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今回の創発Eyesでは3月に行われた東京大学との共同シンポジウム結果をご案内。
創発戦略センターではこれまで培ってきた新事業開発におけるノウハウ、東京大学との研究で 得られた知見を活用した人材育成サービスを展開していきます。 | |||
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  1. Yumoto Message | |||
  2. 創発Eyes | |||
  3. 北京便り | |||
  4. 連載_次世代農業 | |||
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![]() 副理事長 湯元 健治 |
![]() 地政学リスクの影響をどう読むか 4月7日、米国が突如としてシリア政府軍の軍事施設にミサイル攻撃を敢行した。世界の市場は地政学リスクの高まりを嫌気し、原油高、円高・ドル安、株価下落、債券高で反応した。懸念されていた米トランプ政権の外交・軍事リスクがいよいよ顕在化し始めたといえよう。地政学リスクの高まりが市場、ひいては世界経済に及ぼす影響は決して軽視できない。以下では、シリア情勢の今後の展開や北朝鮮情勢、米中首脳会談後の米中関係に焦点を当てて、地政学リスクの影響について考えたい。 1.米国のシリア攻撃はシリア情勢の泥沼化に拍車をかける 第2に、トランプ政権が相次ぐ内政での失点を軍事行動でカバーしようとしていることだ。移民制限令は、連邦裁判所から差し止め命令を受けて、実行に移されていない。また、懸案のオバマケア代替法案も共和党内部の保守強硬派と穏健派をまとめきれず、採決見送り、法案撤回を余儀なくされた。市場が期待してきた税制改革も未だ具体策を示せず、予算教書の詳細発表も5月中旬にズレ込むなど、内政面ではトランプ大統領の政策遂行能力が疑われる状況になっている。シリア攻撃は米国民に対して強く偉大なアメリカと大統領の決断能力を演出する絶好の舞台に見えるかも知れない。 第3は、これこそが真の狙いだと筆者はみるが、北朝鮮や北朝鮮を甘やかす中国に対する強力な牽制効果を狙ったものだと考えられる。米中首脳会談が開催されたその日にシリア攻撃が行われた事実がこれを雄弁に物語っている。無法行為を行う国家に対しては、米国は断固たる姿勢で臨む、すなわち、北朝鮮の核施設に対する先制的な攻撃は脅しではなく十分あり得るのだと。北朝鮮には核開発を止めさせ、中国には本気で北朝鮮を説得してもらいたいというメッセージが込められている。 まずシリアの軍事施設への限定的な攻撃は、アサド政権を崩壊させる威力は全くない。それどころか、ロシアとの対立を激化させ、トランプが当初狙いとしていた親ロシア政策、ロシアとの協調によるIS掃討策戦を完全に破綻させるだろう。最悪の場合、米ロ軍事衝突に至るリスクも完全には否定できない。米ロの対立激化は国連安全保障理事会の機能を麻痺させ、世界の不安定化を促進しかねない。シリア情勢の泥沼化に拍車がかかれば、中東全体の緊迫化のみならず、欧州への難民のさらなる増加、ひいては欧州極右政党の躍進を後押しし、欧州政治情勢の混迷を招くリスクが高まる。 次に、軍事行動で内政の失点をカバーしようというのは、国民に対する目くらましに過ぎない。過去、ブッシュ政権やクリントン政権でも同様の試みがなされたが、効果は一過性のものに過ぎなかった。イラク戦争の失敗の轍を踏むだけに終わるだろう。法人税、所得税などの税制改革は共和党の政策との親和性が高いが、減税財源として期待する国境調整税(BAT)は、産業界、共和党内でも賛否両論が渦巻いており、実現可能性は未知数だ。内政での指導力発揮は国難に見える。 北朝鮮や中国に対する牽制効果に至っては、ほとんど期待できないと筆者はみる。北朝鮮は米国からの軍事攻撃への危機意識を一段と強め、核開発とりわけ米国本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を一段と早めよう。中国にとっても、経済制裁の強化は、北朝鮮経済の崩壊を招き、自国への難民流入を激増させかねない。北朝鮮からの石炭輸入の年末までの停止といった現在中国がみせているポーズ以上のことをする気は毛頭ないとみられる。