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Business & Economic Review 2011年4月号

【STUDIES】
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
キャッシュフロー稼得のための新しい経営指標

2011年03月25日 新美一正


要約

  1. 近年、現実の企業経営において、キャッシュフロー創出力を向上させていくという観点から、短期的な投融資効率について注目する動きがみられる。これは、リーマン・ショックや企業間信用の縮小に伴う企業金融の逼迫によって、企業の内部資金依存度が高まっているのに加え、グローバル生産体制の拡充を背景に、わが国企業の強みでもあったサプライチェーン・マネジメント(SCM)に基盤を置く在庫圧縮が困難となり、運転資金管理の巧拙が経営上の重要な課題に浮上しているためである。


  2. キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は、運転資金管理の巧拙を測定し、企業のキャッシュフロー創出力を簡便に表す経営指標として、近年、注目されている。CCCとは、企業が自力で運転資金を調達しなければならない日数を表し、その期間が短いほど、企業の資金繰りは改善する。本稿では、このCCCを分析の切り口として、近年におけるキャッシュフロー創出をめぐる企業行動変化の動向を実証的に検討した。


  3. わが国企業のCCC水準は、21世紀初頭の5年間は、SCMによる在庫減少を主要なエンジンとして、緩やかな低下傾向にあった。しかし、その後の5年間は、グローバル化の影響が在庫増として現れる下で、改善が止まっている。今後のCCC短縮化のためには、在庫減だけではなく、売掛金・買掛金までを視野に置いた、総合的なキャッシュフロー管理が欠かせない状況にある。


  4. CCC変化と投下資本利益率(ROI)変化の関係性を実際の財務データを使用して検証したところ、とりわけ製造業においては、両者の間にマイナスの相関関係がみられた。両者間のマイナスの相関は同時点にとどまらず、業種によっては過去期(前期および前々期)におけるCCCの改善が、当期のROIを押し上げる効果を持つことがわかった。このことは、CCCの改善が、単に短期的な資金繰りの改善を意味するだけではなく、中長期的な企業の収益性を向上させることを示唆している。
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