創発戦略センター ISSUE 342 2017/03/28(火)発行
創発
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昨今の世界政治の影響から気候変動政策が後退する懸念がある中、長期目線で投資するESG投資家の存在感が
高まっています。
今回の創発EYESではESG専門家より、気候変動政策におけるESG投資家の役割についてわかりやすく解説します。

また、2017年3月30日(木)セミナーを開催いたします。あわせてご覧ください。
【ご案内】地域包括ケアシステムにおける これからの保険外サービス~地域での展開と家族支援~セミナー
   1. Ikuma Message

・イノベーション人材育成に必要なもの

   2. 創発Eyes

・ESG投資が後押しする、長期目線での気候変動対策

   3. 連載_シニア

・第19回 ギャップシニアコンソーシアムを総括する ~これまでの活動と今後~



創発戦略センター
所長
井熊 均
 

イノベーション人材育成に必要なもの

 前回のメルマガで紹介した東大とのシンポジウムは、300名以上入る東大の大教室が満席となり、盛況のうちに終わることができました。シンポジウム終了後に開催した懇親会でも何十人もの方のご参加をいただき、時間を忘れて議論を交わすことができました。お忙しい中、シンポジウム、懇親会にご参加いただきました方々に、この場を借りて心より御礼申し上げます。

 シンポジウムや懇親会を通じて改めて理解したのは、非常に多くの方がイノベーション人材を育てることの重要性を感じられていることです。具体的な人材育成の取り組みを行っている企業も少なくありません。しかしながら、「これだ」、と言える人材育成の方法を見出した企業は殆どないのが現状のようです。

 「イノベーション人材は素養や幼少期の経験に依存する」という意見を聞くことがあります。本当でしょうか。他の人にはできない付加価値の高い事業や活動を立ち上げるのに一定の素養が必要なことは否定しません。しかし、この手の話は二つの事実を見落としていると思います。

 一つは、スポーツ、音楽、絵画、財務などの知識、等、分野を問わず、適切な知識に基づくトレーニングを一定期間こなしても向上しないスキルや知見など聞いたことがない、ということです。問題は適切な知見に基づくトレーニング方法と一定期間それをこなした人が稀有だったことではないでしょうか。

 もう一つは、我々はスティーブジョブズのような人材を育成できると言っている訳ではない、ということです。企業が人材育成の対象としているのは身近なイノベータです。そうした人が何人もいれば企業は付加価値を高めることができます。また、身近なイノベータを育てる努力を続けていけば、いずれはジョブズも頷く大型のイノベータも生まれるでしょう。

 今必要なのは、イノベータの育成に関する神話や諦めの壁を取り払い、個々人の持つ可能性を信じる意志なのだと思うのです。

■最新の書籍

再エネ大再編 パリ協定で動き出す 再エネ大再編 -世界3大市場で伸びる事業を見極めろ
井熊 均/瀧口 信一郎
日刊工業新聞社
2017年3月25日発行





昨年、京都議定書を超える強力な影響力を持つパリ協定が発効しました。今後、世界中で再生可能エネルギーの大量導入が進みます。 一方で、地球温暖化対策に懐疑的なトランプ政権の誕生など懸念点も少なくありません。 本書は、パリ協定を巡る国際状況を概観して再生可能エネルギー市場の動向を捉えた上で、日本としての戦略を述べた書籍です。



創発戦略センター
マネジャー
村上 芽
 

ESG投資が後押しする、長期目線での気候変動対策

 ESG(環境、社会、ガバナンス)の視点を投資に用いる「ESG投資」が、日本においても市場の約2割を占めるに至ったという調査結果が出た。もちろんその2割のすべてが同じ行動をしているわけではなく、ESG投資を行う投資家といっても関心の切り口は様々ではある。しかし、共通点といえるのは、E(環境)の要素として「気候変動」を捉えるのが一般的ということだ。筆者らが知る限り、ESG投資家を名乗っているにもかかわらず、気候変動を無視する投資家は見当たらない。

 ESG投資家の中でも、特に気候変動対策に影響力を持つと考えられるのが、30~50年後を見据えた長期投資を行う投資家である。そうした投資家は、個々の投資先企業の業績への関心に加え、持続可能な経済・社会の実現を阻害するような事象を取り除こうという思考回路を持つ。投資検討において、人口動態(少子高齢化)などと並んで、気候変動の進展(温暖化)を重要なトレンドとして考慮することが定着している。この行動の1つの現れ方が、脱化石燃料投資や、それを意識したエンゲージメント活動(投資先企業への働きかけ)だ。特に石炭への依存を減らし、再生可能エネルギーへのシフトを後押しする動きが、近年は目立つ。