他方で、米国が単独で北朝鮮に攻撃し、金正恩政権を壊滅させ南北統一を果たすというシナリオは、朝鮮半島が米国の支配下になることを意味するため、中国にとっては容認し難い。中国としては6カ国協議の再開や米朝対話の実現を働きかけていくしか道がないが、米国は太陽政策がすでに限界に来ているとの認識で、北風政策の強化を推し進めていくだろう。その帰結は、朝鮮半島の不安定化すなわち米国の先制攻撃が北朝鮮の報復攻撃、すなわち韓国、日本の米軍基地攻撃、核ミサイル攻撃を誘発することにつながりかねない。米国は空母打撃群を北朝鮮海域に向けて移動させている他、国家安全保障会議(NSC)が在韓米軍に核配備すべきと提言をするなど、朝鮮半島における有事リスクは今後一段と高まっていくことは必定だ。 2.米中首脳会談は米中対立激化の前哨戦に過ぎない 第1に、北朝鮮問題は、先に指摘した通り、米国の思惑通りに事が進むとは考えにくい。北朝鮮が核開発をあきらめることはあり得ない選択肢であり、中国も本格的な制裁強化に動くことはないだろう。北朝鮮経済が崩壊せずに済んでいる理由は、エネルギーの90%、食料の45%を中国に依存できているためであり、中国の支援なしには北朝鮮という国家は成り立たない。その中国の言うことは、本来無視できないはずだが、(1)北朝鮮が中国にとって軍事・経済上の結びつきが深いこと、(2)北朝鮮は中国にとって軍事的に米国を牽制できる良い位置取りをしていること、(3)誰の言うことも聞かない北朝鮮を制御できるのは中国だけであるという戦略上のメリットなど、中国にとっては、北朝鮮の行き過ぎをなだめる役は演じるものの、実際には、統制不能と理解されている方が都合がよいわけだ。要するに、将来の米中軍事衝突リスクまで考慮に入れれば、中国とって北朝鮮は、「戦略上不可欠の有効なカード」だといえる。 第2に、米中貿易不均衡の是正は容易ではないという点だ。今回合意した「100日計画」の内容はこれから詰めるとしており、現時点で結論を出すのは早計かも知れない。しかし、中国側の対応は航空機や医薬品、エネルギー、農産物などの輸入拡大措置など一時的な措置が中心になる可能性が高い。新たな対話の枠組み構築もオバマ政権時代の「米中戦略・経済対話」を焼き直したものに過ぎず、過去の対話の実績を見ても米中両国の主張は平行線を辿り続けた。ただし、今回は「優しいオバマ」とは違い、米国はライトハイザーUSTR代表、ナヴァロ国家通商会議(NTC)議長、ロス商務長官の貿易三人組と呼ばれる対中強硬派を揃えて強気の交渉に臨んでくることは間違いない。スーパー301条を復活させ、貿易分野だけでなく、投資・サービス分野の規制緩和、政府調達面での米国をはじめとする外資への市場開放を求めてくる。中国側が応じなければ、報復関税を実施することは必定だ。また、現行法上は難しいと言われる「為替操作国認定」も法律を変えてでもやってくる可能性は否定できない(詳しくは、湯元健治の視点「中国経済は本当に底入れしたのか」(2017年3月13日参照)。 中国側は秋の共産党大会を控えて大きな譲歩は出来ない一方、米国側も北朝鮮問題の解決を中国に依存するならば、要求を手加減せざるを得ないとの見方もある。この意味で、もっともあり得るシナリオは、共産党大会が終わるまで、すなわち習近平政権の権力基盤固めが終わるまでは、平行線のまま対話を継続させるという方法だ。しかし、100日計画と銘打った以上、米国サイドは短期的に一定の成果を望んでいることは間違いない。中国側が早期に答えを出さなければ、米国側が報復関税、アンチダンピング課税、セーフガード(緊急輸入制限措置)発動など強硬措置を取る可能性はかなり大きいとみておくべきだろう。 第3は、米中対立の核心が中国の軍事力増強と南シナ海などの海洋進出にあることだ。この問題では、米国側は中国に「東・南シナ海での国際規範の順守と軍事拠点化(注)しないこと」を要請したのに対し、中国側は「米中両軍の緊密な連携が必要」と矛先を交わしており、まともな対話すら実施されなかったとみていい。それほど、この問題に対する米中の利害対立は大きい。 筆者は、米国サイドが経済・貿易問題とこの軍事問題を密接に結びつけていることが従来との違いがあり、注意を払うべき点だと考える。トランプ大統領は、中国の軍事力増強と南シナ海など海洋進出は、オバマ政権が経済問題で中国にすり寄り、中国の経済成長に手を貸し、軍事問題で厳しい態度を取ることを怠ってきたためだと厳しい批判を展開してきた。