しかし、そう簡単に企業を呼び込むことはできません。「企業誘致が難しいのであれば、町が仕事を作るしかない」と町長は言います。道の駅やたい肥化事業は、着実に収益を上げ、雇用を生んでいます。

 このように成果を上げている茂木町ですが、他の地域と同様、高齢化に伴う農業生産者の離農は避けられない課題です。若手の新規就農者をいかに増やすかが問われています。 そこで、茂木町が打ち出した3つ目の取り組みが、「美土里農園」です。美土里農園は、道の駅が主に出資して立ち上げた農業法人で、新規就農者に農業技術を実践で学んでもらうことを目的としています。ここで生産した野菜は、道の駅が買い取ることで、まだ農業に慣れない段階の生産者に安定した収益を保証します。

 それでも、従来型の農業を続けているだけでは、儲かる農業にするのは難しいと言えます。農業が魅力的な仕事にならなければ、増え続ける離農者を補うだけの就農者は生まれません。このような日本農業の課題に対して、日本総研は「アグリカルチャー4.0」という新しいコンセプトを提唱しています。アグリカルチャー4.0は、農業生産者が品質向上と農業経営により一層の力を入れることで、皆が儲かる農業にする仕組みです。「IoT、AIを活用した農業関連データベースと最適化アプリケーションのプラットフォーム」と、その栽培計画を自動的に実行してくれる「自律多機能型ロボット」で実現します。

 次世代農業の要とも言えるIoT、AI、ロボットを活用した製品を生み出そうとする企業にとって、茂木町のように、美土里農園という“育成の場”、美土里野菜という“ブランド”、そして道の駅という“販路”がそろったフィールドと提携することは、製品開発、マーケティング上、有効でしょう。製品開発にあたって、製品ユーザーである農業生産者の意見、農作物の消費者の意見を反映することができます。また、新規就農者の場合、既存農業生産者よりも、次世代型製品を柔軟に受け止めてもらえると予想され、製品展開の可能性が見込まれます。次世代農業に取り組む企業にとっては、こうした実際のフィールドを持つ地域と提携することが成功の鍵を握ります。

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