【日印人材交流調査シリーズ2】
クールジャパン戦略を通じたインド人旅客の誘致についてーインドにおけるクールジャパン戦略の一段の強化が重要
2017年07月10日 熊谷章太郎
要約
- はじめに
• アニメ、マンガ、ドラマなどの日本製コンテンツ輸出の促進や日本のロケ地を活用した映画・テレビ製作の推進はインドからの訪日客を誘致するうえで重要である。もっとも、インドでの日本製コンテンツの普及度は、北東アジア・東南アジアと比べて相対的に低い状況にある。 - クールジャパン戦略について
• 政府は、日本製コンテンツの海外での普及に向けて2000年代から様々な施策を打ち出している。2013年にはリスクマネーの供給に向けて「クール・ジャパン機構」を設立しており、2015年には官民・業種の垣根を越えた連携を促進するため「クールジャパン官民連携プラットフォーム」を設置した。 - クールジャパン戦略に関わる施策とインドの関わり
• 日本製コンテンツの海外での普及に向けて様々な施策が打ち出されてきたものの、インドとの商業的な関わりは極めて薄い状況にある。日本製コンテンツをインドで浸透させていくには、新たな施策を打ち出すよりも、これまで打ち出された各施策のインドにおける取り組みを強化することが重要である。 - 日本製コンテンツのアジア/インド向け輸出
• マクロ統計上の制約を背景に、インド向けの日本製コンテンツ輸出の詳細を把握することは困難であるものの、わが国のコンテンツ輸出の大半は北東・東南アジアに向けであり、インド向け輸出は極めて少ないと判断される。 - インドにおける日本製コンテンツの普及に向けて
• インドは、日本製コンテンツの浸透度の低さとそれを受けたコンテンツビジネスのインド進出の少なさが悪循環に陥っている可能性がある。こうした悪循環を断ち切り、好循環サイクルにつなげていく前段階では、政府が積極的に支援を行うことが求められる。 - 日本での映画・テレビ制作の促進に向けて
• 日本のロケ地を活用した海外/インドからの映像製作を振興するには、フィルムコミッション、自治体、警察など連携強化を通じた撮影許認可手続きの簡便化、映像制約に関する税制面での支援についても検討することが重要である。
レポート全文
【本調査レポートについて】
なぜ、日印関係なのか
• インドは日本にとって戦略的に重要なパートナーであるものの、経済・人的なつながりは他国と比べて薄く、二国間関係の深化に向けた取り組みの強化が求められる状況。
なぜ、このタイミングなのか
• 日印両政府は、両国の友好関係を更に強化し、様々な分野での交流が深め、相互理解が一層増進されることを期待し、2017年を「日印友好交流年」に設定しており(注)、本年は日印間の人材交流について改めて考えるのに相応しい。
注 2016年11月にモディ・インド首相が訪日した際、安倍首相との間で、日印間の人材交流の活発化に向けて2017年を日印友好交流の年とする合意を受けたもの。
本レポートの位置づけについて
• 本レポートは、日印両国の人材交流の促進に向けて、二国間の観光、高度人材の受け入れ、留学生の受け入れなど、の人材交流について調査。
• 本事業は、外務省の「日印友好交流年記念事業」登録済事業。
既刊レポートについて
1. インド人訪日客の現状と展望