中国のこれ以上の「やりたい放題」を阻止するには、貿易面で格段に厳しい対応を取るべきだと考えている節がある。国家通商会議議長のピーター・ナヴァロの著書が「Death by China」と「米中もし戦わば」であるという事実こそが米国が経済・貿易問題と軍事問題を一体的に捉えているとの見方を象徴的に示している。 3.地政学リスクの日本への影響は地域によって異なる このような地政学リスクの影響は、紛争が発生する地域によって異なる。シリアなど中東地域の場合は、原油高と同時に「リスク回避の円高」が生じ、日本株なども売られる展開になる。今回のシリア攻撃に関しては、米国政府高官が「攻撃は1回限り」と発言したとの報道で、マーケットへの影響はひとまず限定的なものにとどまっている。しかし、米国は追加経済制裁を行うと明言している他、ヘイリー米国連大使は「さらなる軍事行動を取る用意がある」としており、シリア情勢は、アサド政権の後ろ盾となっているロシア、イランと米国を中心とする西側同盟諸国およびサウジ、トルコなどとの代理戦争の様相を一段と強めていく恐れがある。 他方、地政学リスクが北朝鮮や尖閣諸島、南シナ海など日本に近い地域で深刻化する場合には、むしろ円は大幅に売られる可能性が強い。とくに、米国が北朝鮮への先制攻撃に踏み切った場合には、日本自体が北の核の脅威にさらされるとの連想からパニック的な円売りに発展するリスクに警戒が必要だ。実際、北の脅威を直接受ける韓国ウォンは、米国のシリア攻撃が北朝鮮攻撃を連想させ大幅に売られた。 もちろん、リスクが顕在化せず、想定の範囲内に止まれば、こうした市場の反応は一時的・限定的なものに止まろう。しかし、強硬スタンスも辞さないトランプ政権の外交・軍事政策の下で、リスクが米中貿易戦争や中東、東アジア地域での軍事衝突につながるリスクは決して小さくない。これらの地政学リスクは、発生する確率もそれなりに高く、発生した場合、甚大な影響がマーケットを襲う「Fat-Tailリスク」と認識しておく必要がある。2017年は、経済問題もさることながら、各国における政治的混乱や軍事的衝突リスクに最新の注意と警戒が怠れない年となるだろう。 |
![]() 創発戦略センター シニアスペシャリスト 木通 秀樹 |
![]() 創造的新事業を立ち上げる人材は育てられるか 3月16日に東京大学と共同で、シンポジウム「知識から価値を生み出す人材創出法」を開催させていただきました。基調講演に東京大学の中尾政之教授、上田一貴講師、パネリストには、お二人以外に、世界的な工業デザイナーであるトライポッド・デザイン株式会社の代表取締役中川聰様、バイオ技術で環境浄化のベンチャー事業を進められ、マザーズ上場を果たされた株式会社エンバイオ・ホールディングス代表取締役西村実様をお迎えし、300人を超す多くの方々の申し込みをいただいて、盛況のうちに終えることができました。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。 「創造的新事業を立ち上げる人材は育てられるか」、これがシンポジウムでの問いかけです。現在、差別性ある新事業開発、新商品開発を行う人材の獲得は、企業の最大の関心事の一つではないでしょうか。しかし、こうした人材が企業でなかなか育たないと考える関係者の方は多いと思います。これに対し、中川さん、西村さんは、シンポジウムの中で明確に「育てられる」、「自分はそうした形で育てられた」、「現在、自分が育てている」というコメントがあり、そのリアリティーを実感された人も多いのではないでしょうか。シンポジウム後には、皆様から、「実体験に基づくお話に納得感があった」、「自社でもトライしてみよう」というお話を頂くことができました。 創造的な人材をOJTで育成する場合、確かに、デザイナーのような職種では育ちやすいかもしれません。しかし、製造業や金融機関、商社などはどうでしょうか。業種の違いによって、OJTでできることには限界が出てきます。中でも、日本の強みである製造業などで創造性を育む基盤が薄れていると指摘する人は多いのではないかと思います。特に現在は、製品のリードタイムが短くなったことで、市場で先行することがより重要になってきており、より開発の上流で差別性を発揮する必要性が高まっています。 