 例えば米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)では、2016年8月に「ESG戦略計画」を発表し、投資先の企業のなかでも温室効果ガス排出量の多い上位企業に対し、今後30年というタイムスパンで、パリ協定の目標と合致する水準での温室効果ガスの削減を求めて働きかけをしていくと宣言している。これは、石油メジャーを含むエネルギー産業に対し、事業変革を求めているのと同じことと言えよう。このような、超長期の目線で活動する投資家の典型例は巨大年金基金で、カルパースの他にもノルウェー政府年金基金グローバルや、スウェーデンのAP4などが代表的である。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、規模からは同様の特徴を有しており、今後の活動が注目される。

 一方で最近の世界政治では、化石燃料産業の復権を謳う米国のトランプ政権の登場を筆頭に、気候変動政策をリードしてきたEUの弱体化を暗示するような欧州諸国の情勢(英国のEU離脱に加え、フランスやオランダでもEUに批判的な勢力が拡大)から、気候変動政策が世界的に後退するのではないかという懸念がある。しかし、気候変動が経済・社会にとってリスクと同時に大きな機会になり得ることは、金融安定理事会の認識にも反映されている。ESG投資家の側にも、時の政権に左右されないだけの情報の蓄積もあるだろう。金融市場の短期的思考が金融危機を招いたことは確かだが、今後はそれとは反対に、長期投資家によって、政権在任期間を超えた長期目線の気候変動対策が下支えされていく可能性がある。気候変動の進展を懸念する筆者としては、その可能性を信じている。



創発戦略センター
シニアマネジャー
齊木 大 
 

第19回 ギャップシニアコンソーシアムを総括する ~これまでの活動と今後~

 ギャップシニアコンソーシアム設立から、2年半が経過しました。このコンソーシアムが目指しているのは、高齢者と企業をつなぐ新たな商品・サービスの流通と開発のプラットフォームの構築です。
 団塊世代が70歳代に入り、「ギャップシニア」に該当する高齢者数が劇的に増える2020年代を見据えると、人口減少・高齢化が進む国内B2C市場では、消費者と企業の関係性が大きく変化し、コミュニティに密着して多様なニーズに幅広く対応できる顧客接点を持つ企業が生き残るでしょう。もちろん高齢者であってもITの利用が進みますし、地方部を中心にコストの観点からインターネットを介したグローバルな流通形態が占める割合も大きくなる側面はあります。
 しかし、その一方で、ギャップシニアの意識・行動を踏まえると、地域密着でアナログなチャネルの重要度が増すと考えられます。私たちが構築しようとしているプラットフォームは、まさにこの新たなチャネルの形なのです。

 これまで、現場で顧客接点を持つ企業・法人のご協力のもと、2つの機能の検討・検証に取り組んできました。これは、ギャップシニア向けのB2Cの新たなチャネルとしての「地域プラットフォーム」と、シニアが集まる場を活かした商品開発である「リビングラボ」の2つです。
 一点目の「地域プラットフォーム」とは、地域のギャップシニアとの接点をつくり、一人ひとりのニーズを掘り起こし、商品・サービスの情報提供や紹介・提供を行う、いわば「民間版地域包括支援センター」です。
 これまでの実証で明確になった「地域プラットフォーム」の重要なポイントは、単に接客して情報を提供するのではなく、相手のニーズに踏み込んで、高齢者自身の意向や課題を形にする「かかわり」にあります。具体的には高齢者との日常的な接点・会話を通じて、少しずつその人が持つニーズを形にするという運営方法がほぼ確立できました。
 こうした顧客コミュニケーションは、B2Bの商品単価が高い営業では実践されていますが、これをB2C、それもギャップシニア向けにも適用できることが見えてきました。今後は、把握されたニーズに応え、情報を提供し、紹介できるメニューの拡充に重点を移していきたいと考えています。

 二点目の「リビングラボ」とは、より消費者の視点に立った改善やイノベーションを実現するため、商品・サービスの開発プロセスに高齢者も参加し、試行錯誤を進めるという、新事業開発のプロセスにおけるオープンイノベーションの手法です。これまでの検証を通じて、特に商品・サービス開発の上流段階、つまりニーズ探索とコンセプト構築の段階で特に優位性を発揮することを確認できました。
 こちらについては、今後は、東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)と連携しつつ、複数企業間のコラボレーションの促進と、国際競争力のある評価・検証スキームの開発を進めていきたいと考えています。

 ここまでに触れたように、今後のギャップシニアコンソーシアムは、仕組みのあり方を研究・検証する段階から、プラットフォームを活用したオープンイノベーションの推進に軸足を移していきます。 来るべき長寿社会を豊かなものにするため、特にギャップシニアに訴求力のある商品・サービスを持つ企業、コミュニティに着目した新事業開発にチャレンジしたい企業の皆さまとの連携を増やしたいと考えています。「ギャップシニア時代」に向け、プラットフォームを実装し、成熟させていきましょう。


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