コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

クローズアップテーマ

リーマン・ショックと地球温暖化

2009年09月09日 佐々木努


 リーマン・ブラザーズが破綻してからちょうど1年が経ち、最近リーマン・ショックの影響を振り返る記事・番組を目にする機会が多くなった。それと同時に、民主党が打ち出す大幅なCO2削減目標を受けて、規制リスクや市場リスク(あるいはチャンス)が企業に与える影響分析に関する記事・番組も頻繁に見聞きするようになった。本コラムでは、最近「流行の」リーマン・ブラザーズと地球温暖化について論じてみたい。

 「リーマン・ブラザーズ」と「地球温暖化」は一見すると結びつかないが、実はそうでもない。リーマン・ブラザーズは本業である金融商品へのリスク管理は不十分であったと言わざるを得ないが、気候変動の分野においては気候変動が企業経営に与えるリスクを提唱した先進的な企業であった。
 2007年に相次いで発表した"The Business of Climate Change"と"The Business of Climate Change Ⅱ"のレポートでは、自動車、銀行、化学、医薬品、保険、石油、メディア、不動産、小売などの業界を取り上げ、物理リスクや規制リスク、市場リスクなどの気候変動リスクが企業に与える財務的影響を業界横断的に分析し、企業の対応によって将来の影響が大きく異なるということを指摘している。

 規制リスクの顕在化を目前に控えてようやく騒ぎ出す企業に対して、数年も前から警鐘をならしてきたのである。リーマン・ショックの今回の金融危機がそうであったように、多くの者が気付かない時点であっても、「誰か」はその危険性をいち早く察知してシグナルを送っているのである。問題は、そのシグナルに気付かなかった、あるいは気付いても無視していたことである。

 リーマン・ブラザーズのレポートでは、規制リスクだけでなく物理リスクについての記述も多い。例えば、世界中に点在するエチレン工場が沿岸部に位置しており、気候変動によって高まった洪水・高潮リスクにさらされていることなどを指摘している。
 現時点では、この物理リスクについて、真剣に検討している企業は少ない。一方で、物理リスクに関するシグナルは、様々な企業、研究機関によって発せられている。取り越し苦労になることもあるかもしれないが、物理リスクのシグナルへの感度を高めることが肝要で、無視することは得策ではないだろう。

 世の中の関心が規制リスク一色となりつつあるからこそ、敢えてそのことを申し上げたいと思う。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