最近の脳研究とこれまでの創造的新事業を立ち上げた方々の足跡を鑑みると、こうした人材を育てるには、大きく2つの構造が脳内に形成されていることが望ましいと言えます。一つ目は、「(1)ピンときて」、自然に「(2)情報が組み合わさって」得られた考えを、「(3)的確に実現に向けてアウトプット」できることです。もう一つは、情報を組み合わせる際に「(4)明確な個人の価値観による方向付け」を行い、それを「(5)粘り強く繰り返す」ことです。この二つができる人が、日常的な情報の中で発見をして、新たな構想を打ち出していけることになります。この構造を実現する(1)~(5)のような機能をわれわれは5つの基盤と定義して、その部分を集中的にトレーニングする方法を開発して参りました。シンポジウムでは、こうしたトレーニングを日本総研で立ち上げ、育成してきた過程を紹介させていただきました。 日本総研の創発戦略センターでは、今後、新事業開発において関係する企業の皆様に、こうした人材育成の手法も合わせたサービスをご提供させていただきたいと考えております。 |
![]() 創発戦略センター シニアマネジャー 北京諮詢分公司 総経理 王 テイ |
![]() EVを起点とした業界融合が進む中国の実態 中国では、新エネ自動車の販売が2015年、2016年と爆発的に伸びたあと、2017年に入って状況が一変しています。2017年1月には、新エネ車の生産台数と販売台数が、それぞれ6,889台と5,682台で、前年同時期と比較し69.1%減、74.4%減の状況になっているのです。その原因は、2017年1月1日から、新エネ自動車に対する新規の補助制度が適用され、2016年と比べメーカーへの補助金が約60%減ったことにあります。補助金の減少にともない、新エネ車メーカーが軒並み値上げを実施した結果です。 新エネ車に対する補助が徐々に縮小する中、政府補助を目当てに開発を進めてきたメーカーは今後淘汰されていくでしょう。また、シェアエコノミー、IOTの進展に伴い、新エネ車のみならず、伝統的な自動車メーカーも、新しい市場環境に順応できるようビジネス生態系の転換を模索し始めています。 まず、IT業界との連携です。北京汽車や広州汽車、上海汽車、重慶長安汽車など大手自動車メーカーは、アリババや、百度、テンセントなどIT企業と連携し、IT技術を駆使したEVの開発を進めてきています。例えば、百度は地図情報のデータベースを強みとし、自動車メーカーと共同でコネクテッドカーや自動運転の共同研究開発を行っています。また、テンセントは都市ストーリービューデーター、3Dデーター、道路データー、ユーザービッグデーターを保有していることの優位性が注目され、顧客に対してナビゲーションやEC、動画ストリーミングなどのサービスを提供することなどで、新しい付加価値をつけようとする自動車メーカーから熱い視線を送られています。 次に、自動車リース業界との共同です。例えば、上海汽車集団は、2016年に上海国際汽車城参加の自動車リース会社であるEVCSRDへ出資し、環球車享汽車リース有限公司を立ち上げ、カーシェアビジネスへ参入を果たしました。上海汽車は伝統的な自動車製造企業ですが、単なる車の製造だけではなく、消費者に製品とサービスを提供する包括的なサプライヤーを目指すというのが企業の目標となっているといいます。上海汽車とEVCARDの合弁により、サービスの提供拠点が100箇所から1700箇所に拡大、成都や広州などの都市にも進出を成し遂げました。2016年末には、上海地域においては、約6000台の車で毎月15万件のオーダーをやりくりするまでになっています。 また、家電業界との融合が進んでいます。最も注目されているのは格力と珠海銀隆電気自動車との業務提携です。空調市場でトップシェアを有する格力の会長である董明珠氏は銀隆の買収を仕掛けたものの、株主総会で却下されてしまいました。ただ、2017年3月には、格力と珠海銀隆とが業務提携について合意したと発表しました。双方の製品を優先的に購入し合うとのいう内容です。他方、董明珠氏は銀隆の買収をあきらめず個人資産を投じ、大連万達集団、京東集団、中集集団など4社と共同で、珠海銀隆の約22%の株を取得しました。今回の買収劇の裏には、空調市場シェア40%を占める格力ですら、伝統の家電事業で頭打ちになり、新しいビジネスチャンス、多元化を実現するため、銀隆の持っている電池技術、EV技術を格力のヒートポンプ、太陽光発電と組み合わせて、スマート住居、エネルギー供給するなど新規市場を開拓したいとする思惑が見て取れます。 最後に、再生可能エネルギー業界との協業もあります。中国の再生可能エネルギーの大手企業である協しん集団が、広汽集団とパートナーを組んで、スマート交通を地方政府に提案しているとの報道がありました。 今後、新エネ車に対する政府補助は、さらに年々減少する見込みとなっています。これまで過熱気味であった中国の新エネ自動車業界が冷静さを取り戻すことは、決して悪いことだとは思いません。市場ニーズや消費者ニーズに基づいた、自動車の開発とサービスの提供が実現することを期待しています。 |
![]() 創発戦略センター シニアスペシャリスト 三輪 泰史 |
![]() 農業ビジネスを成功に導く10のヒント 本コラムでは、「農業ビジネスを成功に導く10のヒント」と題し、さまざまな視点から「儲かる農業」の実現に資する話題提供を行ってきました。今回がその最終回となります。第11回目は、「農業ビジネスにおける人材戦略」に焦点を当てます。 日本の農業が苦戦してきた要因として、「ビジネス」の観点が欠如していた点が挙げられます。農業では、農産物の栽培に加え、企画、営業、研究開発、経理、人材育成等の実務をこなす必要があります。これを一人の農業者でカバーするのは至難の業です。農業を儲かるビジネスへと変えるためには、これらの経営スキルを分担できる体制の構築が必要なのです。 そのような中、農業への注目の高まりを受け、能力の高い若手、中堅層が数多く農業分野に飛び込んでいます。栽培だけでなく、大学や前職での専門性を活かし、営業・企画・技術開発などの専門家として活躍している方も少なくありません。多様な人材が活躍している農業法人の中には、目覚ましい成長を遂げているケースも少なくありません。 マーケティング能力を例に取りましょう。近年、農産物流通の構造が変わりつつあり、直売所、インターネット販売など、消費者と直結する流通(以下、ダイレクト流通)が存在感を増しています。ダイレクト流通では消費者に農産物の価値を直接訴求できるため単価を高めやすく、また中間マージンも低く抑えることができます。また、SNSの普及により、農家と消費者が双方向にコミュニケーションを取ることが可能になりました。広告宣伝効果は、投じた費用の多寡ではなく、情報の内容とアイデアで決まるようになっています。ダイレクト流通では、農業者が消費者ニーズを掘り起こして、新たな商品を企画していくというマーケティング活動により、十分な収益を上げることが可能となります。 マーケティングに必要な能力・スキルがこれだけ多岐にわたると、もはやマーケティングに関する理論と手法を体系的に習得した人材でなければ対応が難しいと言えます。今後、大学でマーケティングを学んだ人材や他産業で経験を積んだ人材にとって、農業法人も自らの能力・スキルを発揮できる場となるでしょう。 本コラムはこれで最終回となりますが、農業分野の新たな連載を計画しています。日本農業は現在、大きな転換点に差し掛かり、変革のスピードが加速しつつあります。これからもタイムリーな情報提供を続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。 |
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このメールは創発戦略センターメールマガジンにご登録いただいた方、シンポジウム・セミナーなどにご参加いただきました方、 また研究員と名刺交換した方に配信させていただいております。 【発行】 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 【編集】 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター編集部 〒141-0022 東京都品川区東五反田2丁目18番1号 大崎フォレストビルディング TEL:03-6833-1511 FAX:03-6833-9479 <配信中止・配信先変更・配信形式変更> https://www.jri.co.jp/company/business/incubation/mailmagazine/privacy/ |
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。 |